2011-07-21椅子デザインの模倣と応用美術(1)

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1 今回の判例 椅子デザインの模倣と応用美術(1)

東京地裁 平成22年11月18日判決

本件は、我が国には昭和52年から輸入されていた特徴のある椅子(X社製品)を製造・販売・輸出していたX社と他の1社が、この椅子を模倣した製品を販売しているとして、Y社に対しY社製品の製造販売の差止と損害賠償を請求したものです。

 X社の主張は、主に、(1)Y社によるX社製品の著作権侵害の主張、(2)周知な商品等表示であるX社製品の形態を使用する不正競争行為に該当するという主張、でした。

 本稿では(1)について取り上げ、後日の機会に(2)について取り上げたいと思います。

2 裁判所の判断

 裁判所は、以下のように判断しました。

  • 意匠法等の産業財産権制度との関係から、著作権法により美術の著作物として保護されるのは、純粋美術の領域に属するものや美術工芸品である。
  • 実用に供され、あるいは産業上利用されることが予定されているもの(いわゆる応用美術)は、それが純粋美術や美術工芸品と同視することができるような美術性を備えている場合に限り、著作権法による保護の対象になる。
  • X社製品のデザインは、椅子のデザインであって、実用品のデザインであることは明らかであり、その外観において純粋美術や美術工芸品と同視し得るような美術性を備えていると認めることはできないから,著作権法による保護の対象とはならない。

3 解説

 本件の裁判所が述べるとおり、工業製品等についての応用美術については、純粋美術や美術工芸品と同視することができるような美術性を備えている場合に著作権権法の保護が受けられる、というのが多くの裁判例の立場です(ただし、裁判例によって微妙に表現の仕方が異なります。)。したがって、応用美術について著作権法上の保護が与えられるケースは、現実には非常に限定されています。

 この点、少なからぬ方々は、自社の製品はデザインが優れているので著作権があり、著作権法で保護される、したがって、手間と費用のかかる意匠出願は不要、と考えているかもしれません。しかし、そうだとすれば現在の著作権法に対する理解としては不正確といえるでしょう。

 自社にとって重要な製品であって、画期的なデザインを有するものについては、本来の工業製品のデザインを保護する制度である意匠登録による保護を活用すべきではないかと考えられます。

 ただし、一定の場合には、不正競争防止法の活用による保護の余地はあります。この点は後日取り上げる予定です。



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