2019-04-23 瑕疵ある商品の返品と下請法

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今回の事例 瑕疵ある商品の返品と下請法

キャラクターのライセンスビジネス等を営むA社は、資本金の額が3億円以下の法人たる事業者に対し、キャラクター商品の製造を委託しています。

 A社は、下請事業者から商品を受領した後、受領後6か月を経過した商品を引き取らせていました。その理由としては、商品に変色等が発見されたためや、一部の商品に不具合があったことなどから在庫商品全てを検品させるため、ということでした。

公正取引委員会の判断

 公正取引委員会は、A社の行為が下請法に違反すると認定し、以下のように勧告を出しました(要旨)。

(1)自社の行為が下請法に違反することや、今後違反行為を行わないことを、取締役会の決議により確認すること。
(2) 今後、下請法のこれら規定に違反する行為を行うことがないよう、研修を行うなど社内体制の整備のために必要な措置を講じること。
(3) 採った措置の内容などを自社の役員及び従業員、取引先下請事業者に通知すること。
(4) 採った措置について、速やかに公正取引委員会に報告すること。

解説

(1)下請法に定める返品の制限の規定

 いわゆる下請法においては、親事業者が下請事業者に対して優越した立場にあるという特殊な関係であることを踏まえ、親事業者に対して11の禁止事項(支払遅延、減額、買いたたき等)を定めています。

 その一つが、同法4条1項4号の「下請事業者の責に帰すべき理由がないのに、下請事業者の給付を受領した後、下請事業者に・・引き取らせること」という行為です。

 この点今回は、A社が下請業者に商品を引き取らせたのは、変色等の発見や、一部の商品に不具合があったことなどから在庫商品全てを検品させるためというものであり、一見、返品も正当であるように見えるかもしれません。

 しかし、公正取引委員会が定める下請法運用基準では、受領後6か月を経過した場合には、「瑕疵等があることを理由として下請事業者に その給付に係るものを引き取らせることは認められない」と定められているため(ただし例外あり)、本件でもこうした運用基準を適用したものと考えられます。

(2)実務上の留意点

 下請事業者と取引をする親事業者としては、故意に下請法に違反している意識がないものの、実は下請法に違反している取引慣行があるかもしれません。

 この点、上に申し上げた返品の制限に関しては、もう一つの留意点として、検査を省略する場合にも返品等が禁止されるという点があります。それは、受入検査を放棄したとみなされるからであり、検査省略による不利益を下請事業者に転嫁することになるからと考えられています。

 それで例えば、親事業者としては、下請事業者から製品を受け取ったときにすぐに検査をせず、使用する段階になって検査して不良品を発見したとしても、返品すると下請法違反に問われかねないわけです。

 また、下請法違反は、下請事業者の同意の有無にかかわらず成立するため、親事業者としては「下請事業者は了解済」という弁解は通用しない点も頭に入れておく必要があります。



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