2018-04-10 不使用取消審判と使用商標の同一性
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なお、このトピックは、メールマガジン発行日現在での原稿をほぼそのまま掲載しており、その後の上級審での判断の変更、法令の改正等、または学説の変動等に対応していない場合があります。 |
今回の事例
知財高裁平成30年1月15日判決
A社は、第32類「緑色野菜を主原料とする飲料用青汁」等を指定商品として、以下のような商標を出願し登録を受けました。
しかし、実際に使用されていた商標は、「緑健青汁」の文字のみで構成されるものでした。
そして、B社は、A社に対し、当該登録商標を使用していないことを理由に、登録商標の不使用取消審判を起こしました。今回ご紹介する事例は、当該審判において出された審決に対する取消訴訟です。
裁判所の判断
裁判所は以下のように判断し、不使用による取消を認めました。なお詳細は省きますが、裁判所は、A社による使用の立証自体も否定しています。
● A社の登録商標は、「緑健青汁」「りょくけん青汁」「リョクケン青汁」及び「RYOKUKEN AOJIRU」の文字を4段に書して成るものであるのに対し、A社が使用するとされる商標は、「緑健青汁」の文字のみを書して成るものである。
● これら商標は、商標法50条1項にいう「平仮名、片仮名及びローマ字の文字の表示を相互に変更するものであって同一の称呼及び観念を生ずる商標・・その他の当該登録商標と社会通念上同一と認められる商標」であると、直ちに認めることはできない。
● したがって、A社の登録商標が使用されたとの事実は認められず、商標法50条の規定により取り消されるべきである。
解説
(1)商標の不使用取消審判
商標の登録制度は、権利者がその商標を使用することを前提としています。それは、商標権には独占的な権利があるところ、使用されず、また使用の意思もない商標について独占的権利を認めることは誰の利益にもならないからです。
それで、商標法は、ある商標が一定期間(3年間)使用されていない場合に、第三者が、特許庁に対し、その登録商標の取消の審判を請求することができる、という制度を設けています。これを、「不使用取消審判」といいます。
(2)登録商標と実際の使用例が異なる場合
これに対して、商標権者が商標の登録の取消を免れるためには、その登録商標を使用していたことを証明する必要があります。ここでは種々の論点がありますが、問題となることの一つに、登録されている商標と、実際に使用している商標とが少し異なる場合があります。
この点、商標50条1項において述べられているとおり、読めば同じ音になり、かつ同じ意味が読み取れる場合であれば、平仮名、片仮名、ローマ字の文字の表示を相互に変更しても、通常は社会通念上同一の商標と考えられます。また、書体のみに変更があった場合も同様です。
もっとも、過去の審決例を見ると、以下の例のとおり、この同一性は厳格に判断される場合がありますから、十分に注意が必要です。
<同一性が否定された例>
登録商標:LIFECENTER
使用商標:ライフセンター
登録商標:COMPATH
使用商標:コンパス
登録商標:LE RITZ
使用商標:RITZ
登録商標:もぐさ屋/伊吹堂(二段併記)
使用商標:伊吹堂
登録商標:飛鳥
使用商標:あすか
登録商標:SKAGA
使用商標:BLAZER SKAGA
以上のように、登録商標と実際使用している商標が同一といえるかの判断は、ケースによっては困難なものもあり、この点での判断を誤ると、登録商標を長年使用してきたと思ったのに不使用を理由に取り消されてしまう、という結果もありえます。
それで、この点で、弁理士や知的財産を重点的に取り扱う弁護士へのアドバイスを求め、商標法上の使用として認められるかを検討することは重要かと思われます。
弊所取扱案件紹介~英文契約実務(IT・ソフトウェア編)
近年では多くの企業が海外取引に積極的に取り組んでいます。海外取引・国際取引では英文契約はまさに自社を守る必須のツールといえます。
また国内ビジネスであっても、海外企業の代理店になるとか、海外企業と取引する場合には英文契約の締結が必要となる場合が少なくありません。
そして弊所では、英文契約業務に積極的に取り扱い、多くの企業の国際化を支援しています。
これまで弊所が作成・レビューとして取り扱ってきた英文契約は多種多様ですが、今回は特にIT・ソフトウェア関係のものをピックアップすると、以下のようなものがあります。
・ウェブサイト利用規約
(Terms of Service for Internet Website)
・ソフトウェア使用許諾契約書
(Software Licensing Agreement)
・ソフトウェア・エスクロー契約書
(Software Escrow Agreement)
・サービスレベル合意書(Service Level Agreement)
・アウトバウンドテレマーケティング契約書
(Outbound Telemarkething Markething Agreement)
・電子出版契約書
(Electronic Publishing Agreement)
弊所では海外取引・国際契約をご検討の方のご相談を歓迎します。詳細は以下のURLをご覧ください。
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