信用毀損行為(不競法2条1項21号)

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信用毀損行為(営業誹謗行為)規制の概要(2条1項21号)

規制の概要

 不正競争防止法2条1項21号[カーソルを載せて条文表示]は、競争関係にある他人の営業上の信用を害する虚偽の事実を告知し、又は流布する行為を、不正競争行為として禁止しています。

 この行為を信用毀損行為、営業誹謗行為、又は虚偽事実告知流布行為といいます。

規定の趣旨

 営業上の信用は企業の重要な財産であり、信用を得るのは時間も労力もかかるのに対し、信用の喪失は、短時間でたやすく生じます。それで、ある事業者は、競業他社の評判をおとしめて不当に優位になろうと考えて、虚偽の事実を使って営業上の信用を攻撃しようとするかもしれません。

 しかし、こうした手段をもって自己が優位に立とうとする行為は、許されない不正競争行為といわなければなリません。そのため、不正競争防止法は、こうした行為を、規制の対象としています。

民法の不法行為との相違

 信用毀損行為が行われた場合、民法に定める「不法行為」による損害賠償請求も可能です。

 では、不正競争防止法の規定を根拠付けることにどんな利点があるのでしょうか。その一つは、当該不正競争行為に対して、差止請求(3条)、信用回復措置請求(14条)が認められる、という点にあります。他方、民法を根拠にすると、損害賠償請求は認められますが、差止請求が認められるとは限りません。

 もう一つのメリットは、「損害額の推定規定」(不正競争防止法4条)が活用できることです。多くの場合、信用毀損行為が行われたとしても、これと因果関係のある損害がどの程度になるのかについて、算定や立証は困難ですが、民法に基づく請求であれば、これを立証しないといけません。

 しかし、不正競争防止法を根拠にすると、侵害者が侵害行為により利益を受けた額を損害額を推定するなど、損害額を推定する規定を活用できます。そのため、権利者にとって損害立証の困難性が軽減され、権利行使のためのハードルが下がります。

 以下、同規定の要件をご説明します。

信用毀損行為の要件

要件のアウトライン

 信用毀損行為に該当する要件は、以下のとおりです。

  • 競争関係にある
  • 他人の
  • 営業上の信用を害する
  • 虚偽の事実を
  • 告知し、又は流布すること

 以下、各要件について簡単に解説します。

「競争関係」とは

考え方

 不正競争防止法2条1項21号では、「競争関係にある他人の営業上の信用を害する」行為が対象となります。

 この「競争関係」とは何を意味するのでしょうか。ここでは、現に特定の販売競争などの競争が生じていることに限られるものではなく、競争関係は、双方の営業につき、その需要者又は取引者を共通にする可能性があることで足りる、と考えられています(経済産業省 逐条解説不正競争防止法)。

 また、公正な競争秩序を維持する必要性の観点からは、広く同種の商品を扱うような業務関係にあればよく、現実に競争関係が存在していなくとも、市場において競合が生じるおそれ、つまり将来の潜在的な競争関係があればよいと考えられています。

 例えば、家電事業を開始しようとして掃除機の生産の準備しているA社に対し、市場参入を恐れるB社が、家電量販店に、事実に反して「A社の掃除機は劣悪な部品を使っていてすぐに壊れる」などと通知する行為も、信用毀損行為に当たると考えられます。

裁判例
大阪地判平成16年9月28日判決(競争関係否定例)

 裁判所は、錦絵等のコレクションの維持、運営を行っている原告と教育図書の編集・制作・出版等を行っている被告との間に、需要者や取引先を共通にするような競争関係があるとは一般的には解し難い、として競争関係を否定しました。

東京地裁平成18年8月8日判決(競争関係肯定例)

 裁判所は、原告被告ともに被服用ハンガーの製造販売業者であることを理由に、競争関係を認めました。

 なお被告は、自己が、西友とその関連業者に対する納入に特化した業務を行っており、カルフールその他の原告の取引先を対象に営業活動を行ったことも,その予定もなかった旨を主張して競争関係を争いました。

 裁判所は、「競争関係」とは、双方の営業の需要者又は取引者を共通にする可能性があることで足りる、と述べて被告の主張を退けました。

東京地裁平成30年3月13日判決(競争関係肯定例)

