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5.1 商標侵害~他社が自社商標権を侵害する場合の対応

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 自社の長年の努力で築き上げてきた信用ある登録商標と似た商標を、第三者が勝手に使用していることに気づく、ということがあるかもしれません。しかし、無闇な方法を取ると、思わぬ落とし穴があるかもしれません。弁護士に相談し物事を進めることが確実でしょう。

 以下、他社が自社商標権を侵害していると思われる事実があった場合、どのように対応すべきかをご説明します。

事実の確認・証拠の収集

自社商標権の状態の確認

 自社商標権の状態(存続しているか)を確認します。稀なケースとして、更新登録料を納付を失念しており、商標権が消滅しているということもありえるからです。

侵害の事実に関する証拠収集

 他者が自社の商標を侵害している事実を裏づける証拠や、他社商品に関する他の情報を、できる限り広範に収集します。具体的には、以下のような情報が例として挙げられます。

他社商品に関する資料・証拠
  • 他社商品そのもの(レシート、領収証、外箱、包装、説明書等も)
  • 他社商品のカタログ、パンフレット、その他紹介文書
  • その他事案に応じて
他社商品の販売方法や需要者に関する情報
  • 他社商品のウェブサイト(フッターに日付が記録される形でプリントアウトする)
  • 他社商品の宣伝物(チラシ、看板、その他)、メディアでの紹介記事
  • 他社商品のテレビ・ラジオ宣伝の録画・録音
  • 他社商品の需要者層に関する資料・情報
  • 他社商品の販売地域・販売方法に関する資料・情報
  • 他社商品の売上に関する資料・情報
  • その他事案に応じて
他社全体の売上・営業に関する資料・証拠
  • 他社の営業内容・営業の範囲に関する資料
  • 他社の売上、利益に関する情報・資料
  • その他事案に応じて

弁護士への相談・方針の決定

専門的判断の必要性

 一定の証拠や情報が収集できたら、何らかのアクションを起こす前に、弁護士に相談することが望ましいといえます。商標侵害の有無に判断にあたっては、商標自体の類否の検討に加え、他社の商品や役務(サービス)が、指定商品・役務と類似しているかの検討が必要であり、この点専門的な判断が必要であるためです。

 例えば、自社の登録商標の指定商品が洋菓子である場合に、相手先の会社が類似の標章を和菓子に使っているといった場合に、権利行使ができるか否か、といった問題は専門家による判断が必要となります。また、自社の登録商標が、「ABC」であり、相手方が「スーパーABC」という標章という場合も、専門的検討が必要となるでしょう。

 また、どのような証拠や情報を収集すべきか分からないという場合、とりあえず手持ちの情報や証拠をもとに弁護士に相談することも可能です。

方針の決定

弁護士との相談も含めた検討の結果、相手方の行為が自社の商標権を侵害している可能性が低くはないと判断される場合、方針を決定します。つまり、次に相手方に対して、何を要求したいのかを考えるということです。例えば、相手方の類似商標の使用をやめさせたいのか、これに加え、損害賠償請求を考えるのか、又は、条件によってはライセンス(使用許諾)も考えてよいのか、といったことを考えます。

 方針が決まったら、相手方に対して、通常は、まずは文書で通知します。この点は次項で解説します。

警告書の送付

 証拠・情報収集と弁護士への相談の結果、商標権侵害の可能性が低くはないということであれば、権利行使に進みます。

 この点まず、当該他社に対し、書簡で警告することが一般的です。

警告書送付の形式

 警告書をどのようなタイトルや形式で送付するかは、当該他社や侵害行為の悪質性、想定される反応等を総合的に考慮して検討します。

 例えば、相手方の会社が実態もよく分からず、故意に侵害しているケース、悪質と思われるケースについては、「警告書」というタイトルで、内容証明郵便で送付することを検討できます。

 例えば、相手方の会社の規模、内容や一般的な信用度から、故意に使用しているとは考えにくく、むしろ円満な話合いで解決できそうなケースは、ビジネスレターの形式で送り、かつタイトルももう少し穏当な内容にすることもあります。

 このように、警告書の送付の方法もケース・バイ・ケースです。

警告書の内容

 警告書の内容としては、多くの場合、以下の事項を含めます。

  • 自社商標権の特定(登録番号、商標の内容、指定商品・指定役務)
  • 当該他社の商品や役務に使用されている標章が、自社商標と類似していること
  • 当該他社の標章が使用している商品や役務や、自社商標と指定商品・指定役務と類似していること
  • 当該他社への要求内容
  • 回答期限(事案によりますが、到着後10日~2週間程度が多いと考えられます)

警告書の名義

 警告書を作成・発送する際、自社でよいのか、あるいは弁護士に依頼するかについてはどのように考えるべきでしょうか。結論的には、後者(弁護士に依頼する)のほうが、相手方に対する与える印象(警告の本気度や、無視する場合に訴訟等に発展すると思わせるなど)が強く、相手方が警告書を無視・軽視する可能性を低くすることができますので、望ましいといえます。

 他方、何らかの事情で前者(自社名での書面)を選択する場合も、少なくとも弁護士に文面の作成は依頼すべきでしょう。自己判断で文面を作成して警告書を送付したところ、そこに誤解に基づく内容、不正確な内容、不利な内容を自白するような内容が含まれていると、後々の訴訟で不都合な事態が生じることがありえるからです。

警告書送付後の交渉

当該他社の反応

 警告書送付後、当該他社からの反応を待ちます。想定される反応としては、以下のようなものがあります。

  • (1) 侵害を認めて使用を中止するという回答
  • (2) 侵害は認めないが使用を中止するとい回答
  • (3) 侵害を認めず、使用も中止しないという回答
  • (4) 侵害を認めるが、使用を継続したいので話し合いたいという回答
  • (5) 無視(回答なし)

当該他者の反応に応じた対応

 前記の反応それぞれに対し、どのように対応すべきかは、一義的に決められるマニュアルがあるわけではありません。事案の性質や収集できている証拠、訴訟での勝訴可能性、相手方の資力や支払能力、警告の目的、商標使用許諾(ライセンス)の可能性等を考えて総合的に判断します。この点でも、弁護士への相談は不可欠といってよいかと思われます。

 もっとも、検討すべき事項としては以下のようなものがあるでしょう。

  • 回答に対しさらに書面で再反論するか否か
  • 口頭での交渉を申し入れるか、又は応じるか否か
  • 侵害を認め使用を中止すると述べる相手に対し、損害賠償の請求もするか否か
  • ライセンスの申入をしてきた相手方に対しライセンスの交渉をするか否か
  • 訴訟その他の法的手段に移行するか否か

訴訟提起、民事保全申立

 警告の後、交渉で妥結しなかった場合、法的手段を検討します。また警告書に対して全く無反応の相手方に対しても同様です。この場合、裁判で、侵害行為の差止を請求し、また、損害賠償請求を行うことが一般的です。

 ただし、訴訟などの法的手続は費用も労力もかかりますので、勝訴可能性、相手方の資力、訴訟の必要性等、弁護士と十分に相談の上決定することが必要と考えられます。

 

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