2012-11-06 著名人の写真等使用とパブリシティ権

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1 今回の判例 著名人の写真等使用とパブリシティ権

最高裁平成24年2月2日判決

本件は、「ピンク・レディー deダイエット」というピンク・レディーの振り付けを活用したダイエット法の特集記事を掲載した雑誌の中で、自らの写真が無断掲載され、パブリシティ権を侵害されたとして、ピンク・レディーが出版社に対して損害賠償を求めた事件(本稿の第44号で取り上げた事件)の上告審です。

本件では、許諾を得ずに写真を掲載する行為がパブリシティ権を侵害するのはいかなる場合かが問題となりました。

 

2  裁判所の判断

最高裁は、ピンク・レディー側の請求を認めませんでしたが、以下のとおり、パブリシティ権を侵害する使用についての判断基準を示しました。

(1)顧客吸引力を有する肖像等は、社会の耳目を集めるなどして、時事報道、論説、創作物等に使用されることもある。それで、肖像等の使用が違法とされるのは「専ら肖像等の有する顧客吸引力の利用を目的とするといえる場合」である。

(2)違法とされる例としては、以下のような場合がある。

  • 肖像等それ自体を独立して鑑賞の対象となる商品等として使用する場合
  • 商品等の差別化を図る目的で肖像等を商品等に付す場合
  • 肖像等を商品等の広告として使用する場合

(3)本件において、特集記事の主な内容は、曲の振り付けを利用したダイエット法と振り付けをまねていたタレントの思い出等を紹介するものであって、掲載された写真の大きさ、全体に占める分量から、記事の内容を補足する目的で使用されたものというべきである。

 

3 解説

(1)パブリシティ権とは

販売促進の目的で、著名人の名前や写真が商品やサービスに使用されたり、CMなどの宣伝に使用されたりすることは珍しくありません。このように、氏名・肖像等がもつ顧客誘引力から生じる経済的価値を排他的に支配する権利(無断で第三者に使わせない権利)をパブリシティ権といいます。

したがって、第三者が、著名人の名前や写真をCMなどの宣伝に使用したり、商品やサービスに表示したりすることは、その著名人の許諾(ライセンス)を受けない限り、原則として許されないわけです。

本稿では、以下、実務上の留意点として、パブリシティの利用許諾契約を締結する場合に考えるべき点の一部を、主に許諾を受ける側の視点から考えてみたいと思います。

(2)実務上の留意点~パブリシティ利用許諾契約

パブリシティの利用許諾契約の締結交渉にあたっては、許諾を受ける側にとっては、自己の利用権の範囲や内容を明確にすることや、トラブルを回避するため何を合意し何を含める含めるべきか、吟味する必要があるでしょう。考慮すべき点の一部としては、以下のものがあります。

 A)パブリシティの利用の範囲等の規定

  • 使用目的(広告の場合ならどんな商品・サービスの広告か、どのような広告か)
  • 使用媒体(TVCM、雑誌、本、ウェブサイト等)
  • 使用時期、頻度、期間
  • 使用する対象は何か(氏名、写真、経歴等)
  • 使用する地域はどこか
  • 独占的に使用できるか、非独占的に使用するか

 B)利用者側のリスクや損害の軽減の規定

パブリシティの許諾にかかるタレントが不祥事等を起こし、広告の中止を余儀なくされたり、当該タレントを広告で使用していたために自社の製品のイメージの低下を被ったという事態が生じる可能性があります。

それで、契約書中に、契約期間中にスキャンダル・不祥事を起こした場合の契約解除の規定や違約金の定め等を設けられないか検討できるかもしれません。

そしてこのスキャンダル・不祥事の内容は、自社の製品やサービスとの関係で具体的に考えて契約に盛り込むことを検討できます。例えば、家庭向け商品に著名人の夫婦を起用する場合に、離婚等のスキャンダルがあると大幅なイメージダウンとなる可能性があります。このように、ケースにあわせた契約内容の検討が必要となることでしょう。

 

参考ページ:著作権法解説 https://www.ishioroshi.com/biz/kaisetu/chosakuken/index/


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