2022-10-25 タコの滑り台と応用美術の著作物性(1)
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今回の事例 タコの滑り台と応用美術の著作物性(1)
知財高裁令和3年12月8日判決
A社は、タコの滑り台の製作者から、同滑り台にかかる著作権の譲渡を受けた会社であるところ、B社が製作する滑り台がA社の著作権を侵害すると主張しました。
両滑り台の画像は以下のとおりです(左:A社 右:B社)。
裁判所は、以下の要旨のような理由を述べ、結論的として著作権の侵害を否定しました。
・ 本件のような応用美術のうち,美術工芸品以外のものであっても,実用目的を達成するために必要な機能に関する構成と分離して,美的鑑賞の対象となり得る美的特性である創作的表現を備えている部分を把握できるものについては,作品全体が美術の著作物として、保護され得る。
・A社の滑り台は、滑り台としての実用目的を達成するために必要な機能に関する構成であるといえるから,これを分離して美的鑑賞の対象となり得る美的特性である創作的表現を備えているものと把握することはできない。
解説
(1)応用美術と著作権
工業製品や実用品の中でも、人の美観に訴えるようなデザインのものがあります。そして、実用品の中でも美術として鑑賞に耐えるものは、応用美術と呼ばれています。
このような応用美術は著作権の保護を受けられるのではないかと考えがちですが、今回のケースのように、応用美術が著作権によって保護を受けられるとは限らないという点を頭に入れておくことは重要といえます。
そのため、優れた実用品のデザインについては、著作権以外による保護を受けるための方策を考えることも必要となるかもしれません。
(2)実用品のデザインを法的に保護する制度
この点、現行法で活用できる可能性のあるのは、主に以下のものです。
(a)意匠権(意匠法)
(b)立体商標(商標法)
(c)商品形態模倣(不正競争防止法2条1項3号)
(d)周知商品等表示(不正競争防止法2条1項1号)
以下、各制度の概要とメリット・デメリットを簡単に見ていきたいと思いますが、本稿では「(a)意匠権(意匠法)」について取り上げ、次号以降で他の制度について概観する予定です。
(2)意匠権の概要
意匠権の登録は、商品形態の保護としては効果的な方法です。意匠権として登録を受ければ、出願日から25年間(ただし令和2年3月31日までの出願分は設定日から20年間)、そのデザインを独占でき、他社による同一又は類似の形態の商品の販売を差し止めることができます。
ただし、意匠登録を受けるためには、出願の時点で同一・類似の意匠が存在しないこと(新規性)や、既存の意匠と比較して創作性が低いとはいえないこと(創作非容易性)などの要件が必要です。
それで、ある商品を販売してしまった後は、原則として意匠登録を受けられないといったデメリットがあります。
それで、「とりあえず販売してみてよく売れるなら意匠登録する」といった方法は、基本的には使えません。しかし、今後主力商品となる計画の商品であるとか、目新しいデザインの商品であるとか、商品寿命が長い商品として見込まれる商品などは、意匠登録を検討してもよいかもしれません。
弊所ウェブサイト紹介~M&A業務
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本稿のテーマと直接の関係はありませんが、M&A関連案件については、以下のページに解説があります。
https://www.ishioroshi.com/biz/kaisetu/kaishahou/index/mana_houhou/
是非一度ご覧ください。
なお、同サイトは今後も随時加筆していく予定ですので、同サイトにおいて解説に加えることを希望される項目がありましたら、メールでご一報くだされば幸いです
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