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ファイナンスに関する検討事項~M&A 法務デューデリジェンス

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本ページの内容

 法務デュー・ディリジェンスにおいて実務上調査すべき項目と問題となりうる点は多岐に及びます。本ページでは、中小企業の株式譲渡を前提に、金融・ファイナンスに関連した事項の調査についてのアウトラインを解説し、どんなリスクがあるか、そして売手・買手としてどんな対応が可能かを簡単に解説します。

 本サイトで紹介する内容は、例示であって、すべての問題点を網羅するものではありません。

資金調達方法についての調査

デュー・ディリジェンスにおける買手の目的

 買手は、対象企業の資金調達方法について強い関心を持ちます。それは、対象企業の財務状況や、M&A取引後の対象企業の資金調達方法に大きな影響があるからです。

 以下、資金調達方法における法務デュー・ディリジェンスにおいて検討する視点の例を以下検討します。

債権者の調査

 買手は、対象企業の借入先等、債権者に関心を持ちます。

 特に、債権者がノンバンク、子会社、関連会社、または役員等の個人である場合、融資に至る理由について、債権者が関心を持つ場合が多いと考えられます。それで、この点については、これがリスク要因となるのか否か、売手において十分な説明が必要な場合があります。

 また、これらの融資がリスク要因となりうる場合、ノンバンク、関連会社、役員個人等からの融資を清算することをM&A取引の条件とすることを検討できます。その際のコストを買手が負担する場合、M&A取引条件に反映させることも検討します。

 また、対象企業の主要な債権者に対して、事前の根回しが必要と判断される場合もあり、これについては、売手において、買手との協議の上で、M&A取引実行の条件としてこれを行うべき場合もあります。

資金調達の方法

 資金調達の方法がどんなものかについても調査がなされます。それは、対象企業における財務状況を把握するうえで、買手にとって有益であるためです。

 また、資金調達の方法が資産の流動化・証券化といった複雑なものである場合、資金調達方法の全体像を把握する必要がある場合もあります。

担保・保証に関する問題点

調査内容と金融機関との協議

 対象企業の借入について、親会社といった関連会社、代表取締役等役員の保証の有無が調査されます。同様に、対象企業、親会社、役員個人の不動産、動産または債権等に、担保権が設定されているか否か、その内容について調査確認します。

 これらの保証・担保の取扱いについては、多くの場合、売手および買手において、金融機関と事前に協議することが望ましいと考えられます。また担保権が設定された資産について、契約上、使用、処分等の制限が課されている場合も多く、金融機関との協議が有益です。

保証と期限の利益

 保証との関係で問題となるのは、期限の利益喪失条項に、対象企業自身の財務状態の悪化に加え(これは融資契約によく見られます)、保証人の財務状態の悪化が含まれる場合があります。

 このような場合、対象企業ではコントロールできない保証人固有の事情で、借入債務の期限の利益を失うというリスクが存在することになりますので、売手・買手・金融機関との協議によって対策を考える必要があります。

第三者の債務に対する保証債務

 対象企業のバランスシート等には債務として明示されていない潜在債務の一つとして、対象企業が、第三者の債務について連帯保証している場合が挙げられます。

 こうした保証債務が発見されたときは、支払の債務の額、利息、弁済期、債務原因、当該第三者(主債務者)の信用状態等から、現実化する可能性を考えて、売却価格の評価に反映する必要が生じる場合があります(その評価は困難ではありますが)。また、こうした保証の解除をクロージングの条件とするような交渉が必要になるかもしれません。

コベナンツ条項に関する問題点

コベナンツ条項の概要

 ファイナンス関係の契約において、いわゆる「コベナンツ条項(誓約条項)」が問題になることがあります。

 この条項は、融資を受けるといった際に、対象企業に対し、一定の行為(行わないことも含む)を義務として課すという条項です。それでこの規定は、対象企業の事業活動や資産の処分を制限することになる場合があります。

 そのため、こうしたコベナンツ条項が、M&A取引の阻害要因となったり、又は、取引実行後に買手が考えている事業計画に対する障害となるおそれがあります。それで、買手としてはこうした規定に注意を払います。

M&A取引上問題となりうるコベナンツ条項の例

 以下、M&A取引上問題となりうる条項の例を考えます。

企業再編禁止条項

 対象企業に対し、企業再編を禁止する規定が置かれることがあります。具体的には、事業譲渡、会社分割、合併、株式譲渡などがあります。

 それで、対象企業のM&A取引自体がこの制限に抵触する場合、売手において、金融機関から事前に同意を得ておく必要があります。また、想定していたM&A取引のスキームを、禁止されていないスキームに変更する場合もあります。

財務制限条項

 対象企業において、一定の財務上の数値を維持する旨の条項です。

 例えば、B/S上の指標では、純資産額の維持、有利子負債の制限、手元流動性の維持などがあります。また、P/LやC/Fに関連したものとして、インタレスト・カバレッジ・レシオの維持、利益水準の維持などがあります。

 こうした規定がある場合、買手にとっては、M&A取引後の事業継続において束縛となったりリスク要因となり、そのリスクが取引スキームの選択やディール額に反映されることがあります。

事業維持条項

 対象企業の一定の事業の継続を義務づける条項が定められることがあります。買手が、M&A取引後に、対象企業のある事業から撤退しようと考えている場合、事業の変更を考えている場合などは、この条項が足かせとなり、金融機関との事前の根回しなどが必要となるかもしれません。

資産譲渡制限条項(アセット・ディスポーザル条項)

 対象企業が有する一定の資産の譲渡を禁止する条項です。M&A取引後、買手が、対象企業のある資産を売却する予定を持っている場合、この条項への抵触を検討する必要があります。この場合も、金融機関との協議・対応が必要となる場合があります。

期限前返済に関する制限

 買手が、M&A取引後に、対象企業の資金調達スキームを変更することを計画しており、そのため、対象企業の現在の債務を期限前に返済することを考えている場合があります。

この場合、契約上、期限前返済には違約金などが課せられる場合があり、買手としては想定される手数料・違約金を調査確認する場合があります。この違約金等の金額・内容によっては、買手としては、M&A取引後のコストとして、売却価格に反映させるよう求めてくる場合があり、売手としても検討・金融機関との交渉が必要な場合も生じます。


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