2014-06-17 テレビゲーム内蔵プログラムの改変と商標権侵害
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1 今回の判例 テレビゲーム内蔵プログラムの改変と商標権侵害
名古屋高裁 平成25年1月29日判決
A氏は、家庭用テレビゲーム機Wiiについて、Wii専用アプリケーション以外のアプリケーションのインストールと実行が可能となるように内蔵プログラム(「ファームウェア」)等を改造し、任天堂が商標登録である「Wii」と「Nintendo」の商標を付したまま販売しました。
こうしたA氏の行為が、商標法78条(商標侵害罪)の罪に問われました。
2 裁判所の判断
裁判所は以下の理由でA氏の行為を商標権侵害行為としました。
- 商標権者等により適法に商標が付され流通に置かれた商品(真正商品)が転々と譲渡される場合は、商標の機能である出所表示機能及び品質保証機能は害されないから、商標権侵害について「実質的な違法性」を欠く。
- ファームウエアが改変されたWiiの品質の提供主体は、もはや商標権者である任天堂であると識別できない。また非正規のファームウエアではゲーム機としての動作を保証できないから、商標の品質保証機能が損なわれている。
- したがって、本件では「実質的な違法性」が欠いているとはいえず、A氏の行為は商標権侵害である。
3 解説
(1)非典型的な商標権侵害行為
他者の登録商標を自己の商品・包装等に付する行為が商標権侵害に当たることは容易に理解できることと思います。例えば、自社で製造したゲーム機に「Wii」を付けることは明らかに商標権侵害に当たるわけです。
しかし、そのほかに様々な行為が商標権侵害となりえます。例えば、メーカーX社が最小単位200gの瓶詰めで売っている調味料があるとします。これを、小売店Y社が、少人数の家族などの顧客の便宜を考えて50g単位の小袋に小分けして、その調味料の登録商標と全く同じ商標のラベルを印刷して貼り付け、店頭に並べて販売したとします。
中身は本物そのものですし、何の加工もしてありません。また、X社の商標であることも明示されています。しかし、そのようなケースで、最高裁(昭和46年7月20日判決ハイミー事件)は、商標権の侵害に当たると判断しました。
その理由は、自分の商品を製造して流通過程に置く商標権者は、その商品が流通過程に置いたときと同じ状態で最終消費者のもとに渡ることを期待する利益があるからである、と説明されています。
(2)非典型的な商標権侵害行為の例
前記のほか、以下のようなものも原則として商標権侵害と判断されます。
- 真正商品(いわゆる「本物」)を、小分け、加工、改変して当該商標を付して売ること
- 真正商品を、再包装して当該商標を付して売ること
- 無印の真正商品に、商標を付して売ること
- いったん顧客に販売された商品を買い戻して、新品のように装って売ること
- 商標権者が廃棄することを予定した商品を売ること
つまり、今回の判例のケースもそうですが、何らかの意味で商標の出所表示機能や品質保証機能が害されるような他者商標の使用は商標権の侵害となる可能性があるわけです。
それで、他者の商標が付されて製造販売されている製品を利用して事業を行うアイディアが浮かぶことがあるかもしれませんが、そういった場合は、他者の商標権侵害について考える必要があるという点留意するとよいかと思われます。
特に一見問題ないのではないかと思われる行為も法的観点では商標権の侵害行為と判断されることもありますので、新しい事業を行おうという場合、商標問題に通じた弁護士や弁理士に相談することはマイナスとはならないでしょう。
参考ページ:商標法解説 https://www.ishioroshi.com/biz/kaisetu/shouhyou/index/
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