労働契約の終了~定年をめぐる諸問題
定年制の概要
定年制とは
定年制とは、労働者が一定の年齢に到達すると、それを理由に労働契約を終了させる制度のことをいいます。多くの場合、会社側の特別な意思表示がなくても定年に達すれば当然に労働契約が終了する制度が取られています。
定年制の適法性
定年制が適法か否かについては、学説・判例上は適法性を認めてきました。例えば、秋北バス事件(最高裁大法廷昭43年12月25日判決)は、定年制について「人事の刷新・経営の改善等、企業の組織及び運営の適正化のために行なわれるもの」と判断しています。
定年制を適法とする判断の背景には、日本における長期(終身)雇用制のもとで解雇を厳しく制限する判例法理があったこと、年功序列型賃金制度が採られてきたこと等から、人事の刷新を図る等の観点からの合理性が認められてきたからであると考えられます。
定年の年齢と高年法に定める雇用継続の措置
高年法と雇用年齢の引上
いわゆる高年齢者雇用安定法は、定年は60歳を下回ってはならない、としています(8条)。したがって、定年を定める場合、注意する必要があります。
さらに、平成16年12月の改正では、平成18年4月1日から、段階的に雇用年齢を段階的に引き上げ、65歳まで雇用継続のための措置を義務づける制度を導入することになりました(9条)。
平成18年(2006年)4月1日~ 62歳
平成19年(2007年)4月1日~ 63歳
平成22年(2010年)4月1日~ 64歳
平成25年(2013年)4月1日~ 65歳
高年法に基づく雇用継続上の措置
同法によれば、事業主は、
[a] 定年の引上げ
[b] 継続雇用制度の導入
[c] 定年の定めの廃止
のいずれかの措置を講じなければならないこととされています。
なお、高年法は、会社に対し、特定の個々の労働者を継続して雇用する義務を負わせるもの(言い換えれば個々の労働者の会社に対する雇用を請求する権利を認めたもの)とは解されていませんが(岐阜地裁平成23年7月14日判決)、この高年法に定める措置を取ること自体は事業主(会社)の公法上の義務であることは確かです。したがって、同法上の措置を取っていない会社は、この点で改善が必要であると考えられます。
もっとも、高年法9条1項2号の継続雇用制度については、法でその内容が厳格に定められているわけではありません。それで、措置の内容は会社の実情に合わせ柔軟に考えることができます。
例えば、同条2項では、労使協定によって、継続雇用制度の対象となる高年齢者に関する基準を定めることが許容されており、基準が合理的なら、ある社員が希望しても雇用継続の対象としないことが可能です。また、労使協定で合理的基準を定めれば、職種別に異なる基準や管理職であるか否かによって異なる基準を定めることも可能であると解されています。
また、雇用形態についても、定年前と別にすることは可能であり、最低賃金などの雇用に関するルールの範囲内で、嘱託、パートタイムといった、労働時間、賃金、待遇などを、労働者の間で決めることができます。さらに、子会社やグループ会社へ転籍させることも一定の条件では可能と解されています。
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