2011-01-28 センシティブ情報と個人情報流出の責任
ここでは、弊所発行のメールマガジン「ビジネスに直結する判例・法律・知的財産情報」のバックナンバーを掲載しています。同メルマガでは、比較的最近の判例の紹介を通じ、ビジネスに直結する法律知識と実務上の指針を提供します。 学術的・難解な判例の評論は極力避け、分かりやすさと実践性に主眼を置いています。経営者、企業の法務担当者、知財担当者、管理部署の社員が知っておくべき知的財産とビジネスに必要な法律知識を少しずつ吸収することができます。メルマガの購読(購読料無料)は、以下のフォームから行えます。
なお、このトピックは、メールマガジン発行日現在での原稿をほぼそのまま掲載しており、その後の上級審での判断の変更、法令の改正等、または学説の変動等に対応していない場合があります。 |
事案の概要
東京地方裁判所平成19年2月8日判決
平成14年,エステティックサロンAを経営するB社が,ウェ ブサイトに入力された個人情報を流出させました。
判決の事実によれば,B社にレンタルサーバ業者C社が,B社 のウェブサイトを,B社専用のサーバに移設する作業を行った とき,B社保有の個人情報が格納されたファイルが,だれでも 特定のURLを入力することで自由にアクセスできる状態に置 かれたとのことです。そして,このURLが,「2ちゃんねる」 に書き込まれ,さらに流出した個人情報がファイル交換ソフト などを介して広くインターネット上に流通してしまいました。
流出情報は,氏名,年齢,住所,電話番号,メールアドレス等 のほか,興味あるエステコース等他人に特に知られたくない情 報が含まれていました。
そのため,情報が流出された個人が,慰謝料請求と弁護士費用 の賠償請求を行ないました。
判決の概要
東京地裁は,原告1名3万円の慰謝料を認めました。
解説
この慰謝料額の評価は様々ですが,過去の代表的な事例である, 宇治市住民基本台帳データ事件の1名1万円,ヤフーBB事件 の1名5千円と比較すれば,相当に高額であると考えられます。
各自3万円の慰謝料の最大の理由は,流出した個人情報が,氏 名住所等の基本的な識別情報のみの場合と比較して、秘匿され るべき必要性が高いことでした。
本件は,特に取り扱う個人情報に秘匿性の高いセンシティブな 情報が含まれている業種にとっては大きな意味を持つように思 えます。今回のエステティックサロンもそうですし,そのほか には,例えば,病院・医院といった医療機関,薬局における患 者情報もこれに含まれるでしょう。また,多くの企業が,個人 情報の登録を受ける際に,マーケティング目的で,色々な趣味, 嗜好,出身地等のパーソナル情報を収集しています。
それで,どの情報もそうですが,特にセンシティブな情報を取 り扱う事業者は,このケースのように第三者に情報(データ) の取り扱いを委託する場合は特に,より慎重な対応が必要とな り,事故に備えて賠償保険へ加入するなどの対応もより必要に なると思われます。
なお,筆者は,この問題について,特に調剤薬局に絞り,詳細 に述べているので,ご参照ください(「Q&A 薬局・薬剤師 の責任-トラブルの予防・解決-」(新日本法規出版刊のうち, Q74~Q76)。
メルマガ購読申込はこちらから
弊所発行のメールマガジン「ビジネスに直結する判例・法律・知的財産情報」は、以下のフォームから行えます。
なお、入力されたメールアドレスについては厳格に管理し、メルマガ配信以外の目的では使用しません。安心して購読申込ください。
法律相談等のご案内
弊所へのご相談・弊所の事務所情報等については以下をご覧ください。