2012-08-21 フランチャイズと優越的地位の濫用
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なお、このトピックは、メールマガジン発行日現在での原稿をほぼそのまま掲載しており、その後の上級審での判断の変更、法令の改正等、または学説の変動等に対応していない場合があります。 |
1 今回の判例 フランチャイズと優越的地位の濫用
東京地裁 平成23年12月22日判決
今回は、フランチャイズ・チェーンの運営会社Y社と、同社とのフランチャイズ契約(「FC契約」)のもとでコンビニを経営する 複数の加盟店オーナーX氏らとの訴訟です。
Y社は、加盟店X氏らに対し、各店舗において以下の2つの業務を行うよう要求しました。
- 収納代行サービス(公共料金)・チケット発券・代金受領等
- 深夜営業(23時から翌7時)
X氏らは、これらの業務を行うことを要求したY社の行為が、誤収納による損失、深夜労働の負担、強盗被害の危険等の大きなデメリットを生じさせる行為であるとして、当該要求の差止を求めて裁判を提起しました。
2 裁判所の判断
裁判所は、以下のとおり判断し、X氏らの請求を棄却しました。
- 本件FC契約に基づき、加盟店Xらには収納代行等業務を行う義務がある。
- これらの業務に関して得られる利益が極端に小さいとはいえず、負担も大きいとはいえないことを考えると、X氏らに大きなデメリットが生じるとはいえない。
- これらの業務は、コンビニ業界のいわば定番サービスとして認識されるようになっていたため、これが行なわれないならばY社のFCチェーンの利便性に関するイメージが傷つく可能性は高い。
- 上記の点から、Y社の要求行為は、独占禁止法が禁止している「優越的地位の濫用」、すなわち不当な強要行為であるとはいえない。
3 解説
(1)FCシステムと独占禁止法について
フランチャイズ・システムについては、過去に、フランチャイザー(本部)のフランチャイジー(加盟者)に対する情報開示義務・報告義務に関する判例を取り上げました。今回は、フランチャイザー(本部)の観点から、FCシステムにおいて留意すべき事項、特に独占禁止法に関わる問題点を取り上げます。
フランチャイズ契約は、フランチャイザー(本部)とフランチャイジー(加盟者)という別個独立した事業者間の契約です。
この点、別個独立した事業者間の取引を規制する法律の一つに、独占禁止法があります。実際、FCシステムにおいては、フランチャイザー(本部)が、中小企業または個人事業者であるフランチャイジー(加盟者)に対して圧倒的に強者の立場にある場合が多いため、同法が問題となる場面は少なくないといえます。
(2)独占禁止法上問題となり得る行為
この点、公正取引委員会は、「フランチャイズ・システムに関する独占禁止法上の考え方について」(以下「FCガイドライン」といいます)において、加盟者募集の段階とFC契約後の取引につき、独占禁止法に違反する可能性がある行為について詳しく説明しています。以下、概要を述べます。
i 加盟者募集段階
ここでは、契約の内容、モデル店の過去の営業実績、加盟希望者が必要とする投資額、加盟希望者の収益予想など、契約締結の是非を判断するのに十分な内容の情報を加盟希望者に開示し、説明しなければならないとしています。
ii 契約締結後
A) 優越的地位の濫用の禁止
加盟者の取引先の制限、仕入数量の強制、見切り販売(消費期限が迫った商品の値引き)の制限、契約締結後の契約内容の不利益な変更(後述します)、契約終了後の不必要な競業禁止等が、優越的地位の濫用に当たりうる点を指摘しています。
B)抱き合わせ販売等・拘束条件付取引
加盟者に対し、商品の仕入先等を指定する場合(種々の要素が考慮されます)に、抱き合わせ販売等・拘束条件付取引に該当する余地があります。
C)再販売価格の拘束
加盟者による地域市場の実情に応じた販売価格設定や売れ残り商品等の値下げ販売等を制限し、本部が加盟者に供給している商品につき、販売価格を拘束することは、原則として独占禁止法上制限される再販売価格の拘束に該当する旨が指摘されています。
(3)実務上の留意点
以上のとおり、フランチャイザー(本部)となる場合は、独占禁止法との抵触というリスクを踏まえる必要があります。確かに、FCチェーンとしてのイメージやサービス・品質の統一性の維持から、本部が加盟店に様々な合理的な制約を課すのは当然といえます。
しかし、こうした合理的な制約を超えた不必要な制約や、本部のリスク回避や利益のみの観点から加盟店に大きな負担を課すように見える制約は、上記FCガイドラインなどに示された独占禁止法上の考え方を踏まえ、十分慎重に検討する必要があると考えられます。
この点で、FC本部の担当者は、独占禁止法や前述のFCガイドライン等に精通し留意するとともに、問題が生じそうな制限をFCシステムに含めるようなケースでは、公正取引委員会の審決、裁判例等上記諸法令に精通した弁護士等の法律の専門家に早い段階から相談し、アドバイスを受けることも有益といえるでしょう。
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