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労働者派遣事業に関する法令・派遣契約のサンプルと解説

 本ページでは、労働者派遣事業に関する法令上の規制のアウトラインをご説明するとともに、主として労働者派遣事業者の視点から、一般的な人材派遣契約書(労働者派遣契約書)について、サンプルから各規定の意味や留意点などを解説します。

労働者派遣事業のアウトライン

 以下、労働者派遣事業に関する留意点のうち主なものを見ていきたいと思います。なお、以下はすべての事項を網羅的に記載したものではありません。

労働者派遣とは

労働者派遣とは、自社が雇用している労働者について、その雇用関係を維持したままで、他社に派遣をして、他社の指揮命令を受けてその労働に従事させることをいいます(労働者派遣法2条1号[カーソルを載せて条文表示])。

 そのため、通常の労働契約と異なり、労働者派遣においては、「派遣元」「派遣先」「派遣労働者」の三者が登場します。そして三者間には、次の2つの契約が存在することになります。

  • 派遣元と派遣先との間の「労働者派遣契約」
  • 派遣元と派遣社員との間の「労働契約」

 

許可が必要

 労働者派遣事業を営むためには、厚生労働大臣の許可を受ける必要があります(労働者派遣法5条1項[カーソルを載せて条文表示])。

許可の有効期間

 有効期間は、新規の許可については3年、更新の場合は5年です(労働者派遣法10条1項、4項[カーソルを載せて条文表示])。

許可の単位

 許可は事業主(会社)単位で与えられます。派遣会社は、事業計画書その他厚生労働省令で定める書類を添付した届出によって新たな事業所を設置することができます(労働者派遣法11条1項[カーソルを載せて条文表示])。

労働者派遣基本契約書(人材派遣基本契約書)のサンプルと解説

 以下、労働者派遣基本契約(人材派遣基本契約)のサンプルから、主要なポイントについてご説明します。以下は、主要条項の一部を取り上げますが、今後必要に応じ加筆する予定です。

 なお、サンプル条文は、もっぱら条項の趣旨、目的、狙いを解説することを目的としています。それで、条項間の整合性については検証しておらず、必要な事項すべてを網羅しているとは限りません。また、各規定の有効性・執行可能性についての保証もありません。それで、本ページのサンプルを「雛形(ひな形)」としてそのまま使用することはご遠慮ください。

収入印紙の要否

 人材派遣に関する契約は、基本的には収入印紙の貼付は不要であると考えられています。それは、人材派遣自体は請負契約のように仕事の完成を約束しているわけではなく、その他印紙税法の課税文書にも該当しないからです。

契約の目的

規定例

第*条 (本契約の目的)
1 本契約は、乙が、「労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律」(以下「労働者派遣法」という)に基づき、派遣労働者を甲に派遣し、甲が派遣労働者の派遣を受けることに関して必要な事項を定めることを目的とする。
2 本契約は特に定めのない限り、甲乙間で締結する「労働者派遣個別契約書」(以下「個別契約」という。)に適用する。

条項のポイント1~契約目的の明示

 契約の最初に、契約を締結する目的を明らかにするための条項を置くことは実務上多く見られます。特に、基本契約であれば、当事者間のどのような性質の取引に適用されるのかを明らかにする機能もあります。

 上のサンプルでは、甲乙間の労働者派遣に関する取引であって、かつ、乙が派遣元・甲が派遣先である取引に適用される基本契約であることを明示しています。

条項のポイント2~個別契約との関係

 労働者派遣契約においては、通常、派遣先と派遣元の間で、数ヶ月単位の派遣取引が契約更新によって繰り返されることが多く、そのため、(1)これら複数の取引に共通する事項を定める基本契約、(2)個別の派遣取引について具体的な条件を定める個別契約、を締結するケースが多いといえます。

 上のサンプルでは、こうした実務を前提に、本契約と個別契約との関係を明示しています。

派遣料金に関する事項

規定例

第*条 (派遣料金)
1 甲は、本契約に基づく労働者派遣の対価として、乙に対し、個別契約に定める金額の派遣料金を、個別契約に定める時期に支払う。
2 派遣料金の支払は、乙が定める銀行口座への振込とし、振込手数料は甲の負担とする。