 裁判所は、原告被告ともに、高級婦人衣料品、毛皮及び宝飾品等の雑貨等の企画、デザイン、製作及び販売等を業とすることを理由に、競争関係を認めました。

 なお被告は、自己が主に顧客それぞれにカスタマイズされたオートクチュール商品を販売しており、原告のような既製服を量産していないと主張して競争関係を争いました。

 裁判所は、そのような相違があったとしても,双方の営業につき、その需要者又は取引者を共通にする可能性が否定されるものではない、と述べて被告の主張を退けました。

「他人」とは

考え方

 「他人」とは、ある不正競争行為者が信用を毀損する相手方のことをいいます。

 そこには、会社その他の法人、個人事業者が含まれます。また、学会のような、法人格のない団体(権利能力なき社団)も、他人に該当します。

 また、「他人」は、特定の他人である必要があります。それで例えば、ある業界全体について信用を毀損することを述べても、通常は「他人」に該当することはありません。

他人を明示する記載の要否

 前述のとおり、「他人」は、特定の他人である必要がありますが、必ずしも名指しする必要はありません。告知を受ける受け手が、誰を指すのかが判別できていれば、「他人」の要件を満たします。

 以下のような裁判例があります。

東京地裁平成18年7月6日判決

 この事案では、被告が原告の取引先に送付した文書には、他社製品に特定の成分が含まれており、これが被告の特許に抵触する旨の記載がありましたが、どの企業の製品であるかは明示されていませんでした。

 裁判所は、「当該他人の名称自体が明示されていなくても、当該告知等の内容及び業界内周知の情報から、当該告知等の相手方となった取引先において『他人』が誰を指すのか理解できるのであればそれで足りる」と述べました。

東京地裁平成18年8月8日判決

 裁判所は、信用毀損行為を組成する文書に「他人」の氏名等が明示されていなくとも、当該文書を受け取った者に、特定の者の商品やサービスについて事実に反する受け止め方を生じさせるのであれば、「他人」の営業上の信用に対する毀損が生じるおそれがあるから、他人の名称が明示されている必要はない、と述べました。

「営業上の信用を害する虚偽の事実」とは何か

「営業上の信用」とは

 営業上の信用とは、学術的には、人の経済的方面における価値、すなわち人の財産上の義務履行について受ける社会的信頼をいう、とされています(小野昌延編著「注解不正競争防止法」第 3 版上巻(青林書院)751 ページ)。

 簡単にいえば、ある会社や個人が持つ経済的な価値に対する他人の評価・期待であると考えられます。例えば、小売店であれば、仕入れた商品の代金がきちんと支払われるという卸売元の評価、販売する商品が安全で良質なものであるという顧客の評価、アフターサービスが良質であるという顧客の評価、修理の技術が高いという顧客の評価、などなど多岐にわたります。

 また、この「営業」は、営利を目的とする事業だけでなく、非営利事業(学校、病院、学術研究など)も含まれます。

「信用を害する…事実」とは何か

 「害する事実」とは、信用低下のおそれのある事実をいいます。受け手がそれを信じれば被害者と取引をすることを躊躇してもおかしくない事実、といえるかもしれません。必ずしも現実に信用が低下したことや実害の存在までは必要ありません。

 また、信用毀損行為は、「事実」の告知や流布が必要です。それで、例えば、ラーメン店Aの店主が、ブログでラーメン店Bのラーメンを食べた結果として「美味しくなかった」と書いても、それだけでは通常は主観的な意見であって、通常は信用毀損行為には当たりません。

 しかし、先ほどの例で、ラーメン店Aの店主が、ラーメン店Bのラーメンについて「粗悪な油を使っているから美味しくない」と書き、実際にはそのような事実はない、ということなら、「事実」の告知が含まれますので、信用毀損行為に該当する可能性が高くなります。

「虚偽の事実」とは何か

 虚偽の事実とは、客観的事実に反する事実のことをいいます。

 それで、ある商品の性能や品質に対する批判であっても、それが客観的真実に反しなければ、信用毀損行為には該当しません。

 また、「事実」の告知や流布については、事実を断定しなくとも、「~かもしれない」「~のようである」といった婉曲的・推測的な表現であっても、信用毀損行為に該当する場合があります。

 さらに、行為者が、当該告知や流布の内容について、虚偽であることを知っていた場合はもちろん、真実であると誤解していたからといってそれだけで信用毀損行為の成立が免れるわけではありません。

