2015-03-24 「ネットワークおまかせサポート」と商標の識別力
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なお、このトピックは、メールマガジン発行日現在での原稿をほぼそのまま掲載しており、その後の上級審での判断の変更、法令の改正等、または学説の変動等に対応していない場合があります。 |
1 今回の判例「ネットワークおまかせサポート」と商標の識別力
知財高裁平成26年8月6日
A社が、「ネットワークおまかせサポート」という、以下のようなロゴでなる商標の出願をしました。
当該商標の指定役務は、第37 類「事務用機械器具の修理又は保守、電子応用機械器具の修理又は保守、電話機械器具の修理又は保守、ラジオ受信機又はテレビジョン受信機の修理、電気通信機械器具の修理又は保守ほか」となっていました。
ところが、特許庁が、同商標につき、役務(サービス)の質を表示するに過ぎないとして、商標法3条1項3号により拒絶の審判をしたため、A社が、当該審決の取消を求め、訴訟を提起しました。
2 裁判所の判断
裁判所は、以下のとおり判断し、特許庁の判断を認めました。
● 本願商標は、全体として「コンピューターネットワークに関する相談や接続設定の代行など、顧客が自分で判断・選択せず、他人にまかせてサポートしてもらうサービス」といった意味を有する語として認識される。
● 本願商標は、赤色の文字を白色で縁取りした太文字体で表した文字に陰影を付するデザインであり、 当該文字を目立たせるためのものであるが、そのデザインはごく普通に用いられる一般的な表現方法であり、普通に用いられる形態であるといえる。
● よって、本願商標は、役務(サービス)の質(内容)を表示するものとして一般に認識されるものであり、特定人によるその独占使用を認めるのは公益上適当でなく、かつ識別力を欠く。
3 解説
(1)商標法3条1項3号の趣旨
商標法3条1項3号は、「その商品の産地、販売地、品質、原材料、効能、用途、数量、形状(包装の形状を含む。)、価格若しくは生産若しくは使用の方法若しくは時期・・・を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標は、商標登録を受けることができない。」と規定しています。
つまり、商品やサービスの内容や品質など一定の状態を普通の方法で記述する商標、いわゆる「記述的商標」は、原則として商標登録を受けることができない、とされています。
例えば、レストランという役務で「美味しい」という商標の登録が認められると、他のレストランは「美味しい」という言葉が使えなくなってしまいます。また、りんごについて「青森産」という商標が登録されてしまうと、他の農家や青果店は、「青森産」と表示できなくなってしまいます。こうした事態は明らかに不都合であり、商標法はこうした不都合な事態を防止するために、上のように規定しているわけです。
また、一般に商品の質、内容や産地などは、取引上普通に使用されるものですので、これらを商標として使用しても、多くの場合、商標の重要な機能である、「自他商品識別機能」(自分の商品を他の商品から識別する機能)に欠ける、ということも理由となっています。
(2)ビジネス上の留意点
新しい商品やサービスを開発し、これに商品名をつける場合、商標法においては品質等を「普通に用いられる方法で表示する」ものは登録されないのが原則、という点を頭に入れておく必要があります。
他方、例えば、今まで世の中になかった画期的な機能や性能を採用した商品や、特定の性能が群を抜いているような商品といった場合には、その商品の特徴・種類・内容を示す商標が効果的であることは事実です。
この点、商標法3条1項3号によって登録できない商標は、「普通に用いられる方法」で表示する標章「のみからなる」商標ですので、これらのいずれかの要件を外せば、不登録事由にはならない、ということになります。
この点で一つの方法としては、品質などを「間接的に」表示する商標を考えてみることかもしれません。例として、「迫力満点」(登録第4697915号)があります。これは、指定商品を、カレー、シチュー又はスープのもととするものです。
これは、いったんは「ボリューム感のある」等の意味合いであって単に商品の品質を表示するにすぎないとされ、登録が拒絶されましたが、審判で争われた結果、品質は間接的な暗示であるとして、登録が認められました。
それで、記述的商標という商標法の規定を回避しつつ、上手にメッセージを伝えられる商標を考えてみることができるかもしれません。そしてその際には、弁理士や弁護士のアドバイスも役立つことと思います。
参考ページ:商標法解説 https://www.ishioroshi.com/biz/kaisetu/shouhyou/index/
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