条項のポイント~派遣料金に支払いについての定め

 派遣料金の支払義務にいての規定を置きます。サンプルのような基本契約と個別契約を併用する方式では、具体的な計算方法、計算期や支払時期については、個別契約で定めるのが通常です。

 派遣料金の支払方法について定めることも少なくありません。上のサンプルでは、振込送金とすることや振込手数料について触れています。

派遣元責任者に関する事項

規定例

第*条(派遣元責任者)
1 乙は、労働者派遣法及び関連法令の定めに基づき、自己が任用する役員又は雇用する労働者の中から、事業所ごとに所定人数の派遣元責任者(物の製造業務派遣の場合には製造業務専門派遣元責任者を含む。以下同じ。)を選任する。
2 派遣元責任者は、派遣労働者の適正な就業確保のための措置を講じるものとする。

条項のポイント~派遣元責任者についての定め

労働者派遣法は、派遣元に対して派遣元責任者を選任することを義務付けています(労働者派遣法36条)。労働者派遣基本契約書でも、派遣元責任者に関する事項を定めておくことが一般的です。

 派遣元責任者は、派遣会社の特定の事業所に専属の労働者、又は役員から選任する必要があります(労働者派遣法施行規則29条1号[カーソルを載せて条文表示])。

 なお、派遣元責任者の職務については、労働者派遣法36条各号において以下のように定められていますが、派遣契約においては必ずしもすべてを詳細に述べる必要はありません。

  • 労働者派遣法32条、34条、35条及び37条に定める事項に関すること。
  • 派遣労働者に対し、必要な助言及び指導を行うこと。
  • 派遣労働者から申出を受けた苦情の処理に当たること。
  • 派遣労働者等の個人情報の管理に関すること。
  • 派遣労働者についての教育訓練の実施及び職業生活の設計に関する相談の機会の確保に関すること。
  • 派遣労働者の安全及び衛生に関し、当該事業所の労働者の安全及び衛生に関する業務を統括管理する者及び当該派遣先との連絡調整を行うこと。
  • その他当該派遣先との連絡調整に関すること。

秘密保持に関する事項

規定例

第*条 (秘密保持)
1 甲又は乙は、個別契約で定める派遣業務の遂⾏により知り得た相手方の業務に関する秘密情報を第三者に漏洩せず、本契約の目的以外に利用しない。
2 乙は、派遣労働者に対し、前項の義務を遵守させなければならない。

条項のポイント1~秘密保持義務の明示

 人材派遣業務を通して、派遣会社と派遣先会社は、相互に秘密情報を交わし合うことになります。

 そのため、秘密保持条項を定めることはほぼ必須といってよいと思います。

 なお、上のサンプルは比較的シンプルな条項例であり、かつ、相互に秘密保持を課す例です。他方、実務上は、派遣元に対して秘密保持義務を課す規定のみを置くケースも少なくありません。それは相手方の秘密情報を知る機会が多いのは派遣元であるからであると思われます。

条項のポイント2~派遣労働者に秘密保持を遵守させる規定

 派遣業務においては、派遣先における部署や職種にもよるものの、派遣労働者が派遣先の秘密情報に接する機会は少なくありません。それで、実務上は、派遣元が、派遣労働者に対して派遣先の秘密情報についての秘密保持義務を遵守させる義務を負う規定を置くことが多く見られます。

個人情報に関する事項

規定例

第*条 (個人情報の取扱)
 甲と乙は、本契約及び個別契約上知り得た派遣労働者又はその他の個人情報を、個人情報保護法その他関連法令に従って保護し、本契約及び個別契約の期間中並びにこれらの終了後においても、本契約及び個別契約の目的の範囲内でのみ使用し、かつ法令の定めによる場合を除き第三者に提供してはならない。

条項のポイント~個人情報に関する規定の明示

 派遣業務を通して、派遣会社と派遣先は、派遣労働者の個人情報を中心に個人情報をやり取りし、管理保存します。そのため、個人情報の保護について定めておく必要があります。


 このページは作成途中です。加筆次第随時公開します。



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