裁判例

 「信用を害する虚偽の事実」という点に関する裁判例としては、以下のようなものがあります。

東京地裁平成17年1月20日判決

 裁判所は、「信用を害する虚偽の事実」とは、証拠等をもって該当性の有無が判断できるような客観的な事項をいうものであって、証拠等による証明になじまない価値判断や評価に関する記述を含まないとし、そのような記述は、意見ないし論評の表明として、市場における自由な競争行為の一環として許容されると述べました。

「告知・流布」とは何か

 「告知」とは、特定人への個別的な伝達をいいます。例えば、競業会社の取引先に個別に訪問して伝える、競業会社の仕入先に書面で通知するといったものが含まれます。

 流布とは、不特定多数に虚偽の事実を伝える行為をいいます。インターネットへの掲載、新聞やテレビの広告、雑誌などの記事などがあります。

 なお、この告知や流布は、被害者の信用、つまり他者からの評価を害することに向けられる必要があるため、他者に対してなされる必要があります。それで、A社が競業他社のB社自身に対して、例えばB社の商品を誹謗する事実を告げても、B社に対する信用毀損行為には当たりません。

信用毀損行為が問題となった事例の類型

 以下、不正競争防止法上の信用毀損が問題となった事例の類型をご紹介します。

特許等の侵害者の取引先に対する侵害通知

基本的な考え方

 競合他社が自社の特許権に抵触する製品を製造しているという場合、特許権者としては、当該製造者に対して侵害行為の中止や損害賠償を求める警告書を送付するのが一般的です。

 他方、特許権者が、侵害疑義品を製造する競合他社のみならず、当該製品を仕入れて販売している販売業者に対しても、当該侵害疑義品が特許権を侵害している旨を通知したい、と考えることは少なくありません。

 それは、そうすることで、侵害疑義品が市場に流通することを阻止したり、萎縮した販売業者が製造者との取引を止めるという効果によって製造者にプレッシャーを与えることができるからです。

 しかし、こうした通知を安易に行うと、不正競争防止法2条1項21号の信用毀損行為となって、特許権者が逆に当該競合他社に責任を負うことになってしまいます。

 以下、裁判例を若干ご紹介します。

裁判例
大阪地裁昭和53年12月19日判決

 競業関係にある会社(原告)が製造販売する製品が自己の実用新案権を侵害するとして、被告が、原告の取引先(総委託販売元)に対しその販売の中止を申し入れましたが、当該実用新案権は、進歩性がないことを理由に無効とされました。

 それで原告は被告に対し、不正競争防止法に基づき損害賠償請求をしました。

 裁判所は、被告の過失の存否を決するについては、侵害判断について相応に高度な注意義務を課するのが相当ではあるとしながらも、そのような判断をするに至つた事情を詳細に検討し、事情中汲むべき点は汲む態度を持すべきである、と述べました。その上で裁判所は、進歩性存否の判断は新規性と異なり極めて微妙な点が存し、一律な基準によつて判断される問題ではないこと等から、被告には過失は認められないと判断しました。

知財高裁平成23年2月24日判決

 原告は、被告の製造委託先事業者に対して、被告製品が原告の特許権を侵害していることが明白であり、原告製品の製造、販売の中止、在庫品の廃棄及び損害賠償を請求する可能性がある旨、さらに、最終消費者の迷惑を考慮してなるべく穏便な方法を採用したいので早急に会談の場を設けて善後策を探りたいこと、担当者に連絡してほしいことが記載された文書で告知をしました。

 しかし、当該特許権は進歩性がないことを理由に無効となりました。それで、原告が被告に対して不正競争防止法の信用毀損行為に当たるとして損害賠償を求めました。

 裁判所は、被告の損害賠償責任の有無を検討するに当たっては、特許権者の権利行使を不必要に萎縮させるおそれの有無や、営業上の信用を害される競業者の利益を総合的に考慮した上で、違法性や故意過失の有無を判断すべき、と述べました。

 そして裁判所は、当該特許の無効理由については新規性欠如といった明確なものではなかったことに照らすと、当該無効理由について被告が十分な検討をしなかったという注意義務違反を認めることはできず、当該告知行為が、その時点においてみれば、内容や態様においても社会通念上著しく不相当であるとはいえず、同特許権に基づく権利行使の範囲を逸脱するものとまではいうこともできない、として損害賠償責任を否定しました。

