2014-10-07 販売代理店契約と販促物の著作権

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1 今回の判例  販売代理店契約と販促物の著作権
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東京地裁平成26年8月28日判決

 健康食品製造販売会社であるA社と、B社との間で、小動物用のサプリメントに関する販売代理店契約が締結されました。

 A社は、B社に対して、パンフレットやポスターのデータ、写真やチラシなどの資料を提供していました。B社は、これをウェブサイトに掲載したり、販売者の記載をA社からB社に変更したチラシや、A社から提供されたデータや写真を使用したポスター・チラシを作成し、使用したりしていました。

 これに対しA社は、B社がA社から提供された資料を利用する場合、都度、A社から事前に許諾を得る必要があったのにA社から許諾を得ていないとして、著作権侵害を主張しました。

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2 裁判所の判断
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 裁判所は、以下の各点を含む事情を総合考慮して、代理店契約期間中、A社がB社に、提供したデータや資料の自由な利用を許諾していたと認めるのが相当、と判断しました。

● 契約は、B社による営業活動を全面的に支援する目的であり、複製や加工等が容易なデータで提供されていた

● 提供されたデータや資料は、パンフレットやチラシ等で一般に公表することが前提のものばかりであり、A社も当該データや資料の内容を自身のウェブサイトに掲載していた

● B社の使用についてA社は認識していながら異議を唱えなかった。

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3 解説
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(1) 実務上の留意点1~代理店側の視点

 今回のケースは、代理店契約において見過ごされがちな規定にも注意を払うべきことを留意させるものといえます。

まず代理店側としては、取扱商品の販促についてメーカーから提供された素材を使えるのは当然と思うかもしれません。

 しかし、紙媒体で受け取った資料をそのまま配布するならともかく、メーカーが提供する素材や資料には著作権や商標権といった知的財産があります。それで、代理店といえども、こうした資料や素材を改変したり、複製してウェブサイトや代理店独自の販促資料を使ったりすることは、これらの権利に触れるため、当然にできるとは限らないのです。

 今回の判例では、諸般の事情からメーカーには資料の使用について「許諾」があったと判断されましたが、逆にいえば事情によっては「許諾」がなかったと判断され、著作権等の侵害と判断される可能性もあったわけです。

 それで、代理店側としては、代理店契約を締結する段階で、販促資料をどのように使いたいか、商品の性質や営業方法などを考慮して、メーカー側の販促資料の提供義務や対価の要否、また提供された販促資料の使用や加工の可否などについて、契約書にきちんと書いておくことは重要と思います。

(2) 実務上の留意点2~メーカー側の視点

 他方、メーカー側の視点からみても、代理店契約の作成にあたって、自社の知的財産や営業秘密の保護の観点から、販促資料や技術資料の権利の帰属、無断作成の禁止や事前承認等の手続等の規定を整備する必要性を考えておくことは重要と思います。

そうでないと、代理店に対し、あくまで内部参考資料や秘匿すべき技術資料として提供したはずの資料が、意図せずに販促資料として使われ公開されてしまうという事態が生じかねないからです。

 また必要な規定を整えることで、メーカーとしては、代理店が使う販促資料のブランドイメージ合致性や、景表法などの適法性をチェックでき、自社の評判に無用な損害が及ぶリスクを軽減できるわけです。



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