死亡事故による慰謝料の解説
このページでは、交通事故で死亡された方の遺族が賠償を受けられる可能性のある損害のうち、死亡によって生じうる慰謝料を中心とした問題につき、ポイントを絞って解説します。
死亡による慰謝料とは何か
事故によって被害者が死亡したことによって、被害者本人はもちろん、その近親者も甚大な精神的苦痛を受けることは想像に難くありません。このような精神的苦痛を慰謝する意味を持つものが慰謝料です。
慰謝料額の基本的な考え方
裁判所基準
裁判所の裁判例による基準では、就労者の場合、死者(被害者)の年齢、家族構成などにより、原則として、以下の範囲の金額を目安として考慮されることが一般的です。
被害者の立場 | 金額の概要 |
---|---|
一家の支柱の場合(*1) | 2500~3000万円 |
一家の支柱に準ずる場合(*2) | 2200~2500万円 |
その他の場合 | 2000~2400万円 |
(上記金額は、財団法人日弁連交通事故センター「交通事故損害額算定基準」(17訂版)73ページより引用)
(*1) 「一家の支柱」とは、被害者の収入によって生計を維持している場合をいいます。
(*2) 一家の支柱に準じる場合とは、家事の中心を行う主婦、養育が必要な子を持つ母、高齢な父母や幼い兄弟を扶養している独身者などと解されています。
自賠責保険基準
自賠責保険基準では、死亡者本人の慰謝料は350万円とされています。この点は、被害者の立場(が一家の支柱であったか、その他の場合か)によって変わることはありません。
任意保険会社の基準
これは任意保険会社によって様々です。ただし、裁判所が採用する基準による金額よりは相当に低額であることが一般的です。
近親者固有の慰謝料
裁判所基準
民法711条では、死亡被害者本人の近親者固有の慰謝料が認められています。裁判所基準としてご紹介した、上の表の金額には、被害者本人分の慰謝料のほか、近親者固有の慰謝料が含まれています。
自賠責基準
自賠責保険基準では、被害者の父母(養父母を含みます)、配偶者及び子(養子、認知した子、胎児を含みます)に限って、近親者固有の慰謝料が、死亡者本人とは別に認められています。具体的には以下のとおりとされています。
請求権者が1人の場合・・・・・・・・・・550万円
請求権者が2人の場合・・・・・・・・・・650万円
請求権者が3人以上の場合・・・・・・・・・・750万円
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