ドメイン名不正取得・使用等(不競法2条1項13号)

ドメイン名に関する不正競争行為の規制の概要(2条1項13号)

規制の概要

 不正競争防止法2条1項13号[条文表示]は、不正の利益を得る目的又は他人に損害を加える目的で、他人の特定商品等表示と同一又は類似のドメイン名を使用する権利を取得・保有し、又はそのドメイン名を使用する行為を「不正競争」の一類型として禁止しています。

 なお、上の「特定商品等表示」とは、「人の業務に係る氏名,商号,商標,標章その他の商品又は役務を表示するもの」を意味します。

規定の趣旨

 もともとドメイン名は、インターネット上のサーバーのアドレスを特定するための文字や数字の配列にすぎません。しかし、インターネットが急速に普及・発展し、その結果ビジネスにおけるインターネットの役割や重要性は飛躍的に高まりました。

 そして、事業者は、自己の社名、ブランド名、商品名と関連のあるドメイン名を使用することが多い一方、消費者や顧客は、ドメイン名に現れた名称と、会社名、ブランド名、商品名とを関連づけて認識します。そのため、ドメイン名は,事業者が効果的なインターネット上のビジネスを行うために,極めて重要な価値を有するに至っている。

 そして、ドメイン名は、原則として「早い者勝ち」で取得することができ、取得に際し、商標登録出願において特許庁が行うような審査がありません。

 そのため、著名な企業やブランド名と同一・類似のドメイン名を取得した第三者が、その企業やブランドが持つ評判、信用、知名度にフリーライド(タダ乗り)してビジネスを行うといった事態、逆にそうした企業やブランドの信用を傷つける行為を行うといった事態、また、取得したドメイン名をその企業に暴利ともいえる価格で買い取らせようとする事態などが多く発生しました。

 以上のような事態を防ぐために、平成13年改正によって、ドメイン名の不正取得や使用を禁止する規定が定められました。

 
 

ドメイン名の不正使用規制の要件

要件の概要

 不正競争防止法2条1項13号の要件は以下のとおりです。

  • 不正の利益を得る目的で、又は他人に損害を加える目的があること(図利加害目的)
  • 他人の特定商品等表示に同一もしくは類似のドメインであること
  • そのドメインを使用する権利を取得・保有し、又はそのドメインを使用すること

 以下、各要件について見ていきたいと思います。

特定商品等表示

 ドメイン名の不正使用として不正競争となるためには、当該ドメイン名が、他人の「特定商品等表示」と同一又は類似している必要があります。

 そしてこの「特定商品等表示」とは、「人の業務に係る氏名、商号、商標、標章その他の商品又は役務を表示するもの」とされています(不正競争防止法2条1項13号)。

 また、「特定商品等表示」といえるためには、その表示が自他識別機能又は出所識別機能を備えている必要があります。そのため、商品に関する普通名称や慣用表示のような、自他識別機能及び出所識別機能を有しないような表示は、保護の対象とはならないと考えられています。

 しかしながら、ここでいう「表示」については、不競法2条1項1号又は2号におけるような周知性又は著名性の要件は不要です。

図利加害目的

 ドメイン名の不正使用として不正競争となるためには、不正の利益を得る目的で、又は他人に損害を加える目的(図利加害目的)が必要です。

 どんな場合に図利加害目的が認められるかは、ケース・バイ・ケースで、裁判所が判断することになります。ただし、以下ような例が考えられます。

  • 他社の著名なブランドの価値を下げるような、これと類似するドメインを使用してアダルトサイトや有害サイトに使用する行為
  • 不当な高額な価格で買い取らせるために他社の著名なブランドと同一・類似のドメインを取得する行為
  • 他社の会社名や著名なブランドと同一・類似のドメインを取得し、そこに、当該会社に対する中傷記事や名誉毀損的発言を掲載する行為

 

ドメイン名不正使用等に対する是正方法の概要

 不正競争防止法は、ドメイン名の不正使用等の行為に対して、以下のような是正方法を定めています。
 

差止請求(3条1項)

 不正競争行為によって営業上の利益を侵害される(おそれのある)者が、侵害の停止又は予防を請求することができます(不正競争防止法3条1項[条文表示])。

 ドメイン名に関していえば、ドメイン名の使用の禁止に加え、ドメイン名の登録抹消も求めることができると考えられています。他方、ドメイン自体の移転の請求権までは定められていません。他方、UDRPやJPDRP に基づく裁定では、ドメイン名の移転を命ずることができます。

信用回復措置(14条)

 営業上の信用を害された者は、侵害した者に対して、信用の回復に必要な措置を取らせることができます(不正競争防止法14条[条文表示])。謝罪広告とか、取引先に対して謝罪文を発送させるなどの方法が考えられます。

損害賠償請求(4条)

 故意又は過失により不正競争を行って他人の営業上の利益を侵害した者は損害賠償の責任を負います(不正競争防止法4条[条文表示])。また、不競法5条は、損害額の推定の規定を定め、損害額の立証の困難性を緩和しています。例えば、その侵害者が侵害行為により利益を受けた額を損害額を推定するなどの規定を置いています。

 

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