名目的取締役の責任

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名目的役員の責任についての考え方

 特に旧商法の時代は、取締役の数が3名以上必要であったため、親戚、友人から、会社の取締役の数が足りないので、取締役に就任して欲しい、報酬は支払えないが名義だけ貸してほしい、取締役会に出席する必要もなく、迷惑をかけない、と言われ、「名前を貸した」というケースはよく見られました。では、本当に何の責任も生じないのでしょうか。

 結論的には、責任を負う可能性は十分にあります(最高裁昭55・3・18判決)。それは、報酬をもらっているかどうかに左右されません。取締役には、代表取締役を監視する義務と責任があります。そして、取締役会に出席し意見を述べる権利と義務があり、さらには代表取締役ではなくとも取締役会を開催を求めることができるなど、大きな権限があります。

 そして、代表取締役が自己の義務に反し、会社や第三者に損害を与えるなら、名目的取締役であっても、監視義務違反を問われ、会社又は第三者に対し、損害賠償責任を負うことになる可能性は十分にあります。この場合、過去の判例によれば、代表取締役が勝手にやったとか、名前だけ貸してくれと言われた、という言い訳が通らないことが多数あります。

「名目的」取締役就任・在任にあたっての留意点

 以上の責任を考えれば、取締役になるかどうかは、仮に「名目的」であっても、上のような重い責任が生じ得ることを前提の上、慎重に考える必要がありますし、いったん就任する以上、取締役としての義務を果たす必要があります。

特に経営状態や経営内容について悪い風評が立っているときは、そのまま放置せず、取締役会設置会社であれば取締役会に出席したり、今まで取締役会が開かれたことがなければ会社に取締役会の招集召集を要求したりすべきです。そして、代表取締役の行為を是正する意見を述べ、それを取締役会の議事録に残すなど、職務を果たしたことを立証できるようにしておくべきでしょう。

また、取締役会設置会社ではない場合、取締役として、代表取締役に対して直接、書面などの証拠に残る形で意見を述べたり、取締役どうしの話し合いを呼びかけるなどによって監視義務を果たしていることを示すこともできるかと思われます。

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