2020-05-12 色彩や音などの新しいタイプの商標

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今回の事例 色彩や音などの新しいタイプの商標

 知財高裁令和2年3月11日判決

 A社は、オンライン上の賃貸、分譲売買、中古売買等の不動産情報を取り扱う不動産総合ポータルサイトを運営しています。

 そしてA社は、だいだい色の一色(RGBの組合せ:R237,G97, B3)でのみ構成される商標を出願しました。

 具体的な商標の画像は、以下のとおりです。


判決文より引用

 この出願に対して、特許庁が登録を拒絶する査定をし、拒絶査定不服審判においてもその結論が変わらなかったため、A社は、知財高裁に訴えを起こしました。

 

裁判所の判断

 裁判所は主として以下のような理由から、A社による当該商標の登録を認めませんでした。

・ A社は、平成18年から13年間にわたり,ウェブサイトにおいて継続して本願商標の橙色を使用してきており、A社のテレビCMの実績や売上実績もある。

・ しかしこれらの点を勘案しても、審決時(令和元年7月31日)において、本願商標の橙色のみが独立して、A社の業務である「ポータルサイトにおける建物又は土地の情報の提供」の役務を表示するものとして、日本国内における需要者の間に広く認識されていたも
のと認めることはできない。

・ よって、本願商標は、その使用により自他役務の識別機能ないし自他役務識別力を獲得したものと認めることできない。

 

解説

(1) 新しいタイプの商標の概要

 商標とは、簡単に言うと、自己の商品やサービスを識別する印であり、通常は言葉やロゴなどで表現されることが一般的です。

 この点、平成26年改正商標法により商標登録を受ける対象が大幅に拡大されました。具体的には、「動き」「ホログラム」 「色彩」「音」「位置」が商標登録の対象となりました。

 本稿では、これらの一部についてアウトラインをご紹介したいと思います。

 

(2)「色彩のみからなる商標」

 「色彩のみからなる商標」とは、これまでの「色彩のある図形商標」とは異なります。むしろ、色彩の商標の登録を受けると、輪郭や形状にかかわらず、特定の商品やサービスに関して、色や色の組み合わせそのものを独占的に使用できるようになります。

 色彩は、単色もあれば、複数の色彩の組合せもあります。また、商品等の特定の位置に色彩を付すものも含まれます。

 ただし、今回ご紹介した案件もそうでしたが、特に単色での色彩が商標として登録されることのハードルは非常に高いと考えられています。


 色彩のみからなる商標の登録例として、以下のようなものがあります。

  

登録5930334 登録6021307 登録6085064
権利者 トンボ鉛筆 権利者 三井住友フィナンシャルグループ 権利者 ファミリーマート
(3) 音の商標

 音の商標とは、音楽、音声、自然音等からなる商標であり、聴覚で認識される商標のことをいいます。

 音の商標の登録例としては、以下のようなものがあります。

  

登録5804299 登録5805582
権利者 久光製薬 権利者 味の素
(4)ビジネス上の留意点

 新しいタイプの商標の登録が認められた背景には、他国での動きと調和させることに加えて、企業の販売戦略の多様化やデジタル技術の発展にともなって、これまでの文字やロゴにとどまらず、色彩、動きや音といったものに商品やサービスの出所を示す機能があることが認識されて、登録商標として保護されるニーズが高まってきたことにあると考えられます。

 特に色彩商標など、商標のタイプによってはハードルが高いものもありますが、言語にとどまらないブランドメッセージの保護の手段として、活用を検討できるものと思います。

 
 

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