2023-01-31 ピクトグラムの著作権とライセンス契約
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なお、このトピックは、メールマガジン発行日現在での原稿をほぼそのまま掲載しており、その後の上級審での判断の変更、法令の改正等、または学説の変動等に対応していない場合があります。 |
今回の判例 ピクトグラムの著作権とライセンス契約
大阪地裁平成27年9月24日判決
大阪市各局の設置する案内表示等に使用するために、大阪市に関連する法人からの委託に基づき、制作会社により制作された諸施設のピクトグラムに関する訴訟で、争点の一部として以下が争われました。
1)契約の有効期間後に頒布された、ピクトグラムが含まれる冊子の頒布が許されるか
2)ピクトグラムを使用できる媒体として「案内表示」「集客印刷物」とある中で、当該冊子をPDFとしてホームページからのダウンロードをさせることが許されるか
なお、問題となったピクトグラムの一部は以下のようなものでした。
裁判所は、以下のとおり判断しました。
1)について
有効期間内に作製された集客印刷物を有効期間満了後これを回収して廃棄することまでを合意していたと解することはできない。よって、有効期間内に作製されたものは、その頒布も許諾されていると解釈できる。
2)について
不特定多数の公衆がダウンロードすることにより閲覧可能となる状態のものが「集客印刷物」に該当するとはいえないし、アクセスの限定され ている印刷物の「頒布」と同視することもできない。
解説
今回の紛争の原因は種々あると思いますが、その一つとして、契約書の記載内容が必ずしも明確ではなかったという点が挙げられるように思います。
例えば、今回の契約では、当該ピクトグラムを「集客印刷物」に使用することの許諾はありましたが、契約期間終了後に残っている冊子についての取り扱いは明示されていなかったようです。
この点実務上、ライセンス契約においては、契約終了時に疑義が生じたり紛争化しないよう、契約終了時に許諾対象物の取扱について明示することが望ましいといえます。
また、契約に具体的に明示されていない場合許諾対象物の使用方法についても、当事者間の関係が悪くなると紛争の原因となることは少なくありません。そのため、例えば冊子の頒布なら、どんな媒体においてか、いかなる方法(例えばウェブサイトでのダウンロードを許すのか等)か等をできる限り明示することは重要といえます。
経験が豊富な専門家であれば、契約書の作成やレビューにおいて、実務上想定される種々の事態やリスクを考えて手当をすることができます。重要な契約においてはこうした点にコストを掛けることは必要といえるかもしれません。
弊所ウェブサイト紹介~商標ライセンス契約の解決
弊所のウェブサイトの法律情報の解説のページには、ビジネス・企業に関係した法律情報に関する豊富な情報があります。
例えば本稿のテーマに関連したライセンス契約については、
https://www.ishioroshi.com/biz/kaisetu/shouhyou/index/singai_license/
にあります。このページは著作権ではなく商標ライセンス契約ではありますが、基本的な考え方については共通するものがあります。
必要に応じてぜひご活用ください。
なお、同サイトは今後も随時加筆していく予定ですので、同サイトにおいて解説に加えることを希望される項目がありましたら、メールでご一報くだされば幸いです。
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