2018-07-24 商標権の共有とビジネス上の留意点
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なお、このトピックは、メールマガジン発行日現在での原稿をほぼそのまま掲載しており、その後の上級審での判断の変更、法令の改正等、または学説の変動等に対応していない場合があります。 |
知財高裁平成30年1月15日判決
A社とB社が共有する商標権が、不使用取消審判によって取消の審決を受けました。
そのため、A社が、当該審決の取消を求めて訴訟を提起しました。
これに対し、被告は、当該訴訟は、共有者全員で訴えを提起する必要があるから、共有者の1名であるA社のみによる訴え提起は不適法であると主張して、訴えの却下を求めました。
裁判所の判断
裁判所は以下のように判断し、被告の主張を認めず、訴え自体は適法と判断しました。ただし裁判所は、不使用による取消という審決の結論は変更しませんでした。
・ 登録商標の使用をしていないことを理由に商標登録の取消審決がされた場合に、取消訴訟を提起することなく出訴期間を経過したときは、商標権は審判請求の登録日に消滅したものとみなされる。
・ したがって、取消訴訟の提起は、商標権の消滅を防ぐ「保存行為」に当たるから、商標権の共有者の1人が単独でもすることができる。
解説
(1)商標権の共有の概要
特許権の共有とは、1個の商標権を2名以上で共同して保有することをいいます。
共同開発などによって発生する共同特許や、共同執筆になどによって発生する著作権の共有と異なり、商標権を共有する事情は少ないかもしれませんが、共同で事業を行うケース、複数の会社で同じブランドを育てていくというケース、同じ名称の店舗を別の地域でそれぞれが運営するケース等、商標権が共有される事態もありえます。
しかし、商標権の共有は、その扱いにおいて種々厄介な点があります。以下、共有の商標権の法律上の扱いについてご説明します。
(2)共有商標の法律上の扱い
まず、共有の登録商標を、共有者自らが使用することは自由であり、他の共有者の同意などは不要です。
他方、共有者の一部が、その商標を第三者にライセンスしたり、共有持分を譲渡しようとする場合、他の共有者の同意が必要となります(商標法35条、特許法73条1項、3項)。
また、ややマニアックな話ですが、共有者が、その商標について訂正審判を請求するとか、出願中の商標について拒絶査定不服審判を請求するといったことを行う場合、共有者全員で行う必要があります(商標法56条、特許法132条3項)。ただし、今回取り上げた、不使用取消審判に対する審決取消訴訟のように、共有者が単独で行える手続もあります。
(3)実務上の留意点
以上のとおり、商標権が共有となる場合、自己使用以外の行為については相当な制約が加わりますから、安易に商標権の共有を合意することは慎重に考える必要があります。
他方、商標権の共有を検討する場合、自社の目的、ビジネスの進め方、共有者との関係を具体的に念頭に置いた上で、種々の条件を契約書に定めることは重要といえます。例えば以下のようなものが考えられます。
・登録商標を、各自が、どんな商品・サービスについて使用できるか
・各自が登録商標が使用できる場所的範囲を定めるか、定めるとしてどのように定めるか
・各自が他者へのライセンスができるのか、できるとしてどんな条件を定めるか
・共有持分の譲渡の可否、可能としてどんな条件を定めるか(共有者の優先買受権の定めもある)
・一方が倒産した場合の共有持分の処理
共同でビジネスを行う場合、ほとんどの場合、相手との信頼関係が構築されているため、「何かあっても話合いで決められるから、契約で詳細を決める必要はない」と考える方は少なくありません。しかし、ビジネスにおいては、相手方との関係の悪化や倒産といった望ましくない事態も含め、何が起こるか分かりません。ですので、生じうるリスクを予め想定して手当をしておくことは重要ではないかと考えます。
弊所ウェブサイト紹介~M&A業務
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本稿のテーマと直接の関係はありませんが、M&A関連案件については、以下のページに解説があります。
www.ishioroshi.com/biz/kaisetu/kaishahou/index/mana_houhou/
是非一度ご覧ください。
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