3.4 他者の特許登録に異議を述べる方法と特許異議
他社が受けた特許登録について異議は述べられますか
本来特許されるべきでない特許が誤って特許されないようにするため、第三者が特許の登録を争う制度があります。これらについて、弁護士、弁理士に依頼することもできます。
情報提供
特許庁に係属している特許出願について、第三者が、特許庁に対し、当該出願に関する発明が、特許性がないことを示す資料を提供できます。これによって、本来登録されるべきではない特許の登録の防止につなげることができる場合があります。また、特許の設定登録後の情報提供の制度もあります。
特許異議
第三者が、特許掲載公報発行の日から6か月以内に、異議を申し立てることができる制度がありましたが、2004年1月1日から廃止されました。その後、平成26年の特許法改正で特許異議申立制度が復活しました。詳細は後述します。
特許無効審判
特許権の無効性を主張して特許庁に対し審判を請求できます。誰でも請求が可能ですが、冒認出願・共同出願要件違反などの権利帰属にかかる理由については請求に際し利害関係が必要となります。詳細はこちらをご覧ください。
3.4.1 特許異議
特許異議とは
第三者が、特許掲載公報発行の日から6か月以内に、異議を申し立てることができる制度がありましたが、2004年1月1日から廃止されました。その後、平成26年の特許法改正で特許異議申立制度が復活しました。以下その概要をご説明します。
申立人
特許異議は、「何人も」、つまり誰でも申し立てることができます。ただし、異議申立人と代理人の氏名等を記載する必要がありますので、匿名で行うことはできません。
対象となる特許
平成27年4月1日以降に特許公報が発行された特許について、異議申立を行うことができます。
特許異議の申立の理由
特許異議の申立の理由には、一定の限定があります。すなわち、特許法113条各号に規定された事由(公益的事由)に限られます。具体的には以下のとおりです。そのため、共同出願違反(特許法38条,同49条2号)や冒認出願(特許法49条7号)といった私益的事由は、特許異議の申立の理由になりません。主たる理由を挙げると以下のとおりです。
- 新規性・進歩性なし(特許法113条2号、特許法29条)
- 補正における新規事項違反(特許法113条1号)
- 拡大された先願の地位違反(特許法113条2号、29条の2)
- 公序良俗等の違反(特許法113条2号、32条)
- 先願違反(特許法39条第1項から4項)
- 条約違反 (特許法113条3号)
- 記載要件違反(特許法113条4号、36条4項1号及び6項(第4号を除く))
期間の制限
特許異議の申立の期間は、特許掲載公報の発行の日から6月以内に限られます。この期間を経過した特許異議の申立ては、決定をもって却下されることとなります。
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