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後遺障害解説~醜状障害 

 
このページでは、交通事故の被害によって残ってしまう場合のある後遺障害のうち、外貌、上肢、下肢に生じる醜状に関する後遺障害の内容・留意点について、ポイントを絞って解説します。

醜状障害と認定されうる後遺障害等級

醜状障害とは

 醜状障害とは、端的にいうと傷跡に関する後遺障害です。

 すなわち、頭部、顔面や首などの外貌や、上肢、下肢など、露出して他の人から見える場所に、瘢痕(皮膚面の腫れ物や傷などが治癒した後に残るもの)や欠損を生じ、客観的に他の人に醜いと感じさせる程度の傷跡について、後遺障害として認定しているものです。

認定され得る後遺障害等級

 他の人の傷跡を見て、それを醜いと感じるかどうかは見る人の主観的なものですが、自賠責保険では、客観的な数値としての傷跡の大きさに従って判断します。

 そして、(1)外貌の醜状、(2)上肢及び下肢の露出面の醜状、及び(3)その他の部位の醜状について、以下の基準に従って認定されます(なお、平成22年6月9日までに発生した事故についてはこれとは認定基準が異なりますので、この点は、後の「醜状障害にかかる男女差について」をご参照ください。)。

[1] 外貌の醜状障害の認定基準

第7級12号・・外貌に著しい醜状を残すもの

第9級16号・・外貌に相当程度の醜状を残すもの

第12級14号・・外貌に醜状を残すもの

[2] 上肢・下肢の醜状障害の認定基準

第14級4号・・上肢の露出面に手のひらの大きさの醜いあとを残すもの

第14級5号・・ 下肢の露出面に手のひらの大きさの醜いあとを残すもの

外貌の醜状障害の詳細

外貌醜状と等級を分ける基準

 ここでは、外貌醜状の状態のうち、等級を分ける基準について説明をいたします。

「著しい醜状を残すもの」

 第7級12号として認定される外貌の醜状障害における「著しい醜状を残すもの」とは、原則として、以下のものを指します。

頭部 手のひら大(指の部分は含まない。以下同じ。)以上の瘢痕または頭蓋骨の手のひら大以上の欠損
顔面部 鶏卵大面以上の瘢痕または10円銅貨大以上の組織陥没
頸部 手のひら大以上の瘢痕

 「相当程度の醜状」

 第9級16号として認定される外貌の醜状障害における「相当程度の醜状」とは、原則として、顔面部の長さ5㎝以上の線状痕で、人目につく程度以上のものをいいます。

 この「人目につく程度以上」かどうかという点を判断するため、自賠責保険では被害者と面接し、醜状の程度や部位を確認します。そして、瘢痕などが眉毛や頭髪等に隠れる部分については、これを醜状とは取り扱わないものとします。

 「醜状」

 第12級14号として認定される外貌の醜状障害における「醜状」とは、原則として、以下のものを指します。

頭部 鶏卵大面以上の瘢痕または頭蓋骨の鶏卵大面以上の欠損
顔面部 10円銅貨大以上の瘢痕または長さ3㎝以上の線状痕
頸部 鶏卵大面以上の瘢痕

外貌醜状と男女差

かつての外貌醜状の男女差

 以前は、外貌醜状について、男女に差が設けられていました。すなわち、平成23年頃までは、同じ「著しい醜状」に該当する場合でも、男性は12級で女性は7級、同じ単なる「醜状」に該当する場合でも、男性は14級で女性は12級の認定がなされてきました。

 そうした差が設けられていた理由は恐らく、接客業に従事する割合は女性の方が高いとか、外貌の醜状障害により受ける精神的苦痛その他の影響は女性の方が大きい等と考えられていたからかもしれません。

外貌醜状の男女差の撤廃

 しかし、平成22年5月27日に出された京都地方裁判所の判決において、労災保険における外貌の著しい醜状障害について女性を第7級、男性を第12級とする取扱いは差別的であり、このような差別的取扱いは法の下の平等を定めた憲法14条1項に違反すると判断されました。

 これを受け、平成23年2月1日に労災保険法における基準が改められ、いわゆる男女差が撤廃されました。また自賠責保険でもこれに合わせ、同年5月2日に同様の改正が行われました。なお、この際に自賠責保険では、平成22年6月10日(京都地裁判決が確定した日付)以降に発生した事故についてまで、当該変更の適用を遡及させることとしました。

平成22年6月9日までに発生した事故についての扱い

 以上に対し、平成22年6月9日までに発生した事故については、自賠責における後遺障害認定においては杓子定規に当てはめが行われ、「著しい醜状」では男性は12級で女性は7級、単なる「醜状」では男性は14級で女性は12級と認定される見込みです。しかしこの場合でも、「著しい醜状」や「醜状」に該当する男性の方は、簡単に諦めるのではなく、交渉や訴訟においても7級相当や12級相当として主張する余地があると考えます。

 弊所で扱ったケースですが、男性の被害者において、事故日が平成22年6月10日よりも前であったため、外貌醜状については14級の認定を受けており、これを前提に交渉を行ってきたものの、交渉がまとまらなかったために訴訟の準備を進めていたものがありました。しかし、訴訟の準備中に京都地裁判決が出されたため、外貌醜状の部分については「12級相当」へと主張を改めて訴訟を開始しました。

