2025-03-18 将棋ナレーション事件と著作権(3)
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なお、このトピックは、メールマガジン発行日現在での原稿をほぼそのまま掲載しており、その後の上級審での判断の変更、法令の改正等、または学説の変動等に対応していない場合があります。 |
今回の判例 将棋ナレーション事件と著作権(3)
知財高裁令和5年3月16日判決
将棋に関するウェブサイトを管理するA氏が、テレビ放送局Bに対して、同局が放映した将棋に関する番組に使用されたナレーションが同ウェブサイト掲載の文章に類似しているとして、著作権侵害を主張したところ、裁判所は、A氏が主張する文章のうち一部について著作権侵害を認めました。
事案の委細と解説は以下の前々稿をご覧ください。
https://www.ishioroshi.com/biz/mailmag/topic/topic20250121/
解説
本件の事案とは異なりますが、前々稿と前稿で触れたとおり、何かの制作を他者に外注した際の外注先による権利侵害行為をコントロールし自社へのダメージを少なくする方策として、外注先との契約における「知財保証条項」(対象物が他人の知的財産権を侵害しないことを保証したり、侵害が生じた場合の対応について規定する条項)の設定はひとつの有用な方法です。
それで前稿に引き続き、知財保証条項における留意点についてご紹介します。
前稿で申し上げた留意点については以下をご覧ください。
https://www.ishioroshi.com/biz/mailmag/topic/topic20250218
■ 紛争時の解決権限の定め
知財保証条項において、「成果物が第三者の知的財産権を侵害したときは、乙は自己の責任と費用において処理解決・・」といった規定を設け、外注先に紛争対応してもらおうというのは自然なことです。
もっとも、第三者の知的財産権侵害があった場合、実際に紛争に巻き込まれるのは発注者側であることが多いと思われます。そして、当該外注先と自社との取引関係が終了して時間が経っている場合などは、直接の紛争当事者ではない外注先が当事者意識をもってかつコストをかけて対応するか疑問であることも多いと思われます。ましてや外注先との関係が悪化してしまった場合はそういえます。
それで、契約書において、自社にも紛争対応する権限があること、この場合に対応した費用や第三者に支払ったものについて外注先に補償を請求できるといった趣旨の規定を設けることを検討できます。
例えば「甲は、甲自身が当該紛争の当事者となったとき、又は乙が当該紛争に対し適切若しくは迅速に対応しない場合、自ら当該紛争に対して対応することができ、乙に対して、その処理解決のために要した費用(弁護士費用、損害賠償、解決金、和解金を含む)の補償を求めることができる。」といった規定です。
■ 補償費目を具体的に列挙する。
前記補償請求に関していえば、外注先に補償してもらいたい費目を具体的に列挙することを検討できます。これによって補償の範囲の争いをできる限り軽減できる方向に働く可能性があります。
例えば、損害賠償、解決金、和解金のほか、以下の費目の列挙を検討できます(以下は例示であり、網羅的なものではありません)。
・弁護士費用、弁理士費用(知財紛争では弁護士に加え弁理士に依頼することもあります)
・鑑定費用(専門家の鑑定が必要なこともあり、費用がかさむことがあります)
・権利取得費用、ロイヤリティ(侵害を回避し、プロダクトやサービスの継続のために必要なことがあります)
弊所ウェブサイト紹介 契約書作成・点検(レビュー)
弊所のウェブサイトの法律情報の解説のページには、ビジネス・企業に関係した法律情報に関する豊富な情報があります。
例えば本稿のテーマに関連した契約書関連については
https://www.ishioroshi.com/biz/kaisetu/keiyaku/
において、「契約書」の作成において考慮すべき以下の点を含め、潜むリスクや弁護士に契約書作成・点検を依頼する意味について解説しています。
・契約書は中立ではない
・同じような内容でも書き方で効果が異なる
・書いていることより書いていないことが重要なことがある
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