2023-02-21 プログラムの逆コンパイルと著作権侵害

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今回の判例  プログラムの逆コンパイルと著作権侵害

大阪地裁令和3年1月21日判決

 A社は、競艇の勝舟投票券を自動的に購入する等の機能を有するソフトウェアについて著作権を有していました。

 裁判所の認定では、B社が、A社のプログラムを入手して逆コンパイルをした上で難読化を解除しました。そして、若干の機能を追加した以外は、逆コンパイルによって得られたA社のプログラムをそのまま利用しました。

 こうした事実について、裁判所は、B社がA社のプログラムを複製したとして、著作権侵害を認めました。

解説

 「逆コンパイル」とは、オブジェクト(実行可能形式)のコンピュータプログラムを解析し、開発時に用いられたプログラミング言語によるソースコードに戻す変換処理をいい、リバースエンジニアリングのひとつといえます。

 こうした行為が複製行為として著作権を侵害するか否かについては、裁判所は、著作権侵害を認めてきました。先例となるのは東京地方裁判所昭和57年12月6日判決ですが、今回の裁判もこの先例と同様の見解を取ったことになります。

 もっとも、今回のように他者のプログラムの大半又は大きな部分をほぼそのまま自社のプロダクトとして使うような場合はともかくとして、技術開発のための調査解析目的、保守や補修の目的、互換性や相互接続性を確保する目的などで他社の製品をリバースエンジニアリングすることはビジネス的には不当な行為であるとは考えられていないと思われます。しかし、こうした目的であっても、プログラムのリバースエンジニアリングについては著作権侵害の疑いが常にありました。

 この点、平成30年改正著作権法30条の4では、いわゆる「柔軟な権利制限規定」が設けられ、文化庁著作権課は、リバースエンジニアリングのような「プログラムの調査解析目的のプログラムの著作物の利用は、プログラムの実行等によってその機能を享受することに向けられた利用行為ではないと評価できる」、つまり著作権侵害行為とはならないとの見解を示しました。

 そして、多くの法律家も、今回のような「逆コンパイル」したものをほぼそのまま使ってソフトウェアを販売するようなケースではなく、技術開発のための調査解析目的等の前述の目的などであれば、著作権法第30条の4によって逆コンパイルが許されると考えています。

 もっとも、これはあくまでも著作権侵害の有無に限るという点に留意が必要です。例えば他者のソフトウェアを利用する際に使用許諾契約に同意することは一般的ですが、その中にリバースエンジニアリング禁止の規定があるというケースでは、調査解析目的の逆コンパイルであっても使用許諾契約違反となる可能性が無視できないからです。

 したがって、正当な目的によって他者のソフトウェアのリバースエンジニアリングにおいては、著作権の観点のほか、こうした契約の側面も考慮して決定する必要があります。

弊所ウェブサイト紹介~IT・ソフトウェア・システム開発

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 本稿のテーマに関連した、IT・ソフトウェア・システム開発・コンピュータ関連問題は弊所の最大の取扱分野の一つです。

https://www.ishioroshi.com/biz/kaisetu/it/index/

にあるとおり、システム開発委託契約、ソフトウェア使用許諾契約、ソフトウェアOEM契約といった契約のポイント、オープンソースやシステム開発に関連した法律問題・係争に関する解説など豊富な解説を用意しています。

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