2013-01-22 有期雇用契約と不更新条項
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なお、このトピックは、メールマガジン発行日現在での原稿をほぼそのまま掲載しており、その後の上級審での判断の変更、法令の改正等、または学説の変動等に対応していない場合があります。 |
1 今回の判例 有期雇用契約と不更新条項
東京地裁平成24年2月17日判決
自動車等の製造・販売会社であるA社は、平成9年12月、B氏との間で、期間契約社員雇用契約(有期雇用契約)を締結し、B氏は、A社のC工場において就労していました。
A社とB氏の間にはその後も、基本的に契約期間4ヶ月の有期雇用契約の締結が繰り返されてきました。
なお、期間契約社員の契約更新は期間満了までに書面のやり取りによって行われ、自動更新の取り扱いがされたことはなく、契約書作成が次期契約期間開始後にずれ込むことはありませんでした。また、契約期間満了の都度退職等の手続が取られ、その後改めて採用する場合にも初めての入社と同様の手続が取られていました。
その後、A社は、ガソリン価格の急騰・リーマンショックによる世界経済後退等による業績の極端な悪化のため、平成20年12月に契約期間が満了する期間契約社員26名を雇止めとすることとしました。それで、B氏を含む期間契約社員に対し説明会を開催し、不更新条項(契約を更新しない旨)を定める有期雇用契約の締結を申し入れ、B氏はこれに応じ、退職しました。
以上の経緯のもと、B氏が、A社との間に雇用契約上の地位にあることの確認等を求め、裁判を起こしました。
2 判決の内容
裁判所は以下のように判断しました。
- A社とB氏の間の有期雇用契約は、実質的に期限の定めのない雇用契約と異ならない状態にあったと認めることはできない。
- 不更新条項が本件雇用契約に盛り込まれた経緯等、不更新条項の必要性・合理性に照らせば、不更新条項が無効であるとはいえない。
- 有期雇用契約が、無期雇用契約と実質的に同視できる場合や、労働者が雇用継続を期待することの利益に合理性があるときには、雇止についての合理的で相当な理由が必要となる。本件では、期間満了後における雇用継続に対する期待利益を有しているとは認められない。
3 解説
(1)有期雇用契約とは
有期雇用契約とは、雇用期間の定めのある契約であり、有期雇用契約は期間の満了とともに終了するのが原則です。
しかし実際は、「有期契約」であっても、人員調整を容易にするための便宜上使われていることも多く、更新の手続きがルーズかつ機械的に行われたり、更新手続きさえされずに、長期間雇用されるケースが少なくありません。
(2)有期雇用契約に関する労働契約法の改正
そしてこの判例法理を敷衍し、労働者を保護する趣旨から、労働契約法上、有期雇用契約に関する改正がなされました。すなわち以下のような改正です。
[1] 無期雇用契約への転換(改正労働契約法18条)
有期労働契約が反復更新されて通算5年を超えたときは、労働者の申込みにより、期間の定めのない労働契約(無期労働契約)に転換できるという規定
[2] 「雇止め法理」の法定化(改正労働契約法19条)
裁判所が示してきた雇止めを制限する法理を、法律として規定しました。
(3)雇止めを有効なものとするための措置
そこで、有期雇用契約を利用する企業としては、安易な雇止めは避けるべきですが、いざ必要な場合に雇止め(有期雇用契約の不更新)が無効とされないよう、普段から手を打っておく必要があります。
この点、平成12年9月11日労働省労働基準局監督課発表の「有期労働契約の反復更新に関する調査研究会報告」は、参考となります。
同報告によれば、以下の状況が全て認められる有期労働契約は、無期雇用契約とみなされる可能性は低いとされています。
- 業務内容や契約上の地位が臨時的であること又は正社員と業務内容や契約上の地位が明確に相違していること
- 契約当事者が有期契約であることを明確に認識していると認められる事情が存在すること
- 更新の手続が厳格に行われていること
- 同様の地位にある労働者について過去に雇止めの例があること
そこで、企業としては、以上の要素を踏まえ、自社において締結されている有期雇用契約の内容や有期契約社員の処遇等を見直すことは、将来のリスクの軽減に役立つことになるかもしれません。この点で、時代とともに変動する判例法理にあわせたアドバイスを得るために、労働法に精通した弁護士のアドバイスも活用できると思われます。
参考ページ:労働法解説 https://www.ishioroshi.com/biz/kaisetu/roumu/index/
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