2014-09-24 他者権利を侵害する動画へのリンクと著作権侵害
ここでは、弊所発行のメールマガジン「ビジネスに直結する判例・法律・知的財産情報」のバックナンバーを掲載しています。同メルマガでは、比較的最近の判例の紹介を通じ、ビジネスに直結する法律知識と実務上の指針を提供します。 学術的・難解な判例の評論は極力避け、分かりやすさと実践性に主眼を置いています。経営者、企業の法務担当者、知財担当者、管理部署の社員が知っておくべき知的財産とビジネスに必要な法律知識を少しずつ吸収することができます。メルマガの購読(購読料無料)は、以下のフォームから行えます。
なお、このトピックは、メールマガジン発行日現在での原稿をほぼそのまま掲載しており、その後の上級審での判断の変更、法令の改正等、または学説の変動等に対応していない場合があります。 |
1 今回の判例 他者権利を侵害する動画へのリンクと著作権侵害
大阪地裁平成25年6月20日判決
A氏は、ある動画サービスサイトにおいて、ある動画をライブストリーミング配信しましたが、何者かがそれを同じ動画サービスにアップロードしました。
B社は、自身が運営管理するニュースサイトに、当該動画に関する記事を掲載し、同記事の末尾には参照元として当該動画サービス名が記載されていました。また、同記事にある動画再生ボタンをクリックすると、当該ニュースサイト上で当該動画が再生できる状況にありました。
そして、A氏がB社に抗議したところ、B社は、直ちにニュースサイトで当該動画を視聴できないようにしましたが、A氏はB社に対して著作権侵害を理由に訴訟を提起しました。
2 裁判所の判断
裁判所は、以下のように判断しました。
● B社は、ニュースサイトに、動画の引用タグ又はURLを記録して、当該動画へのリンクを貼ったにとどまる。
● この場合、当該動画のデータは、ニュースサイトのサーバに保存されたわけではなく、ニュースサイトの閲覧者が当該記事の動画再生ボタンをクリックした場合も、当該動画のデータは、当該動画サービスのサーバから直接閲覧者へ送信されたものといえ、B氏が、本件動画を「自動公衆送信等をしたとはいえない。
● 当該動画が著作権者の許諾なしにアップロードされていることはその内容や体裁から明らかではなく、これにリンクを貼ることが直ちに違法になるとはいい難いうえ、B社はA社から抗議を受けた時点で直ちにリンクを削除しているから、B社がニュースサイト上で当該動画ヘのリンクを貼ったことが、第三者による著作権権侵害を違法に幇助したものとはいえない。
3 解説
(1)リンクと著作権侵害
ウェブサイト上で、他のサイトにリンクが貼られることは頻繁に行われています。こうしたリンクが当該サイトの著作権を侵害するか否かが議論されたこともありますが、著作権侵害とはならないと考えられてます。
それは、別のウェブサイトにリンクを張ることは、別のウェブサイトとその情報に到達することを指示しているだけであり、そのウェブサイトを自ら複製・送信しているわけではないからです。
ただし、フレーム機能を使って、他者のウェブサイトやそのコンテンツがあたかも自身のウェブサイトの一部であるかのようにフレームの中に取り込むという形の場合には必ずしもそうではありません。この場合、著作者人格権(氏名表示権)等が侵害されるおそれがありますので、避けるべきではないかと考えます。
(2)リンク先の動画が権利侵害物であった場合
本件では、リンク先の動画が他者の権利を侵害するようなものであるケースでも、外観上・体裁上それが明らかでない場合には、リンクを貼ること自体が違法となるわけではない点が示されました。
ただし、本件では、抗議を受けた時点でただちに動画へのリンクを削除したことが、B社が責任を免れる一つの根拠となりました。それで、ウェブサイトにリンクを張ること自体はよいとしても、権利者からリンク先のコンテンツが権利侵害物であることの指摘を受けた場合、放置したり判断を遅らせたりすることなく、速やかに対処することが重要と思います。
(3)画像や動画への直リンクの問題
もっとも、自身のサイトにリンク先のURLを示すのではなく、他のウェブサイト上の画像や動画を「直リンク」して、自身のサイトの一部に表示させる場合は、別途の考慮が必要であるように思われます。
この点Youtubeやニコニコ動画のように、ウェブサイトへの埋込コードを明示して直リンクを許諾している場合は、指定された方法を遵守すれば通常は問題ないと考えられます。
他方、直リンク用のコードが明示されていないような画像や動画に対して「直リンク」を貼って、自身のサイトの一部として表示することは、著作者人格権(公表権や氏名表示権)の侵害となる余地があると考えられ、慎重な考慮が必要です。
例えば、引用目的その他のために「直リンク」の必要性がある場合もあるかもしれませんが、しっかりと法的な要件を検討するためにも、弁護士などの専門家への相談を検討してもよいと思います。
参考ページ:著作権法解説 https://www.ishioroshi.com/biz/kaisetu/chosakuken/index/
メルマガ購読申込はこちらから
弊所発行のメールマガジン「ビジネスに直結する判例・法律・知的財産情報」は、以下のフォームから行えます。
なお、入力されたメールアドレスについては厳格に管理し、メルマガ配信以外の目的では使用しません。安心して購読申込ください。
法律相談等のご案内
弊所へのご相談・弊所の事務所情報等については以下をご覧ください。