2018-04-24 不競法の形態模倣行為と意匠権の比較
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今回の事例 不競法の形態模倣行為と意匠権の比較
東京地裁平成29年12月22日判決
半田フィーダを販売するA社は、同様に半田フィーダを販売するB社に対し、B社商品はA社商品の形態を模倣したものであるとして、販売の差止と損害賠償を求めました。
なお、判決文に掲載された、A社商品とB社商品の具体的な画像は以下をご覧ください(http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/417/087417_option1.pdf より引用)。
裁判所の判断
裁判所は以下のように判断し、A社商品とB社商品との同一性を否定し、A社の請求を認めませんでした。
● A社商品においては、出口ノズル、駆動ローラ、従動ローラ、スイングレバー及びノズルホルダ等がカバーに覆われているのに対し、B社商品ではこれらの部材がカバーで覆われておらず、商品形態が大きく異なる。
● カバーがA社商品の形態の一部を構成しないとしても、長手方向と横手方向ともに長さが大きく異なる上、B社商品にはA社商品に存在しないエアシリンダが設けられ、それに伴い、黒色のチューブが目立つ態様で取り付けられてA社商品とは異なる印象を与えている。
● A社商品とB社商品ではチューブホルダの位置が異なり、またローラストッパネジが目立つ態様で取り付けられていることなどが認められ、その他の相違点も考慮すると、A社商品とB社商品のフィーダ本体部の形状が実質的に同一であるということはできない。
● 以上のとおり、A社商品とB社商品の形態が実質的に同一であるとは認め難い。
解説
(1)自社の商品デザインが模倣されてしまった場合の対応
多額の開発費を投じて市場に投入した自社の商品のデザインを模倣された商品が出回ってしまう、という事態は憂慮すべき事態です。投入した開発費が回収できなくなったり、模倣品に価格競争で負けてしまう、ということもありうるからです。
他社による模倣品に対して取れる対策の主なものとしては、意匠権の行使や、不正競争防止法2条1項3号に定める「商品形態模倣行為」の適用を検討することができます。
以下、意匠権侵害の場合、形態模倣行為による場合を比較し、それぞれのメリット・デメリットを簡単に見ていきたいと思います。
(2)意匠権と「形態模倣行為」の比較
・ 禁止できる範囲
意匠権であれば、第三者の製品が「類似」している場合でも、侵害を問うことができます。
他方、商品形態模倣行為の規定は、形態について「デッドコピー」(同一又は実質的に同一のもの)を規制するにとどまります。
・ 対象となる形態
意匠権であれば、当然ながら意匠としての登録が必要です。また、意匠登録には、新規性や創作非容易性といった要件が必要であり、すべてのデザインや形態が登録できるとは限りません。
他方、商品形態模倣行為の規定では、出願や登録は不要であり、意匠のような要件も必要なく、この点はメリットといえます。
・ 模倣者の意図
意匠権であれば、第三者の製品が「類似」していれば足り、模倣の意図の有無は関係しません。
他方、商品形態模倣行為の規定においては、当該模倣品を販売する者に「故意・重過失」が必要であり、この主観的要件の立証のハードルは低くありません。
つまり、たまたま同じデザインだった、という場合には、意匠権の侵害にはなりますが、不正競争防止法では規制ができないということになります。
・ 権利行使ができる期間
意匠権であれば、設定登録日から20年権利が存続します。他方、商品形態模倣行為の場合、模倣の対象となった自社の商品が最初に販売された日から3年です。
(3)ビジネス上の留意点
3Dスキャナーや3Dプリンターによって、他人の商品の形態を容易にデータ化し、再現できるようになっているなど、技術の進歩によって、模倣のリスクが高くなっています。
そして、前述のような比較を考えると、特に自社にとって重要な商品や、優れたデザインの商品、商品寿命が長い商品であれば、「何かあってから慌てて対策を考える」というよりも、意匠として出願し登録を受けることを検討することが重要となってくるかもしれません。
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