英文契約の一般条項~No Waiver(権利不放棄)
英文契約書に頻繁に登場する一般条項(General Provisions)として、”権利不放棄(No Waiver)”があります。以下この規定について解説します。
権利不放棄規定の例(サンプル)
典型例としては以下のようなものがあります。
Article ** (No Waiver)
1 当事者の一方が、相手方による本契約の義務の履行を要求せず、又は要求が遅れたとしても、このことは、その後に当該義務又は他の義務の履行を要求する権利を放棄したとはみなされない。 |
規定の解説
国際契約では、この「権利不放棄」の規定が頻繁に登場します。一見当然のように見えるかもしれませんが、例えば、英米法には、エストッペル(Estoppel 「禁反言」)という法理があります。
この法理は、簡単にいえば、自己の言動を信頼して他者が自己の利害関係を変更した場合、その他者に対して自己の言動に矛盾する事実を主張することができない、というものです。
サンプルのような規定を定め、不本意な形で権利が行使できなくなることを防ぐのが、この「権利不放棄」条項です。
用語の解説
waiver
「権利放棄」という意味です。契約書や法律用語として頻繁に登場します。
thereafter
「その後」を意味します。英文契約では、thereafterのほか、似たような言い回しで、「thereof」「thereby」「therein」「thereto」なども登場します。
これらの言葉の「there」は、前にある言葉や文章を指します。サンプルの「thereafter」の「there」は、「本契約の義務の履行を要求せず、又は要求が遅れたとき」をいうわけです。
また、thereofの例を挙げると、以下のような使い方がされます。
This agreement shall continue in effect for a period of one (1) year from starting the date hereof, and thereafter automatically extended for successive period of one (1) years each, unless either Party otherwise gives notice to the other Party in writing at least three (3) months prior to the expiry of this Agreement or any extension thereof.
最初に出てくる「hereof」は、この契約自体を指します。他方、最後の「thereof」は、その前の「this Agreement」を指します。つまり、重複を厭わずに書けば、「any extension of this Agreement」となるわけです。
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