2022-11-29 タコの滑り台と応用美術の著作物性(2)

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今回の事例 タコの滑り台と応用美術の著作物性(2)

知財高裁令和3年12月8日判決

A社は、タコの滑り台の製作者から、同滑り台にかかる著作権の譲渡を受けた会社であるところ、B社が製作する滑り台がA社の著作権を侵害すると主張しました。

両滑り台の画像は以下のとおりです(左:A社  右:B社)。

裁判所は、以下の要旨のような理由を述べ、結論的として著作権の侵害を否定しました。

・ 本件のような応用美術のうち,美術工芸品以外のものであっても,実用目的を達成するために必要な機能に関する構成と分離して,美的鑑賞の対象となり得る美的特性である創作的表現を備えている部分を把握できるものについては,作品全体が美術の著作物として、保護され得る。

・A社の滑り台は、滑り台としての実用目的を達成するために必要な機能に関する構成であるといえるから,これを分離して美的鑑賞の対象となり得る美的特性である創作的表現を備えているものと把握することはできない。

解説(立体商標制度)

 前号でも取り上げたとおり、応用美術が著作権によって保護を受けられるとは限らず、優れた実用品のデザインについては、著作権以外による保護を受けるための方策を考えることも必要であるといえます。

 この点、現行法で活用できる可能性のあるのは、主に以下のものです。
 (a)意匠権(意匠法)
 (b)立体商標(商標法)
 (c)商品形態模倣(不正競争防止法2条1項3号)
 (d)周知商品等表示(不正競争防止法2条1項1号)

 前回は、「(a)意匠権(意匠法)」について取り上げましたが、本稿では「立体商標」について取り上げたいと思います。

 立体商標とは、立体的な形状を商標として登録し保護するものです。それは、商標が、商品やサービスの出所を示す「印」として機能するところ、ケンタッキーのカーネルおじさん、不二家のペコちゃん人形などのように、立体的形状が「印」として機能する場合があるからです。

 そして、もともとは「印」とは別の目的で製作された商品の形状についても、実際に使用されることで「印」としての機能を持つようになって、立体商標として登録を受けられることがあります。例えば、コカ・コーラのボトルや、ヤクルトの容器、スーパカブ(バイク)の形状などが立体商標として登録を受けてきました。

 商標権の場合、意匠権とは異なって10年ごとに更新が可能で更新さえすれば半永久的に登録が維持されますので、長期間にわたり、商品形態を保護できる可能性につながります。

 ただし、立体商標の登録には、高いハードルがあります。なぜなら、商標法が保護するのは、デザインや形状そのものではなく、商品の「印」が持つ信用だからです。したがって、ある立体形状が「商標」として登録されるためには、その形状が、それを見ただけで「あの会社・ブランドの、あの商品だ」と多くの消費者が識別できるような、「印」として機能していることを立証する必要があります。

 そのため、ある商品形状について、形状自体から立体商標として登録できるほどの識別力が認められる要件は厳しく、長期にわたる使用実績が問われることが少なくありません。

 それで、実際のビジネスにおいては、新たな商品の形状の保護を図るには、まずは意匠登録を検討する必要は依然としてあるように思いますが、同時に、自社オリジナルの特徴的な形状を長期間にわたって使用し、販売数の実績を積み、広告宣伝においても、形状だけで、あの会社の商品だ、とイメージしてもらえるような戦略を立て実施することによって、その形状が識別力を獲得し、立体商標として保護される可能性も高まると考えられます。

弊所ウェブサイト紹介~商標法 ポイント解説

弊所のウェブサイトの法律情報の解説のページには、ビジネス・企業に関係した法律情報に関する豊富な情報があります。

例えば本稿のテーマに関連した商標法については

  https://www.ishioroshi.com/biz/kaisetu/shouhyou/index/

において解説しています。必要に応じてぜひご活用ください。

なお、同サイトは今後も随時加筆していく予定ですので、同サイトにおいて解説に加えることを希望される項目がありましたら、メールでご一報くだされば幸いです。



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