大阪地裁平成27年3月26日判決

 原告は、自己の実用新案権について、特許庁長官に対し実用新案技術の評価請求を行って進歩性がない旨の評価を得ていましたが、原告の取引先に対して、原告商品が当該実用新案権に抵触するものと認識している旨を告知しました。

 裁判所は、被告が、当該実用新案権が無効とされ、これに基づく権利行使が否定される蓋然性が高いことを認識しながら、技術評価書を提示することなく、有効性に特段の問題もない権利であるかのようにして原告の取引先に通知を送付し、その結果一部の業者は、原告商品の取扱を停止したのであるから、被告の行為は故意の不正競争行為と評価すべきものでありその違法性の程度は大きい、と判断しました。

東京地裁平成29年2月17日判決

 原告は、被告の取引先に対して、被告製品が特許権侵害であることを告知しました。しかし、原告が当該特許権について特許無効審判を請求した結果、当該特許権は無効と判断されました。無効理由は、冒認出願(特許を受ける権利を有しない者が特許出願すること)でした。

 こうした経緯から、原告が被告に対して不正競争防止法の信用毀損行為に当たるとして損害賠償を求めた事案において、裁判所は、被告が原告に対して損害賠償責任を負うか否かにあたっては、以下の事情を考慮すると述べました。

  • 無効理由が告知行為の時点において明確なものであったか否か
  • 無効理由の有無について特許権者が十分な検討をしたか否か
  • 告知行為の内容や態様が社会通念上不相当であったか否か
  • 特許権者の権利行使を不必要に萎縮させるおそれの有無
  • ,営業上の信用を害される競業者の利益

 裁判所は、冒認出願という本件の無効理由の有無について被告が十分な検討をしていたとはいえないこと、A社に対する侵害通知が話し合いに応じることなく一方的に実施許諾を拒否する内容のものであったことから告知行為の内容や態様が社会通念上不相当であったといえること等から、被告には過失がある、と判断しました。

不当な広告等

 不当な内容の広告が不正競争防止法2条1項21号の問題となることがあります。以下若干の事例をご紹介します。

名古屋地裁平成5年1月29日判決

 原告は楽器を製造販売する大手メーカーであり、被告は、他の中小メーカーのピアノを販売していました。

 被告は、原告の新品のピアノを非常に安い価格で販売するかのような広告を出し、来店した顧客に対し、店舗に展示している中古の原告製品を見せて、品質等に欠点がある等と述べ、自社が扱うピアノ製品に誘導していました(いわゆる「おとり広告」)。

 裁判所は、この行為が、「広告された商品を扱う業者の営業上の信用を害する虚偽の事実を陳述・流布するための要素ともいうべき集客手段」であるとして、被告の行為を不正競争行為に該当すると判断して差止請求、謝罪広告、損害賠償請求などを認めました。

東京高裁平成16年10月19日判決

 家電量販店であるA社が、自社の店内に、「当店はBさんよりお安くします」と大きく表示したポスターを店内に貼付した行為について、B社がA社の責任を追求しました。主たる争点は景表法でしたが、不正競争防止法も争点となりました。

 裁判所は、この表示がB社の営業上の信用を毀損するものではないし、虚偽の事実を告知するものともいえないと述べて、A社の責任を否定しました。

「信用毀損行為(営業誹謗行為)」に対する是正方法

 「信用毀損行為(営業誹謗行為)」に対する是正方法・責任追及方法としては、差止請求・予防請求・信用回復措置請求・損害賠償請求などが考えられます。

 なお、是正方法・責任追及方法に関しては、「不正競争行為に対する是正方法」のページもご覧ください。

差止請求(3条1項)

 不正競争行為によって営業上の利益を侵害される(おそれのある)者が、侵害の停止又は予防を請求することができます(不正競争防止法3条1項[条文表示])。

 この点、差止請求ができる要件として「不正競争行為によって営業上の利益を侵害される(おそれのある)者」である必要がありますが、この営業上の利益の侵害は、利益侵害の発生について相当の可能性があれば足りるとされています。

 そのため、営業誹謗行為の存在が認定されれば、営業上の利益を侵害されるおそれが認められることは多いと考えられます。

廃棄除去請求(3条2項)

 侵害行為を構成した物や侵害行為によって生じた物を廃棄すること、侵害行為に供した設備を除却すること、その他必要な行為を請求することができます(不正競争防止法3条2項[条文表示])。

