2021-11-08 利用規約の作成と消費者契約法

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今回の事例

 知財高裁令和2年11月5日判決

 A社は、オンラインゲームコンテンツを提供するインターネットを使ったポータルサイトを運営していました。
 
 同サイトの規約の中には、「他の会員に不当に迷惑をかけたと当社が判断した場合」や「会員として不適切であると当社が判断した場合」に、A社がサービスの利用を認めないことや会員資格を取り消すなどの措置をとることができ、さらに「当社の措置により会員に損害が生じても、当社は、一切損害を賠償しません。」という規定がありました。

 これに対し、消費者団体が、これらの規定は事業者の債務不履行責任や不法行為責任を全部免除する条項であって消費者契約法により無効であると主張して、差止請求の訴訟を起こしました。

 裁判所は、当該規定は、消費者契約法8条1項1号及び3号に定める事業者の責任を全部免除する条項に該当し、無効であると判断しました。

 他方、当該規約には、A社が故意過失により負う損害賠償責任の上限を1万円と定める規定がありました。これについても判断がなされましたが、裁判所は、この規定に対する差止請求は認めませんでした。

解説

 多数のユーザーが利用するサービスにおいて不測の事態が生じると、事業者が莫大な損害賠償責任を負う可能性があります。それで、事業者が、何らかの事態が生じたときに自社の負う責任を制限したり、免責を受けることでリスクをヘッジしたいと考えるのは自然なことであり、利用規約の制定においてこうした観点は重要といえます。

 他方、利用規約の作成にあたっては、法令の規制を考慮することが必要です。なぜなら、この点を無視していたずらに自社に有利な規定を設けても、かえって無効となるリスクが高くなるからです。

 例えば、消費者向けのサービスの利用規約であれば、消費者契約法は考慮すべき重要な法令の一つです。

 同法の規定の一例を挙げると、事業者の債務不履行や不法行為により消費者に生じた損害を賠償する責任の全部を免除する規定は無効とされます(同法8条1項1号、3号)。また、事業者に重過失がある場合には、責任の一部を免除する規定も無効とされます(同項2号、4号)。

 また、同法では、法律の規定に比べて消費者の権利を制限し又は消費者の義務を加重する条項であって、「信義誠実の原則」に反するほどに消費者の利益を一方的に害するものは無効なるという規定もあります(10条)。こうした規定は抽象的であり、適用範囲の判断が難しいため、慎重な検討が必要です。

 それで、特に消費者向けのサービスを提供している事業者であれば、既に作成された利用規約について、こうした観点から改めて見直してみるとよいかもしれません。



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