2024-05-21 取引契約の中の知財保証条項(2)
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なお、このトピックは、メールマガジン発行日現在での原稿をほぼそのまま掲載しており、その後の上級審での判断の変更、法令の改正等、または学説の変動等に対応していない場合があります。 |
取引契約の中の知財保証条項(2)
前稿(2024.4.23発行の「取引契約の中の知財保証条項(1)」)では、いわゆる知財保証条項の概要につき、関連した裁判例をご紹介しつつ解説しました。以下のURLからご覧ください。
https://www.ishioroshi.com/biz/mailmag/topic/topic20240423
本稿では、前稿の解説の続編として、知財保証条項に含めることを検討できる代表的な規定につき、提供側と提供を受ける側の視点からご説明します。
【1】提供側の視点から
1)速やかな通知と防御の機会付与義務
この点は、前稿をご覧ください。
https://www.ishioroshi.com/biz/mailmag/topic/topic20240423
2)保証の時的範囲や地理的範囲の限定
提供側にとしては、リスクを限定すべく、保証の時的範囲や地理的範囲を限定することを検討できます。例えば、「乙は、成果物につき、納入の時点において日本国内に存在する・・知的財産権を侵害しないことを保証する」と定め、時的範囲を「納入時」とし、地理的範囲を「日本国内」と限定することが考えられます。
3)被提供側に帰責事由がある場合の例外規定
侵害の原因が被提供側にあることもあり、これを踏まえた例外規定を設けることを検討できます。例えば、「前記権利侵害又は権利侵害主張の原因の全部又は一部が甲が指定した仕様若しくは甲の指示にある場合、又はその他甲の責に帰すべき事由にある場合は、乙の責任は相当に減免される」といった規定です。
【2】提供を受ける側の視点から
1)保証条項のトリガーについての工夫
保証条項のトリガーについて工夫することを検討できます。
例えば、「成果物が第三者の知的財産権を侵害したときは、乙は自己の責任と費用において処理解決・・」という書きぶりだと、保証条項の適用のために、被提供者側が、成果物による第三者の知的財産権の侵害の事実を立証しなければならなくなる恐れがあります。他方「成果物につき第三者から知的財産権の侵害の主張がなされたときは・・」等と規定すると、このリスクの軽減に繋がります。
2)解決権限の明確化
第三者の知的財産権侵害があった場合、実際に権利主張を受けるのは被提供側であることが少なくありません。この場合に、提供側が当事者意識をもって対応するか疑問であることも多いため、むしろ被提供側にも対応する権利があり、対応費用を提供側に請求できる立付けの規定を設けることを検討できます。
例えば「甲は、甲自身が当該紛争の当事者となったとき、又は乙が当該紛争に対し適切若しくは迅速に対応しない場合、自ら当該紛争に対して対応することができる・・」といった規定です。
2)補償費目の列挙
提供側に補償してもらいたい費目を列挙することによって補償の範囲の争いをできる限り小さくする工夫も検討できます。
例えば、損害賠償、解決金、和解金のほか、弁護士費用、弁理士費用、鑑定費用、権利取得費用、ロイヤリティ、修正費用といった費目を含めることができるかもしれません。
本稿では、知財保証条項に含めることを検討できる代表的な規定の一部を取り上げました。生じる頻度は低いもののいざ生じると大きなダメージや紛争になりかねない事項に関する規定だけに、慎重なドラフトや交渉が必要となると思います。
お知らせ:The Best Lawyers in Japan 2025に選出されました
Best LawyersによるThe Best Lawyers in Japan 2025において、弊所代表石下雅樹弁護士が、”Intellectual Property Law(知的財産法)部門”に選出されました。
https://www.bestlawyers.com/current-edition/Japan
Best Lawyersによれば、同アワードは、”The Best Lawyers Purely Peer Review”(同地域・同じ法律分野内の弁護士による選出意見を集約して選出する調査手法)によって選出しているとされています。
なお、同部門で選出された他の事務所には、アンダーソン・毛利・友常法律事務所、モリソン・フォスター法律事務所などが含まれています。
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