 営業誹謗行為に関してはそのような請求をする必要性が高い場合は多くないかもしれませんが、例えば営業誹謗行為と認められた記述が含まれる製品カタログの廃棄やウェブサイトの削除といったことが考えられます。

信用回復措置(14条)

 営業上の信用を害された者は、侵害した者に対して、信用の回復に必要な措置を取らせることができます(不正競争防止法14条[条文表示])。

 具体的には、謝罪広告を出させること、取引先に対して謝罪文を発送させることなどの方法が、例として考えられます。

裁判例
名古屋地裁平成5年1月29日判決

 ピアノ販売業者である被告は、原告(著名なピアノメーカー)の新品のピアノを非常に安い価格で販売するかのような広告を出し、来店した顧客に対し、店舗に展示している中古の原告製品を見せて、品質等に欠点がある等と述べ、自社が扱うピアノ製品に誘導していました(いわゆる「おとり広告」)。

 裁判所は、この行為が、「広告された商品を扱う業者の営業上の信用を害する虚偽の事実を陳述・流布するための要素ともいうべき集客手段」としての不正競争行為であるとして、被告に対し、名古屋市内で発行する朝日新聞及び中日新聞の各朝刊のラジオ、テレビ面に謝罪広告を掲載することを命じました。

大阪地裁昭和60年5月29日判決

 被告は、自己の実用新案権を侵害するとして、原告の製品の販売中止を求める警告書を原告の取引先に配布しました。この行為が信用毀損行為に該当するとして、裁判所は、原告に対し、日本経済新聞、日経産業新聞及び日刊工業新聞の各全国版に各1回ずつ掲載するよう命じました。

大阪地裁平成19年6月11日判決

 裁判所は、営業上の信用を害する虚偽の事実を含む雑誌広告を行った当事者に対し、当該広告が掲載された雑誌(「ジムニースーパースージー」及び「ジムニープラス」)に、謝罪広告を掲載することを命じました。他方で、当該広告を掲載しなかった同種の雑誌への広告掲載は認めませんでした。

損害賠償請求(4条)

概要

 故意又は過失により不正競争を行って他人の営業上の利益を侵害した者に対しては、損害賠償請求を行うことができます(不正競争防止法4条[条文表示])。

 この点で、不正競争防止法5条は、損害額を推定する規定を定めており、同条2項については、信用毀損行為(営業誹謗行為)にも適用されます。

不競法第5条第2項に基づく請求

 信用毀損行為(営業誹謗行為)によって営業上の利益を侵害された場合に請求しうる損害賠償額に関しては、損害額の算定方法を定めた不正競争防止法5条2項[カーソルを載せて条文表示]が適用されることがあります。

 同規定では、被侵害者が被った「損害額」を「侵害者がその侵害の行為により受けた利益額」と推定すると規定しています。

 もっとも、留意すべき点は、この規定は、「損害の額」の推定規定であり、「損害の発生」まで推定するという規定ではありません。

 したがって、不正競争防止法に基づいて損害賠償請求を行う当事者は、前提として、当該不正競争行為によって、損害が発生したということについての立証が必要と考えられています。

 なお、不正競争防止法5条2項についての詳しい解説は、「不正競争防止法違反行為に対する是正方法」をご覧ください。

信用毀損行為(営業誹謗行為)に関する損害賠償の例

信用毀損行為(営業誹謗行為)に関する損害賠償請求が認められた例としては以下のようなものがあります。

東京地裁平成15年10月16日判決

 被告が、米国における原告の取引先に対して原告製品が被告の米国特許権を侵害するなどと記載した警告書等を送付したケースで、裁判所は、原告が米国での大口取引先との取引を失ったことによる得べかりし利益として199万8000円を認定し、弁護士費用相当額100万円と合わせた299万8000円の賠償を認めました。

東京地裁平成27年9月29日判決

 畳の塗料の販売をする原告のタタミ染め製品には欠陥がないにもかかわらず、アパートの賃貸業や清掃業を行なう被告が、同製品には欠陥があるなどとして同製品の販売店に対して虚偽の内容を記載した書面を配布したというケースです。

 裁判所は、配布先の販売店が同製品の取扱いを停止したものの、苦情申立て等がなかった場合に見込まれる本件製品の売上高が不明であるとして逸失利益の請求は認めませんでした。しかし、被告の行為の悪質さ等に鑑み400万円の無形損害の賠償を認めました。

 

 


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