傷害慰謝料の解説 

 
このページでは、交通事故で傷害・後遺障害を負った被害者の方が賠償を受けられう可能性のある損害のうち、傷害慰謝料(入通院慰謝料)を中心とした問題につき、ポイントを絞って解説しています。

傷害慰謝料(入通院慰謝料)についての基本的な考え方

入通院期間と慰謝料との関係

 傷害慰謝料(入通院慰謝料)は、事故被害者が怪我をし、一定期間治療をしなければならなくなってしまったことに伴う精神的苦痛に対する賠償金をいいます。

 その金額の算定については、これまでの判例実務の積み重ねから、一定の目安というものがあり、概ね治療日数又は治療期間の長短に対応したものとなっています。つまり、基本的に事故被害者の入院期間が長ければ長いほど、通院期間が長ければ長いほど、高額となるのが原則です。

通院の頻度

 通院については、ある程度の頻度で行うことが望ましいといえます。

 交通事故の被害にあって痛みがひどいのに、仕事が忙しいといった事情でなかなか病院に通えないという方もおられます。しかし、結果的に通院頻度が低いと、怪我の程度が重くないとみなされ、慰謝料が減額される理由となってしまう恐れがあるからです。

 もちろん、医師から不必要と言われているのに無理に通うということはよくありませんし、慰謝料のために通院するわけではありませんが、被害者として負った傷害の重さに応じた適正な慰謝料を得るためにも、週に数回の頻度(場合によっては週に1回以上)で通院することは多くの場合望ましいといえます。

交通事故の入通院慰謝料(傷害慰謝料)の算定基準

3つの基準の存在

 入通院慰謝料(傷害慰謝料)の計算の基礎となる金額には、(1)自賠責基準、(2)任意保険基準、(3)裁判基準という3通りの基準があります。

(1)については、客観的にな基準があり、これに従って算定されます。(2)については、任意保険会社がそれぞれ、自社の独自の基準で定めており、通常、金額は低く設定されています。(3)は、裁判所が過去の裁判例などに照らして蓄積した基準であり、金額としては一番高くなります。

自賠責基準

 自賠責基準による入通院慰謝料は以下のとおりです。

  1日4,200円 × 通院期間日数

 そして、上の「通院期間日数」とは次の(1)と(2)のうち、小さい数字となります。

 (1)入院日数と通院期間の合計
 (2)入院日数と実通院日数の合計を2倍にした日数

任意保険基準

 これは、任意保険会社が、それぞれ独自に算出しています。自賠責基準より高いところもあれば、低いところもあります。

裁判基準

 裁判基準は、障害の程度が軽く通院頻度が低い場合を除き、「入院日数+通院期間」を基準に、算定します。

 そして、他覚的所見のないむち打ち傷害といった例外を除き、概ね以下の表を一つの目安にして算定します(以下の表はクリックすると拡大できます)。

 例えば、通院のみ6ヶ月の治療を要した場合は、判例実務の考え方によれば、その慰謝料は116万円程度というのが一応の目安です。また、入院1ヶ月の後、通院を6ヶ月要した場合は149万円程度、入院3ヶ月を要した後、通院を6ヶ月要した場合は211万円程度が一つの目安と考えられています。

 ただし、現実の案件においては、傷害の程度・内容・部位、実質的な治療の有無と内容、通院の頻度、交渉の経過、その他の要素によってこれより少なくなる場合は当然にあります。また、これらより増額される場合もあります。したがって、上の金額は、単なる一定の目安という程度のものです。

ご注意事項

本ページの内容は、執筆時点で有効な法令・法解釈・基準に基づいており、執筆後の法改正その他の事情の変化に対応していないことがありますので、くれぐれもご注意ください。

ページトップへ戻る
Copyright(c) Craftsman LPC All Rights Reserved.