2018-10-09 取締役会決議と特別利害関係取締役
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東京地裁平成29年9月26日判決
電気工作精密機械器具の輸出入販売を営むA社では、取締役B氏、C氏、D氏を解任することを議案とする株主総会を開催することを決議内容とする取締役会を開催しました。
取締役会の議事録には、6名の取締役のうち、当該解任対象の取締役が特別利害関係取締役として決議から除かれ、残り5名のうち3名の賛同があったため、前記議案は可決された、と記載されました。
これに対し、B氏及びC氏が、自分たちは特別利害関係に当たらない等と主張して、当該決議は会社法に違反していると主張しました。
裁判所の判断
裁判所は以下のように判断し、B氏及びC氏の主張を認めませんでした。
・ 対象取締役は、取締役会において自己の解任議案が株主総会に提出されるか否かが決定される以上、自己の身分に係る重大な利害関係を有することは明らかである。
・ それで、対象取締役が、会社に対して負担する忠実義務に従い、公正に議決権を行使することは必ずしも期待しがたく、むしろ自己の利益を図って議決権行使することも否定できない。
・ そうだとすると、取締役の会社に対する忠実義務違反を予防し、取締役個人と会社との間の利害対立を事前に防止するために、対象取締役は、議決に加わることができないとすることが相当である。
解説
(1)取締役会において特別の利害関係がある取締役がいる場合
取締役会においては、議決に加わることのできる取締役の過半数が出席し、その過半数をもって決議がなされます(会社法369条1項)。
しかしながら、会社法369条2項は、ある議案について「特別の利害関係」を有する取締役が、議決に加わることができない(その決議事項については定足数からも除外される)と定めています。
このように、特別に利害関係のある取締役が特定の議案の議決に参加できないのは、取締役には、「忠実義務」といって、取締役の職務の遂行において自己の個人的利益よりも会社の利益を優先させる義務があるから、とされています。
(2)特別の利害関係があるとされる場合の例
取締役会の議案について特定の取締役が特別利害関係を有することとなる具体的な例としては、当該取締役が以下のような事項に関わる場合があります。
・ 譲渡制限株式の譲渡承認(会社法139条1項)
・ 競業取引・利益相反取引の承認(会社法356条1項・会社法365条1項)
・ 会社に対する責任の一部免除(会社法426条1項)
・ 代表取締役の解職決議における当該代表取締役(判例 反対説あり)
・ 第三者割当増資を行う場合
そして、今回の事例では、取締役の解任を株主総会の議案とする決議について、当該取締役が特別利害関係に当たることが示されました。
また、次の場合は「特別利害関係を有する取締役」にはあたらないというのが多数説です。
・ 代表取締役の選定に関して候補者である取締役
・ 取締役会において各取締役の具体的な報酬額を決定する場合の当該取締役
以上のとおり、議案において、特定の取締役が関係する場合、当該取締役が特別利害関係を有するといえるか否かの判断は、必ずしも簡単ではありません。そして、特別利害関係者が誤って議決に加わると、当該議決は無効となる恐れがあります。
そして特に今回の事例のような解任が絡む議案では、法的な争いに発展するおそれが、他の議決に比べても高くなるといえます。それで、取締役会の準備にあたっては、事前の周到な調査と準備が重要となってくると考えられます。
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例えば本稿のテーマに関連した会社法関連の情報については
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