1. 1.1 取締役の資格と欠格事由
次のページ 他社役員の兼務
取締役の欠格事由
取締役の欠格事由
会社法331条は、取締役の欠格事由を定めています。同条によれば、主に次の場合、取締役になれないとされています。
- 成年被後見人又は被保佐人
- 法人
- 会社法、証券取引法,破産法その他の一定の法律に定められた罪によって刑に処せられ、その執行を終わった日(又は執行を受けることがなくなった日)から2年を経過していない者
- 上記に定めた罪以外の罪によって禁固以上の刑に処せられ、その執行を終わるまでの者(又はその執行を受けることがなくなるまでの者)。ただし、この場合、刑の執行猶予中の者は含まれない。
したがって、例えばある取締役が成年後見を受けたりすると、これは欠格事由に該当しますので、当然に取締役の地位を失うことになります。仮に取締役としての登記が残っていたとしても、これは無効の登記となります。
なお、監査役や執行役の欠格事由も同様です(会社法335条1項・402条4項)。
破産者と欠格事由
ある人が破産者である場合には、取締役になることはできないでしょうか。
この点、改正前の商法では、破産者であること(「破産手続開始の決定を受け復権していない者」)が取締役の欠格事由とされていました。しかし、この規定が破産者(経営者)の早期の経済的再生の妨げになるおそれがあったことから、新会社法になり、破産者であることは欠格事由からは外されました。そのため、破産者であるというだけでは、取締役になれないことはありません。
ただし、現在就任中の取締役が自己破産をした場合には若干別の考慮が必要です。というのは、民法の規定により、就任中の取締役と会社との契約(委任契約)が終了し、その当該取締役は自動的に退任することになるからです。そのため、その取締役が引き続き就任するためには、株主総会などで改めてその取締役を選任べきということになります。
もっとも、この場合に常に退任と就任の登記まで必要といえるかは難しい問題があり、この点は専門家に相談するとよいように思います。
未成年者は取締役になれるか
未成年者であること自体は、欠格事由ではありません(会社法331条1項)。それで、未成年者であるからというだけで、取締役になれないというわけではありません。
ただし、会社の役員になることは、会社との間で委任契約を締結することを意味します(会社法330条)。そして、未成年者が契約その他の法律行為を行うには、親権者(法定代理人)の同意が必要となるため(民法5条1項)、取締役の就任にも親権者の同意が必要となります。実際、未成年者の役員就任の登記においては、就任承諾書に加え、法定代理人の同意書が添付書面になるとされています。
社外取締役の資格
社外取締役については、欠格事由のほか、一定の資格(要件)が必要となります。具体的には以下のとおりです(会社法2条15号)。
- その会社・子会社の業務執行取締役等(これは業務執行取締役、執行役、支配人、他の使用人をいいます)ではなく、社外取締役の就任前10年間、その会社・子会社の業務執行取締役等であったことがないこと(同号イ)
- 社外取締役の就任前10年間に一度でも、その会社・子会社の取締役、会計参与、監査役経験がある者(業務執行取締役等になったことがある者を除く)については、当該取締役等に就任する前の10年間、その会社・子会社の業務執行取締役等であったことがないこと(同号ロ)
- その会社の経営を支配する者ではなく、親会社の取締役、執行役、支配人、他の使用人ではないこと(同号ハ)
- その会社の親会社等の別の子会社等の業務執行取締役等ではないこと(同号ニ)
- その会社の取締役、執行役、支配人、重要な使用人、会社経営を支配する者の二親等以内の親族ではないこと(同号ホ)
次のページ 他社役員の兼務
法律相談等のご案内
弊所へのご相談・弊所の事務所情報等については以下をご覧ください。
メールマガジンご案内
弊所では、メールマガジン「ビジネスに直結する判例・法律・知的財産情報」を発行し、比較的最近の判例を通じ、ビジネスに直結する法律知識と実務上の指針を提供しております。 学術的で難解な判例の評論は極力避け、分かりやすさと実践性に主眼を置いています。経営者、企業の法務担当者、知財担当者、管理部署の社員が知っておくべき知的財産とビジネスに必要な法律知識を少しずつ吸収することができます。 主な分野として、知的財産(特許、商標、著作権、不正競争防止法等)、会社法、労働法、企業取引、金融法等を取り上げます。メルマガの購読は無料です。ぜひ、以下のフォームからご登録ください。
バックナンバーはこちらからご覧になれます。 https://www.ishioroshi.com/biz/mailmag/topic/ |
ご注意事項
本ページの内容は、執筆時点で有効な法令に基づいており、執筆後の法改正その他の事情の変化に対応していないことがありますので、くれぐれもご注意ください。