2024-11-19 職種限定合意と配転命令(2)
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なお、このトピックは、メールマガジン発行日現在での原稿をほぼそのまま掲載しており、その後の上級審での判断の変更、法令の改正等、または学説の変動等に対応していない場合があります。 |
今回の事例 職種限定合意と配転命令(2)
最高裁令和6年4月26日判決
事案の概要については前稿(以下のURL)をご覧ください。
https://www.ishioroshi.com/biz/mailmag/topic/topic20241022
前稿でも述べたとおり、最高裁は、労働者と使用者(会社)との間に職種や業務内容を特定のものに限定する旨の合意がある場合には、使用者(会社)は、当該労働者に対し、同意なしに当該合意に反する配置転換を命ずる権限を有しないと判断しました。
解説
今回は、今回の最高裁の判断と、2024年4月から施行されている改正労働基準法施行規則に伴う「労働条件明示義務」との関係についても取り上げたいと思います。
労働基準法15条では、労働契約の締結に際して会社が労働者に一定の労働条件の明示を義務づけており、これを受けた労働基準法施行規則5条が列挙する項目に「就業場所及び従事すべき業務」があります。そしてこの項目は、「雇入れ直後」のもので足りるというのが行政解釈でした(厚生労働省平成11年1月29日基発45号通達)。
しかし、改正後の労働基準法施行規則では、「就業場所及び従事すべき業務」の「変更の範囲」、つまり、将来の配置転換などによって変わり得る就業場所や業務の範囲を明示する必要がある、ということになりました(同規則5条1項1号の3)。
そのため、改正後の施行規則が施行後の労働契約(2024年4月以降)において、就業場所や従事すべき業務について変更の範囲が示されていない場合には、会社と労働者との間には就業場所や職種を限定する合意があったと裁判所が認定する方向に大きく傾くようになると思われます。
そして、前稿で取り上げた最高裁のとおり、労働者と会社との間に職種や業務内容を限定する合意がある場合、会社は、当該労働者の同意なしに当該合意に反した配置転換の権限はありません。
このため、企業としては、今後労働者を雇用する場合において、従来の雇用慣行のような総合職として、広い範囲での勤務地や職種の異動を想定している場合には、労働契約書や労働条件通知書において、就業場所や従事すべき業務の変更の範囲を明示することは、重要になってくると思われます。
弊所ウェブサイト紹介~労働法 ポイント解説
弊所のウェブサイトの法律情報の解説のページには、ビジネス・企業に関係した法律情報に関する豊富な情報があります。
例えば本稿のテーマに関連した労働法については
https://www.ishioroshi.com/biz/kaisetu/roumu/index/
において解説しています。必要に応じてぜひご活用ください。
なお、同サイトは今後も随時加筆していく予定ですので、同サイトにおいて解説に加えることを希望される項目がありましたら、メールでご一報くだされば幸いです。
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