2017-06-06 下請取引と代金の減額
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なお、このトピックは、メールマガジン発行日現在での原稿をほぼそのまま掲載しており、その後の上級審での判断の変更、法令の改正等、または学説の変動等に対応していない場合があります。 |
1 今回の事例 下請取引と代金の減額
今回は、公正取引委員会が平成29年5月10日に下請法第7条第2項の規定に基づき行った勧告について取り上げます。
具体的には、コンビニエンスストアを運営するある会社において下請法違反(下請代金の減額の禁止)にあたる行為があったとして、同社に対し、再発防止策を勧告しました。
2 公正取引委員会の判断
公正取引委員会が認定した違反行為としては、下請事業者の責に帰すべき理由がないのに、10名の下請事業者から、平成26年2月から平成27年1月までの間、総額4622万4401円の下請代金の額を減じていた、というものです。具体的には以下のような行為が含まれています。
●「ベンダー協賛金」(商品の販売促進のための費用)を下請代金の額から差し引いていた。
●「箸・フォーク代」(弁当等の購入者に配布する箸等の費用)を下請代金の額から差し引いていた。
●「販売奨励金」等(自社の利益確保のために徴収した金銭)を支払わせていた。
●「登録写真代」(店舗に配信する新商品案内を作成する費用として徴収した金銭)を下
請代金の額から差し引いていた。
●「販促協力金」(値引きセールを実施する際の原資として徴収した金銭)を下請代金の額から差し引いていた。
●「オープン販促費」(新規開店時の廃棄ロス費用の補填のために徴収した金銭) を下請代金の額から差し引いていた。
3 解説
(1)下請法に定める代金減額禁止の規定
いわゆる下請法においては、親事業者が下請事業者に対して優越した立場にあるという特殊な関係であることを踏まえ、親事業者に対して11の禁止事項(支払遅延、減額、買いたたき等)を定めています。
そして本件でテーマとなった下請法4条1項3号は、「下請事業者の責に帰すべき理由がないのに、下請代金の額を減ずること。」を禁じています。これは、決定された契約内容を契約どおり実行することは取引の基本であるところ、下請取引の場合、上の特殊な力関係から、契約した後に減額が行われる例があるため、規定されたものです。
そして、減額については、名目、方法、金額の多少を問わず、また発注後いつの時点で減額しても同号に違反することになる点、留意が必要です。
(2)実務上の留意点
実務上のケースとして、以下若干の例を取り上げたいと思います。
■ 手形払の現金払への変更
今まで親事業者が120 日をサイトとする手形払としていたものを現金払に変更するにあたって、金利や割引料等相当額を減額するという場合があるかもしれません。
このケースでは、下請法上の 「減額」に当たるおそれがあります。他方、契約上は手形払であるものの、下請事業者からの要請により一時的に現金払を行ういう場合に、自社(親事業者)の短期調達金利相当額であれば差し引いてもよいとされています。
■ 検査の省略と減額
契約書において、検査を省略する代わりに、瑕疵の有無にかかわらず下請代金から数%を損害賠償として差し引くとする条項があり、親事業者がこれに基づき毎月下請代金から減額をしているというケースがあるかもしれません。
このようなケースでは、契約条項があったとしても、瑕疵の有無にかかわらず減額するという扱いは、下請法に違反するおそれがあるというのが公正取引委員会の見解です 。
■ ボリュームディスカウント
ボリュームディスカウントについては、単に取引量が多いからという理由でのディスカウントは下請法に違反するおそれがあります。
むしろ発注数量の増加による単位コストの低減により下請事業者が得る利益が、そうでない場合の利益を上回ることとなる必要があるとされています。
以上のとおり数例を取り上げてみました。親事業者としては、故意に下請法に違反している意識がないものの、取引慣行として行われてきたもので、実は下請法に違反しているという例があるかもしれません。それで、従来の慣習にとらわれず、一度法律専門家の視点から自社の取引慣習を見直してみるとよいかもしれません。
4 弊所ウェブサイト紹介~代表弁護士100問100答
以下のURLに、拙稿の執筆者である弁護士法人クラフトマン代表の石下雅樹弁護士・弁理士についての「100問100答」が掲載されています。
https://www.ishioroshi.com/biz/lawyer_office/lawyer_ishioroshi/qa/
執筆者のキャラクターが手に取るように分かる??(かもしれません??)。ご関心のある方、お手すきの際ご笑覧くだされば幸いです。
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