2018-07-03 データベースと著作権

ここでは、弊所発行のメールマガジン「ビジネスに直結する判例・法律・知的財産情報」のバックナンバーを掲載しています。同メルマガでは、比較的最近の判例の紹介を通じ、ビジネスに直結する法律知識と実務上の指針を提供します。

学術的・難解な判例の評論は極力避け、分かりやすさと実践性に主眼を置いています。経営者、企業の法務担当者、知財担当者、管理部署の社員が知っておくべき知的財産とビジネスに必要な法律知識を少しずつ吸収することができます。メルマガの購読(購読料無料)は、以下のフォームから行えます。

登録メールアドレス   
<クイズ> 
 これは、コンピュータプログラムがこの入力フォームから機械的に送信することを防ぐための項目です。ご協力をお願いいたします。
 

なお、このトピックは、メールマガジン発行日現在での原稿をほぼそのまま掲載しており、その後の上級審での判断の変更、法令の改正等、または学説の変動等に対応していない場合があります。

以下の検索ボックスを利用して、トピックページ(メルマガバックナンバー)から検索できます。

 東京地裁平成30年3月28日判決

 本件での争点は多岐にわたりますが、本稿のテーマに関係した争点に絞ってご紹介します。

 A社は、データベースを構築するパッケージソフトウェアを自社で開発しました。
 
 そして、A社は、当該ソフトウェアががデータベースの著作物に当たると主張した上で、B社が提供していたサービスにデータが登録・蓄積されて形成されたデータベースが、当該著作権を侵害すると主張し、B社に対し、差止請求と損害賠償請求をしました。

裁判所の判断

 裁判所は以下のように判断し、データベースシステム自体は、著作権法で保護されるデータベースではないとして、A社の主張を認めませんでした。

・ A社が開発したソフトウェアは、食品の商品情報のデータベースを構築するためのソフトウェアであって、食品の商品情報が蓄積されてデータベースが生成されることを予定している。

・ そうすると、食品の商品情報が蓄積される前のソフトウェアは、著作権法2条1項10号の3に定める「論文、数値、図形その他の情報の集合物」とは認められない。

・ A社は、当該ソフトウェアに搭載されている辞書情報を「情報」と捉え、この集合物をもって「データベース」と主張するが、これらの辞書ファイルは、商品情報の登録に際して、特定のデータ項目を入力する際に参照されるものにすぎないから、辞書ファイルが備える個々の項目が、「体系的に構成」されていると認めることは困難である。

・ したがって、A社のソフトウェアは、著作権法上の「データベース」とは認められない。

解説

(1)データベースと著作権

 著作権の対象となる著作物といえば、画像や文章が典型的な例です。他方、データの集合体であるデータベースについては、1個1個のデータには通常著作物性はありません。

 しかし、データベース全体として、一定の条件が整えば、著作権法の保護を受けることができます。

 この点、著作権法12条の2は「データベースでその情報の選択又は体系的な構成によって創作性を有するものは、著作物として保護する」と定めています。

 つまり、上の規定のとおり、「情報の選択」又は「体系的な構成」のいずれかに、制作者の個性や思想、創造性が認められるようなものは、著作物として保護を受けられるというわけです。

 以上が一般的な説明ですが、これだけではイメージが持てないと思いますので、以下、裁判例に現れた事例を見ていきたいと思います。

(2)データベースの著作権が争われた例
(a)職業別電話帳のデータ

 職業別電話帳のデータについて、検索利便性の観点から個々の職業を分類し、これらを階層的に積み重ねることにより、全職業を網羅して構成している点に独自の工夫が認められるとされ、著作物性が認められました。

(b)新築分譲マンションの販売情報データベースの例

 当該データベースは、種々のテーブルを持ち、400に迫る多数のフィールド項目や多種多様な関連付けを持つ情報分類体系となっているとして、情報の選択と体系的な構成の両方で創作性を認めました。

(c)自動車整備業用システムの例

 古い自動車から 順に並べたものであって、それ以上に何らの分類もされていないこ と、他の業者の車両データベースにおいても、同様の構成を採用していることが認められるから、体系的な構成に創作性があるとは認められないとして、著作物性を否定しました。

(3)ビジネス上の留意点

 以上のとおり、一定の条件はあるものの、データベースにも著作権が認められます。それで、他者が作成したデータベースについて、創作性のないデータの集合体だろうと考えて安易に複製するなどして使用することは避ける必要があると思われます。

 また、仮に厳密な意味で著作物性が認められないようなデータベースでも、情報の収集や整理に多大な労力・時間・資金が投じられたものをそのまま複製するような行為は、違法と判断されることがありますから、十分注意が必要です。

 実際、上の自動車整備業用システムの例では、著作権の保護は否定されたものの、システムを複製した事業者には、民法上の「不法行為」という責任が認められました。

 他方、データを集め、データベースを作成して販売するといったビジネスを展開する場合には、容易に複製ができるというデータの性質上、著作権の保護を受けられるようにデータベースを構築するという意識も重要かと思います。この点で、著作権に詳しい専門家の意見を聞くことは有益かもしれません。

弊所ウェブサイト紹介~M&A業務

弊所のウェブサイトの法律情報の解説のページには、ビジネス・企業に関係した法律情報に関する豊富な情報があります。

本稿のテーマと直接の関係はありませんが、M&A関連案件については、以下のページに解説があります。

www.ishioroshi.com/biz/kaisetu/kaishahou/index/mana_houhou/

是非一度ご覧ください。

なお、同サイトは今後も随時加筆していく予定ですので、同サイトにおいて解説に加えることを希望される項目がありましたら、メールでご一報くだされば幸いです。



メルマガ購読申込はこちらから

弊所発行のメールマガジン「ビジネスに直結する判例・法律・知的財産情報」は、以下のフォームから行えます。

登録メールアドレス   
<クイズ> 
 これは、コンピュータプログラムがこの入力フォームから機械的に送信することを防ぐための項目です。ご協力をお願いいたします。
 

 なお、入力されたメールアドレスについては厳格に管理し、メルマガ配信以外の目的では使用しません。安心して購読申込ください。



法律相談等のご案内


弊所へのご相談・弊所の事務所情報等については以下をご覧ください。



Copyright(c) 2018 弁護士法人クラフトマン ITに強い、特許・商標に強い法律事務所(東京・横浜) All Rights Reserved.

  法律相談(ウェブ会議・面談)

  顧問弁護士契約のご案内


  弁護士費用オンライン自動見積


   e-mail info@ishioroshi.com

  電話 050-5490-7836

メールマガジンご案内
ビジネスに直結する
判例・法律・知的財産情報


購読無料。経営者、企業の法務担当者、知財担当者、管理部署の社員が知っておくべき知的財産とビジネスに必要な法律知識を少しずつ吸収することができます。

バックナンバーはこちらから