2022-01-11 契約違反行為の抑止のための違約金の定め

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今回の事例 契約違反行為の抑止のための違約金の定め

 東京地裁令和3年1月27日判決

 A社は、医療に関する各種情報処理のためのソフトウェアを開発して提供していました。A社は、医師会等から委託を受けて健康診断等の費用請求代行業務を行うB社に対して同ソフトを提供していました。
 
 A社とB社の間の契約では、契約書にある医師会ごとに月額使用料が定められていたところ、対象外の医師会について同ソフトを使用した場合、当該月額使用料の10倍の違約金が定められていました。そしてB社による当該違反使用が判明したため、A社はB社に違約金を請求しました。

 これに対してB社は、同違約金は著しく高額であって無効であると主張しました。
 
 裁判所は、前記違約金の定めの背景として、B社による過去の不正使用があってそれを抑止するために設けられたこと、合意内容とその違反の範囲が明確であること、B社が対象となる医師会を1か月単位で増減させることが可能である等の事情から違反の回避は容易であったことなどから、この違約金の定めは有効と判断しました。

2 解説

 ある契約において、契約違反を抑止するための違約金の定めを置く必要を感じることがあるかもしれません。

 この点違約金は、高額であればあるほど抑止力が強いですが、他方、極端に高額にすると、民法に定める「公序良俗」という規定への違反を理由として無効になってしまう危険が高くなります。

 ではどの程度の違約金であれば有効と判断されるでしょうか。

 不正乗車に運賃3倍の違約金が適用されることが多いように、一般的には3倍以内程度なら無効と判断される可能性は低いと言われています。もっとも、契約の相手方が一般消費者(消費者契約法が適用される)か企業か、違反行為抑止に関する違約金規定の必要性の高さ、違反行為による損害の程度、違反行為の発覚のされにくさ、違反行為回避への支障の有無、両当事者間の関係や違約金の定めに至る経緯等の諸事情によっては、これよりも高率・高額の違約金が有効と認められることもあります。

 今回ご紹介した例はその一つといえます。また東京地裁令和2年11月6日判決は、インフルエンサーと企業とのマッチングを行うプラットフォームの運営に関する利用規約において、企業がプラットフォームを介さず直接インフルエンサーに対する依頼行為をすることについて、「過去1年分の利用料または300万円のいずれか低い金額」という違約金の定めを有効と判断しました。

 もっとも、上の例のような比較的高率な違約金を一般化することはできません。個々の違約金規定の有効性は、上のように一切の事情が考慮されるため、一律の基準を設けることはできませんし、個々のケースで事前に有効性を判断することは非常に困難です。そこで法律家の意見も聞きながら、かつ無効と判断されるリスクと必要性を考えながら慎重に考慮する必要があると思います。



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