7.2 意匠登録の要件
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意匠登録の要件の概要
意匠登録の要件は多くありますが、主なものを列挙すると以下のとおりです。
- 意匠法上の意匠といえること
- 工業上利用できる意匠であること
- 新規性があること
- 創作の非容易性があること
- 既に出願された意匠と同一、または類似していないこと
- 「不登録事由」に該当しないこと
- 一度の出願で、複数の意匠が表されていないこと
最初の要件である「意匠法上の意匠といえること」については、意匠権の概要・意匠法上の「意匠」とはをご覧ください。
本ページでは、意匠登録の要件のうち、他の要件について簡単にご説明します。
工業上利用できる意匠であること
概要
意匠法は、「工業上の利用性」を持つ意匠(デザイン)の美的外観を保護する法律です(意匠法3条1項[カーソルを載せて条文表示])。
この「工業上の利用性」とは、同一のものを複数製造したり、建築したり、作成したりすることができるものを意味します。
「工業上の利用性」がないとされる例
例えば以下のようなものは、「工業上の利用性」がないとされます。
純粋美術の分野に属する著作物
純粋美術の分野に属する絵画や彫刻などの著作物は、工業的技術を利用して同一物を反復して多量に生産 することを目的としていませんから、工業上利用することができるものに該当せず、意匠登録の要件を満たしません。
自然物を意匠の主たる要素として使用したもので量産できないもの
ほとんど加工を施さない自然物をそのままの形状で使用するものは、工業的技術を利用して同一物を反復して多量に生産し得るものでないため、「工業上の利用性」がないとされます。
例えば、自然石をそのまま使用した置物、盆栽、観葉植物などがあります。
新規性
考え方
意匠法は、今までにない新しい意匠(デザイン)を保護します。したがって、「新規性」がない登録できません。「新規性」とは、ある意匠の出願前に、世の中に同一の意匠が存在しなかったことをいいます。
それで、ある意匠が出願された時点で、同一の意匠を持つ製品が日本や外国で出回っている場合、同一の意匠が刊行物に掲載されていた場合、インターネット上に公開されていた場合などは、新規性がないとされ意匠登録を受けることができません。
意匠の新規性の喪失の例外
しかし、上の原則を貫くと、権利者にとって不当に酷な結果になる場合が生じます。物品の外観という意匠の性質上模倣が容易であって、権利者の意に反して公知になるリスクは否定できません。
また、ある商品のデザインが市場で受け入れるかどうかは、展示したり見本を頒布したりするなどしないと分からない部分が多いことも事実です。
そのため意匠法は、新規性喪失の例外として、例えば以下のような場合には、1年以内に当該意匠を出願すれば新規性を失わなかったものとして扱う「新規性喪失の例外」という規定を設けました。
- リリース前の商品の意匠が何らかの事故で意図せずに外部に漏れてしまったという場合(意匠法4条1項[カーソルを載せて条文表示])
- すでに製品の見本を公開したり製品を販売して「新規性」を失った場合(意匠法4条1項[カーソルを載せて条文表示])
創作非容易性
考え方
前述のように新規な意匠であっても、さらに「創作非容易性」が必要です。この「創作非容易性」とは、当業者であれば容易に創作できるような意匠ではない、ということです。
また「当業者」とは、その意匠が属する分野における通常の知識を有する者をいいます(意匠法3条2項[カーソルを載せて条文表示])
創作非容易性が否定されるものの例
以下のような意匠は、創作非容易性が否定される例とされています。
置換の意匠
公知の意匠の構成要素の一部を他の公知の意匠に置き換えたものであって、それが当業者にとってありふれた手法である場合です(下は特許庁の意匠審査基準より引用)。
寄せ集めの意匠
複数の公知の意匠を寄せ集めたもので、それが当業者にとってありふれた手法である場合です(下は特許庁の意匠審査基準より引用)。
一部の構成の単なる削除
意匠の創作の一単位として認められる部分を、単純に削除することです(下は特許庁の意匠審査基準より引用)。
配置の変更による意匠
公知の意匠の構成要素の配置を変更するもので、それが当業者にとってありふれた手法である場合です(下は特許庁の意匠審査基準より引用)。
構成比率の変更による意匠
公知の意匠の全部又は一部の構成比率、公知の意匠の繰り返し連続する構成要素の単位の数を変更するもので、それが当業者にとってありふれた手法である場合です(下は特許庁の意匠審査基準より引用)。
物品等の枠を超えた構成の利用・転用
既存の様々なものをモチーフとし、ほとんどそのままの形状等で種々の物品に利用・転用する場合です。その中には以下のようなものがあります。
- 周知の幾何学形状をそのまま表したにすぎない意匠
- 自然物等をほとんどそのまま表わした意匠であり、それが当業者にとってありふれた手法である場合
- 有名な著作物及び建造物などの模倣の場合
- ある物品の意匠を、これとは類似しない物品に転用した場合であって、転用が当業者にとってありふれた手法である場合
このページは作成途中です。加筆次第随時公開します。
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