 その裁判において、弊所が主張立証に注力した結果、裁判所から、基本的に外貌醜状についての後遺障害慰謝料については12級相当を認めた内容の裁判所和解案が出されました。この和解案が出された時点では、まだ労災基準の改正や自賠責保険における改正はなされておらず、いずれ改正されるであろうという見込みがあるにすぎない状態でしたが、裁判所が、この男性の外貌醜状14級について、12級相当を認めた形となりました。

 もちろん、同じ外貌醜状を負っている男性といってもその年齢や職業その他の諸事情が異なりますので、どの事件も同じように判断されるとは限りませんが、筆者としては、少なくとも簡単に諦める必要はないと感じています。慰謝料額だけをとってみても、14級の認定を受けているのであれば、12級相当となれば180万円程の増額の可能性(余地)があり、12級の認定を受けている場合は、7級相当となれば、700万円程の慰謝料増額の余地がありますので、こうしたケース(平成22年6月10日よりも前に事故に遭われた男性の方で、外貌醜状について12級や14級の認定を受けられているケース)では、一度弁護士に相談されることがよろしいかもしれません。

外貌醜状と逸失利益

 交渉や訴訟の実務上、よく問題となる点、つまり保険会社等がよく反論してくる内容は、「外貌等に醜状があるとしても、それによって労働能力は低下していないのではないだろうか(つまり仕事に支障はないのではないだろうか)。それゆえに逸失利益は発生しないのではないだろうか。」といったものです。

 この点はなかなか難しい問題で、交渉には技術を要します。男女を問わず、モデルなどの仕事をされている方にとっては、醜状障害は仕事に直接的な支障を生じていることは明らかで、逸失利益が発生していることを主張しやすいといえるかもしれません。

 また、営業や、接客業の場合なども、交渉において有利な材料として主張を展開できるものと思います。逆に、例えば研究に打ち込んでいてほとんど他人と接する機会がないような仕事の場合は、外貌の醜状が仕事に与える影響は少ないとされる可能性もあります。いずれにしても、弁護士と相談の上、相談し、適切な主張ができないか検討することが重要と思われます。

外貌以外(上肢や下肢等)の醜状障害の詳細

上肢や下肢の露出面に関する醜状障害

 次に、上肢や下肢の露出面に関する醜状障害についてご説明します。

 上肢や下肢の露出面とは、上肢では、上腕(肩関節以下)から指先まで、また、下肢では大腿(股関節以下)から足の背(足の甲)までを表します。そして後遺障害等級認定にあたっては、部位と大きさ等で判断がされます。具体的には以下のとおりです。

 上肢又は下肢に、手のひらの大きさを相当程度超える瘢痕(具体的には、手のひらの大きさの3倍程度以上)を残し、特に著しい醜状と判断される場合には、12級相当と認定されます。

 また、すなわち上下肢の露出面に複数の瘢痕又は線上痕が存在する場合、これの面積を合計して認定します。ただし、この場合、少なくとも手のひら大以上の瘢痕を残すものに該当する程度の搬痕又は線上痕が1個以上残存している必要があります。それで、これに該当しない程度の瘢痕又は線上痕のみが複数存在する場合は面積を合計して認定する扱いはされていません。

日常露出しない部位についての醜状障害

 腹部や背部、臀部などの日常露出しない部位については、一般的に、こうした露出しない部位全面積の4分の1程度以上の範囲に瘢痕を残すものは14級相当と認定され、2分の1以上の範囲に瘢痕を残すものは12級相当と認定されます。

外貌醜状に関連した他の障害との関係

顔面神経麻痺

 顔面神経麻痺は、神経系統の機能の障害ではありますが、その結果として現れる「口のゆがみ」は、単なる醜状として14級相当と認定される可能性があります。

 また、閉瞼不能は目瞼(まぶた)の障害として扱われます。まぶたを閉じたときに角膜を完全に覆い得ない場合がこれに該当しますが、これが1眼に生じた場合は12級に、両眼に生じた場合は11級に該当します。

 この点は、後遺障害についての解説のうち「目の後遺障害」の項目で説明しますので、こちらもご参照ください。

 耳や鼻の欠損

 耳や鼻の欠損については、それぞれの部位にかかる認定基準において欠損障害として定められています。

 すなわち、耳介(顔の両端にある、いわゆる耳)の2分の1以上を欠損した場合は「耳介の欠損」として12級4号に該当し、鼻軟骨部の全部、または大部分を欠損した場合は「鼻の欠損」として9級5号に該当します。

 しかしいずれの場合も、醜状障害として「外貌に著しい醜状を残すもの」(7級12号)にも該当します。

 しかしいずれの場合も、醜状障害として「外貌に著しい醜状を残すもの」(7級12号)にも該当します。

ご注意事項

本ページの内容は、執筆時点で有効な法令・法解釈・基準に基づいており、執筆後の法改正その他の事情の変化に対応していないことがありますので、くれぐれもご注意ください。

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