2012-12-04 優良誤認表示と商品の試験・実験

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1 今回の判例 優良誤認表示と商品の試験・実験

H24.9.6 消費者庁措置命令

 今回は消費者庁による措置命令を取り上げます。

 A社ら3社の会社は、「熱中対策」などとして、冷凍庫で凍らせて首に巻き、冷却効果を得るという商品(「冷却ベルト」)を販売していました。

 そして、商品パッケージでは推奨する使用環境等が記載された上で、「氷結するジェル袋は保冷時間が長く約2時間30分冷感を持続します(使用状況等により冷感時間は異なる場合があります)。」などと表示されていました。

 しかし、消費者庁が人やサーマルマネキン(人体のように放熱するもの)で行った実験結果によれば、実際の効果は、表示されている時間の半分から約3分の2程度でした。

 

2 消費者庁の命令の内容

以上の事実から、消費者庁は以下のような措置命令を発しました。

  • 3社が行った表示は、冷却ベルトの内容について、一般消費者に対し、実際のものよりも著しく優良であると示すものであり、景品表示法に違反するものである旨を、一般消費者へ周知徹底すること。
  • 再発防止策を講じて、これを役員及び従業員に周知徹底すること。
  • 今後、同様の表示を行わないこと。

 

3 解説

(1)優良誤認表示とは

 本稿で以前取り上げたように、景表法4条1項1号は、「商品又は役務の品質、規格その他の内容」について、一般消費者に対し、「実際のものよりも著しく優良である」などと示し、「不当に顧客を誘引し、一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれがあると認められるもの」に該当する表示を禁止しています(優良誤認表示の禁止)。

 そして、景表法4条2項によれば、このような優良誤認表示の疑いがある場合に、消費者庁は、その表示を行った事業者に対し、その表示の裏付けとなる合理的な根拠を示す資料の提出を求めることができ、事業者が一定期間内に当該資料を提出しないときは、その表示が優良誤認表示であるとみなされる、と定められています。

 この点、この「合理的な根拠を示す資料」には、学術界・産業界において一般的に認められた方法又は関連分野の専門家多数が認める方法によって実施される限り、事業者自身が行った試験・実験の結果も含まれます。

(2)合理的資料と本件での問題点

 「合理的な資料」に関しては、本件では、事業者も実験をしていなかったわけではありませんでした。

 例えば、今回の措置命令の対象となった事業者のうち1社は、気温31度の室内で、商品を人が装着して静止した状態で行った試験の結果に基づいて、商品の効果持続時間を表示していました。

 他方、消費者庁の実験は、8月の日中の気温・湿度の平均値を元に気象条件を室内で再現の上、軽い運動を行うなどして測定していたとのことです。

 つまり、事業者の実験は、実際のユーザーの使用条件や使用環境からややかけ離れた実験であったと言われても仕方がないものでした。

(3)消費者の視点の重要性

 前記のとおり、事業者が自ら試験・実験を行い、商品の表示や宣伝にその数値を使うこと自体は誤ってはいません。しかし、景表法の趣旨が、前記のとおり、一般消費者が品質などについて誤認し、合理的な選択を阻まれることを防止することにあることを考えれば、事業者が試験や実験を行う場合、消費者が当該商品を実際に使用する環境・条件にできる限り近づけるべきなのは当然といえるでしょう。

 商品の開発だけでなく、表示・広告の場面においても、いたずらに数値を追い求めるよりも、むしろ消費者の視点に立った業務を行い、消費者の立場に立った表示・広告の実施を行うことが、結果的には自社の長期的利益の保護にもつながるのではないかと考えられます。



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