2025-02-18 将棋ナレーション事件と著作権侵害(2)
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なお、このトピックは、メールマガジン発行日現在での原稿をほぼそのまま掲載しており、その後の上級審での判断の変更、法令の改正等、または学説の変動等に対応していない場合があります。 |
今回の判例 将棋ナレーション事件と著作権(2)
知財高裁令和5年3月16日判決
将棋に関するウェブサイトを管理するA氏が、テレビ放送局Bに対して、同局が放映した将棋に関する番組に使用されたナレーションが同ウェブサイト掲載の文章に類似しているとして、著作権侵害を主張したところ、裁判所は、A氏が主張する文章のうち一部について著作権侵害を認めました。
事案の委細と解説は以下の前稿をご覧ください。
https://www.ishioroshi.com/biz/mailmag/topic/topic20250121
解説
本件の事案とは異なりますが、前稿で触れたとおり、自社が他者の著作権を侵害して紛争に巻き込まれるリスクが顕在化する事態としては、自分で他者の文章を流用するというよりは、何かの制作を他者に外注した際に外注先が安易に流用をしてしまうという事態かもしれません。
それで、外注先との契約において、外注先による権利侵害行為をコントロールするための手当が必要です。そのための一つの手段は、外注先との契約におけるいわゆる知財保証条項(対象物が他人の知的財産権を侵害しないことを保証したり、侵害が生じた場合の対応について規定する条項)の検討です。
例えば一つの点としては「知財保証条項保証の発動契機」について検討できます。つまり、どんな事態において知財保証条項に基づく責任が発生されるか、に留意してドラフトします。
例えば、「成果物が第三者の知的財産権を侵害したときは、乙(外注先)は甲が被った損害や対応のための費用を補償する・・」という記載ですと、外注先が責任を負うために、発注側が、成果物が実際に第三者の知的財産権を侵害している事実を主張立証しなければならなくなる、という結果になる可能性があります。
そうすると、発注側としては、侵害を主張する第三者には非侵害を主張し、外注先には侵害を主張しなければならないというおかしな結果になってしまいかねません(実際には第三者との紛争の結論が出た後の外注先への責任追及となるでしょう)。
他方「成果物につき第三者から知的財産権の侵害の主張がなされたときは・・」等と規定すると、当該権利侵害の主張があれば発注側に責任を負ってもらえる可能性が高くなります。
さらに次稿では、知財保証条項における留意点についてご紹介します。
弊所ウェブサイト紹介 契約書作成・点検(レビュー)
弊所のウェブサイトの法律情報の解説のページには、ビジネス・企業に関係した法律情報に関する豊富な情報があります。
例えば本稿のテーマに関連した契約書関連については
https://www.ishioroshi.com/biz/kaisetu/keiyaku/
において、「契約書」の作成において考慮すべき以下の点を含め、潜むリスクや弁護士に契約書作成・点検を依頼する意味について解説しています。
・契約書は中立ではない
・同じような内容でも書き方で効果が異なる
・書いていることより書いていないことが重要なことがある
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