2021-07-09 商標の不使用取消審判と指定商品の同一性

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今回の事例

 知財高裁令和3年1月26日判決

 A社は、指定商品を「第16類 新聞」として、「滋賀新聞」の文字を含む図形商標の登録を受けていました。これに対し、第三者が、当該商標は使用されていないとして不使用取消審判を起こしました。

 A社は、電子新聞にのみ当該商標を使用しているところ、指定商品の「新聞」には電子版を含むから、商標を使用していると主張しました。

 裁判所は、第16類が、商標法施行令上「紙,紙製品及び事務用品」のカテゴリーにあること、商標法施行令が紙媒体と電子版を峻別していること等から、「第16類 新聞」には電子版は含まれない、と判断し、商標登録の取消を認めました。

解説

 登録された商標権を持つ権利者は、当該商標を独占的に使用できます。他方、使用されず、また使用の意思もない商標に独占的権利を認められると、現実にその商標を使用したい他者も使用できないことになり、誰の利益にもなりません。
 
 それで、商標法は、一定期間(3年間)使用されていない商標について、その登録商標の取消の審判を請求することができる制度(不使用取消審判)を設けています。

 この点で問題となるのは、登録された商標の「指定商品」と実際に使用された商品が微妙に異なる場合です。過去にこれが問題となったケースの例を挙げれば、以下のようなものがあります。

 結論:取消(知財高裁令和元年6月20日判決)
  指定商品「自動車並びにその部品及び付属品」
  実際の商品「電動スクーターや二輪自転車」

 結論:取消(知財高裁平成23年10月13日判決)
  指定商品「電子出版物の提供」
  実際の商品「ホームページやブログの開設」

 結論:取消されず(知財高裁平成24年11月19日判決)
  指定商品「愛玩動物の美容及び看護の教授」
  実際の商品「『愛犬手づくりごはん』教室の開催」

 結論:取消されず(知財高裁平成24年6月6日判決)
  指定商品「電子応用機械器具及び部品」
  実際の商品「ネオンブラケットが用いられるパイロットランプ」

 以上のように、実際使用している商品やサービスが指定商品・役務に含まれるかの判断は、ケースによっては困難なものもあり、この点での判断を誤ると、不使用を理由に取り消されてしまう、という結果もありえます。

 それで、この点で、弁理士や知的財産を重点的に取り扱う弁護士へのアドバイスを求め、商標法上「使用」として認められるかを検討することは重要かと思われます。



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