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交通事故損害賠償の解決方法~訴訟等 

 
 このページでは、交通事故による損害賠償の解決方法である民事訴訟の利用について、ポイントを絞って解説しています。

民事訴訟の流れ

 示談交渉、調停その他任意の話し合いで解決できない場合、裁判(民事訴訟)で解決を図る必要が生じます。交通事故訴訟の流れは、概ね以下のとおりです。

 なお、民事訴訟は、手続その他が複雑なため、通常は弁護士に委任して行うことが好ましいといえます。

提訴までの準備

 まず提訴に向けて必要な準備を行います。具体的には以下のようなものがあります。もっとも、弁護士が示談交渉から受任している場合、すでに示談交渉の段階で準備済みのこともあります。

◆ 刑事記録の取寄せ

人身事故の場合刑事事件として捜査の対象となっていることが多いため、刑事記録を取り寄せます。特に実況見分調書を中心とした証拠は、事故状況や過失相殺に対する反論のための最も重要な資料となります。

◆ 診療記録の取寄せ

ある症状や病名について事故との因果関係が争われる場合、後遺障害の程度や残存時間、労働能力喪失率等が争点になる場合、ある治療について治療費が問題となる場合等の場合に備え、診療記録(カルテ、看護記録、画像、検査結果、診療報酬明細書その他)を取り寄せます。

また、場合により、医師と面談し争点となりうる点について予め医学的見解を得ておいたり、必要に応じ医師としての意見書の提供を要請しておいたりします。

◆ その他の準備

以上のほか、損害を立証する資料はすべて準備します。事故前後の収入を示す資料、事故による休業を示す資料、治療費・通院交通費を示す資料、労働能力喪失率との関係で具体的な職種や業務内容、後遺障害が労働能力に及ぼす影響を示す資料、その他一切の資料です。

訴訟提起と第1回の裁判日程

 提訴準備が終わると、訴状を作成し、裏付証拠とともに裁判所に提出します。裁判所が訴状を審査し、場合により補正や訂正が必要となることもあります。

 訴状提出後1週間前後で(補正や訂正がある場合は別)、裁判所から第1回の裁判の日時が指定されます。通常は、訴訟提起から1~2か月後の日とされることが一般的です。

答弁書の提出と第1回の裁判の開催

 第1回の裁判が指定されると、裁判所から被告に、訴状と証拠が送達され、第1回の裁判の日時が通知されます。

そして、第1回の裁判の前に、被告から答弁書が提出され、原告にも送付されます。

 第1回の裁判は、原告が訴状の内容を主張し、被告が答弁書の内容を主張します。その段階でおおまかな争点が明らかになります。ただし、被告側で準備が間に合わないなどの理由で、第1回の裁判までに被告の具体的な答弁が明らかにならないこともあります。

 そして、第1回の裁判の終わりに、第2回の裁判の日時が指定されます。

第2回以降の裁判~争点整理まで

 第2回の裁判は、第1回の裁判から概ね1か月~1ヶ月半後の日を目処に開催されます。

 被告から十分な内容の答弁書が提出されている場合、第2回の裁判までに原告が答弁書の主張に対する反論を「準備書面」という形で準備し、第2回の裁判ではその内容を主張します。

この場合、第2回の裁判から概ね1か月~1ヶ月半後の日を目処に開催される第3回の裁判までに、原告の主張に対して被告が反論を「準備書面」という形で準備し、第3回の裁判ではその内容を主張します。

 そして、第3回の裁判以降、前回の裁判で一方当事者が行った主張に対し相手方が反論を書面で準備し、当日にその内容を主張する、という形で主張反論が重ねられ、裁判が進んでいきます。

 以上のような主張反論が重ねられ、裁判所のリードで争点を明確にしていき、争いのない点と争点を整理していきます。

和解協議

 原告・被告の主張が出尽くし、争点が整理された段階で、裁判所から和解勧告がなされるケースは少なくありません。この「和解」とは、裁判所の仲介のもと、双方が譲歩の上合意によって訴訟を解決することです。

 争点が整理された段階で、裁判所はある程度事件について見通しを持ちますし、原告・被告の弁護士においても強味と弱味を把握できる段階です。それで、この段階は和解協議にとって適切な時期の一つといえます。

尋問の実施

 争点整理後、和解協議がまとまらなかった場合、又はいずれかの当事者が和解協議を望まなかった場合、「尋問」が行われます。

 この尋問は、弁護士と裁判官が、双方当事者や証人に対し、それぞれ質問と回答の問答をするものです。

訴訟の終結と判決

 尋問後、訴訟手続は終結となり、裁判所が判決を下すことになります。ただし、尋問の日に訴訟手続が終結となることもあれば、尋問後に一度訴訟手続の総括のために裁判が1回開かれることもあります。

 また、尋問後に再度和解協議が試みられることもあります。この場合、裁判官は尋問を経て判決に近い心証を持つことが少なくないため、この時点での和解協議は、判決の内容がある程度意識されたものとなることが少なくありません。

判決と判決後の手続

 裁判所は、判決言渡のために定めた日時に、判決を言い渡します。そして、その2~3日後には判決書が弁護士の事務所に送達されてきますので、判決内容の詳細が明らかになります。

判決内容の詳細が明らかになった時点で、依頼者と打合せ、控訴するかしないかを検討します。

 控訴する場合には、判決書の送達を受けてから2週間内に控訴状を裁判所に提出します。この場合には、訴訟手続が引き続き継続します。また、こちら側が控訴しなくても、相手方が控訴すると、同様に訴訟手続が継続します。

民事訴訟についてのQ&A

 ここでは、交通事故に関する民事訴訟についての種々の疑問に回答します。

依頼者自身の出頭の要否

 弁護士に訴訟を委任した場合、依頼者自身が裁判に出席する必要は、基本的にはありません。依頼を受けた弁護士が裁判所に出席して必要な手続を行います。

 依頼者自身が出席する必要があるのは、原則として、先に述べた「尋問」という手続において、尋問を受ける際のみです。ただし、依頼者自身が裁判を傍聴したり出席できないわけではありませんので、訴訟の進行の進み方が気になるという方は出席してもよいかと思われます。

弁護士が自分の希望する内容を主張してくれないと考える場合

 依頼者によっては、「これこれということを主張したいと弁護士にお願いしても、準備書面に書いてくれない」と言って、依頼した弁護士に不満を持つことがあります。この場合どうすべきでしょうか。

 その希望内容が、訴訟における争点に関する重要な事実にからむ場合もあります。他方で、証拠の裏づけがないものであったり、ことさらに相手方の不誠実さや悪性を強調するなど感情的な主張であったり、訴訟の本筋とは関係がないものであるということもしばしばです。

 それで、依頼している弁護士と話し合っても納得できない場合、別の弁護士にセカンドオピニオンを求めてもよいかもしれません。別の弁護士に相談しても、自身が主張したいと思っている事柄が、やはり準備書面に書く必要のない事項だという回答であれば、やはり依頼している弁護士の判断は間違っていないということになるのではないかと思われます。

(本ページは執筆中です。続きについては随時公開していきます)

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