1.4 書籍の題号と商標登録~解説商標法
書籍の題号は登録できますか
商標は、その商品・サービスを見分ける印であり、他の商品・サービスとを見分ける機能を有するものです。それで、一般に書籍の題号は、その書籍の内容を示すものではあっても、他の商品としての書籍と見分ける機能は有していないため、登録を受けることができないと解されています。
例えば、志賀直哉著の「暗夜行路」は、文庫本としては新潮社と角川書店から出版されています。ですから、「暗夜行路」という書籍の題号だけでは、新潮社の出版している商品と角川書店の出版している商品を区別する機能はないわけです。
もっとも、興味深いことにある書籍の題号が商標登録されているように見えます。例えば、「永遠の0(ゼロ)」については、4件の登録がなされています(登録5602046、登録5692813、登録5704728、登録5754022)。しかしこれらの商標の指定商品の中に、書籍そのものは見当たらず、図書に関係するものとしては、「電子出版物の提供,図書及び記録の供覧,図書の貸与、書籍の制作」(登録5602046)、「定期刊行物」(登録5692813)が含まれる程度になっています。
登録商標と他者の書籍の題号への禁止権行使の可能性
また仮に、例えば指定商品を「書籍」などとして、ある題号について商標の登録ができたとしても、これをもって、同じ題号又は類似の題号で書籍を出版する第三者に対して商標侵害を主張できるかは、また別問題です。この点については、「商標権侵害の考え方~商標としての使用とはいえない場合」のページをご覧ください。
定期刊行物の題号の登録可能性
他方、一般に、新聞・雑誌等の定期刊行物の題号は、原則として、商標登録が可能とされています。それは、同じ題号であっても内容が毎回異なるため、題号がただちに内容だけを表すとはいえず、その定期刊行物を他の定期刊行物と見分ける機能を有することがあるからです。
例えば「朝日新聞」「読売新聞」「毎日新聞」といった新聞は、毎日各新聞紙の題号で発行されます。しかし、その内容は様々であり、日々変わります。つまり、新聞の題号自体から、新聞の内容をただちに表示するものではなく、むしろ、題号自体が、定期刊行物という商品について、他社の商品と見分ける機能を持っている、というわけです。
もっとも、定期刊行物の題号であっても、他の商標登録の要件が満たされなければならないことはいうまでもありません。
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