2019-09-24 試験問題集と編集著作物

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今回の事例 試験問題集と編集著作物

 東京地裁令和元年5月15日判決

 A社とB社は、中学校受験のための学習塾を運営する会社です。

 A社は、通塾生と外部受験者を対象に国語のテストを実施し、テスト終了後に解説を配布しました。他方、B社は、同テストが終了した1時間後に、ウェブ上の動画で当該テスト問題についての解説を行いました。

 なお、B社ライブ解説は、当該テストの終了後に、ウェブ上の動画において口頭で解説をするものであり、問題自体やA社の解説が表示されることはありませんでした。

 以上のような事実のもと、A社は、B社に対して、著作権侵害を主張しました。

裁判所の判断

 裁判所は、以下のように判断し、A社の問題集は編集著作物であることを認めましたが、B社の著作権侵害行為は否定しました。

・著作権法12条は、「編集物・・でその素材の選択又は配列によって創作性を有するものは、著作物として保護する」と規定する。

・A社の問題についても、題材となる作品の選択、題材文章のうち設問に取り上げる箇所の選択、設問の内容、設問の配列・順序について、作問者の個性が発揮され、その素材の選択又は配列に創作性がある。

・したがって、A社の問題は編集著作物に該当する。

・B社ライブ解説においては、A社の問題の画像を表示しておらず、口頭でもA社の問題を読み上げてもいないから、A社の著作権を侵害していない。

解説

(1)編集著作物とは

 著作権の対象となる著作物として容易に想像できるのは、画像、文章、音楽、絵画などかもが典型的な例です。他方、データの集合体であるデータベースについては、1個1個のデータには通常著作物性はありません。

 著作権法12条1項は、編集著作物につき、「編集物..でその素材の選択又は配列によって創作性を有するものは、著作物として保護する。」と規定しています。

 つまり、1個1個の素材には著作物性がないようなものも、素材の選択や配列のいずれかに、制作者の個性や思想、創造性が認められるようなものは、著作物として保護を受けられるというわけです。

(2)編集著作物性が認められた実例とビジネス上の留意点

 インターネットやデジタル時代にあって、編集物も含め他者の著作物を利用することはますます容易になっています。しかし、他者が作成した編集物について、創作性のない情報の集合体だろうから著作権はないと考えて、安易にそのまま使用するといったことは避ける必要があると考えられます。

 以下、具体的なイメージを持っていただくため、編集著作物として認められた例と否定例を、裁判例から若干ご紹介します。

(a)アメリカ語要語集事件(肯定例)

  東京高裁昭和60年11月14日判決

 「アメリカ語要語集」という出版物において、標準的な米語から、使用頻度に基づいて単語、熟語や慣用句を選択し、アルファベット順に配列して日本語訳を付した上、これら単語などを用いた慣用句・文例・日本語訳を付したというケースです。裁判所は、語句及び文例の選択及び配列に創意を凝らして創作されたものとして、編集著作物に当たると判断しました。

(b)ウォール・ストリート・ジャーナル事件(肯定例)

  東京高裁平成6年10月27日判決

 新聞記事の編集とは、記者の作成した記事原稿という媒体を取捨選択することによって、伝達すべき出来事自体を取捨選択している。単なる事実、データ、用語等の選択・配列についても、創作性があれば、これに編集著作権を認めることができるとして、英字新聞の紙面を編集著作物と認定し、「全記事抄訳サービス」として同新聞の記事を抄訳した文書について、著作権の侵害を認めました。

(c)商品カタログ著作権侵害事件(肯定例)

  大阪地裁平成7年3月28日判決

 カーテン用副資材等の商品カタログにつき、商品写真などの素材の選択や配列が創作性を有するものであるとして、編集著作物に当たると判断されました。

 (d)松本清張作品映画化リスト事件(否定例)

  東京地裁平成11年2月25日判決

 小説の映画化に関する事項に関し、題名、封切年、製作会社名、監督名、脚本作成者名、主な出演者名を配列して整理・編集したものについて、個々の情報の選択・配列の点においても著作物として保護すべき創作性を有するものとは認められない、と判断しました。

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