2020-04-21 写真の引用と著作権法
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なお、このトピックは、メールマガジン発行日現在での原稿をほぼそのまま掲載しており、その後の上級審での判断の変更、法令の改正等、または学説の変動等に対応していない場合があります。 |
今回の事例 写真の引用と著作権法
東京地裁平成31年4月10日判決
インターネット掲示板サービスに、ある写真を含む記事が投稿されました。その写真は、A法人の名誉会長が写っている写真であり、A法人が発行する新聞に掲載された写真でした。
そして当該ネット記事においては、十数行にわたり、車に乗ってい る人物を迎える人々の視線の高さが不自然であることや、写真の一部が切り貼りされたもののようにも見えるといった内容の文章が記載され、その最下部に、当該写真が掲載されていました。
同写真の著作権者であるA法人は、写真の掲載がA法人の著作権(公衆送信権)を侵害していると主張し、投稿に使用されたインターネット接続サービスの事業者であるB社に対し、発信者情報の開示を求めました。
これに対し、B社は、当該投稿が著作権法上の引用にあたる可能性があり、権利侵害が明白とはいえない、と主張しました。
裁判所の判断
裁判所は主として以下のような理由から、当該写真の掲載は適法な引用とはいえず、著作権を侵害していると判断しました。
・ 他人の著作物の「引用」が許されるため には、その方法や態様が、報道、批評、研究等の引用目的との関係で、社会通念に照らして合理的な範囲内のものであり、かつ、公正な慣行に合致することが必要である。
・ 当該記事が当該写真を掲載した目的は、 当該写真を批評することにあるものと認められる。
・ しかし、当該記事における当該写真の大きさは独立して鑑賞の対象となり得る程度の大きさであり、写真を批評するとしても、当該写真そのものを引用する必要性が高いとは必 ずしもいえない。
・ 批評の対象である当該写真の出所も表示されていない。
・ これらを考慮すると、今回の引用の方法と態様が、引用目的との関係で社会通念に照らして合理的な範囲内であると認めることはできない。
解説
(1) 著作権法上の「引用」
著作権法で保護された著作物については、他者が無断で使用することができないのが原則です。この点で、著作権法32条1項に定める「引用」は、この原則に対する例外の一つです。
しかし、ある引用が、適法な引用となるためには、一定の要件を満たす必要があります。この要件は、一般的には以下のように整理されています。
a 引用部分が公表された著作物であること
b 引用部分と自己の著作物の区分が明瞭であること
c 自己の著作物が「主」であり、引用部分が「従」であること
d 引用の必然性があること
e 出所を明示すること
f 改変など、引用部分の著作者人格権を侵害しないこと
(2) ビジネス上の留意点~写真や画像の引用
ビジネスの場でも、他者の著作物を引用する必要が生じることがあるかもしれません。この点、写真や画像の「引用」については特に注意が必要です。
筆者がこれまで相談を受けた経験上も、他者の写真や画像を、自己の制作物に「引用」したいと相談を受けたケースで、引用の必然性が疑問視されることが多く見られました。
また仮に引用に必然性があるとしても、引用した写真自体が鑑賞の対象となる程度のサイズや解像度、鮮明度であると、引用の必然性が否定される方向に大きく働きます。
それで、「出典を示せば大丈夫だろう」などと安易に考えて他者の画像や写真を使用するのではなく、必要に応じて専門家の助言を求めるなどして慎重に使用することが重要といえます。
なお、上で述べた「引用」の各要件の詳細は、以下をご参照ください。
www.ishioroshi.com/biz/kaisetu/chosakuken/index/inyou/
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