電気用品安全法の概要・弊所の実績
本ページでは、電気用品安全法(電安法)の概要と、弁護士法人クラフトマンにおける相談・取扱の実績についてご説明します。
電気用品安全法(PSE)の解説
電気用品安全法とは
「電気用品安全法」とは、電気用品の事業者が行う製造・販売等に一定の規制を設け、電気用品による危険及び障害の発生を防止することを目的としています(電安法1条)。またさらに、電気用品の安全性の確保について自主的な 活動を促進することをも目的としています。
電気用品の製造・輸入を行う事業者の義務
以上の目的から、電気用品の製造又は輸入を行う事業者には、以下のような義務が定められています。
- 事業の届出(電安法3条)
- 技術基準への適合義務(電安法8条1項)
- 出荷前の最終検査記録の作成と保存(電安法8条2項)
- 表示の義務(電安法10条2項)
- 特定電気用品の適合性検査義務(電安法9条)
電気用品とは
電気用品の基本的な考え方
電安法と政令に定められた製品が規制を受ける
電安法に定める「電気用品」とは何をいうのでしょうか。実は、電安法は、電気製品のすべてを網羅して規制しているわけではありません。
この点、電安法2条1項には、以下のような「電気用品」を以下のように定めています。
- 一般用電気工作物(電気事業法…第38条第1項に規定する一般用電気工作物をいう。) の部分となり、又はこれに接続して用いられる機械、器具又は材料であって、政令で定めるもの
- 携帯発電機であって、政令で定めるもの
- 蓄電池であって、政令で定めるもの
政令によるポジティブリスト方式の指定
以上のとおり、電安法は、電気用品となる製品の基本的なカテゴリーを定めていますが、具体的にどんな製品が該当するかは、政令にゆだねています。
そして、政令(電気用品安全法施行令)は、電安法による委任を受けて、電安法の規制を受ける電気用品を定めています。本稿執筆現在は、政令で457品目が指定されており、うち、「特定電気用品」として、感電や火災等の危険や障害の発生する程度が重いものと考えられる116品目が指定されています(電安法2条)。
すなわち、電安法と施行令は、電気用品に該当する製品を「ポジティブリスト方式」で指定しています。したがって、電安法施行令に定められていない電気製品は、電安法上の電気用品には該当しないことになります。
例えば本ページを執筆している時点では、以下に例示されるものは電気用品の対象外とされています。
- パソコン本体
- プリンタ
- ファクシミリ
政令による指定における考え方
どんな電気製品を電気用品と指定するかについては、以下のような基本的な考え方で運用されています(昭和43年電気用品取締法政令改正時に開かれた公聴会における意見)。
家庭用の機器は、すべて電気用品に包括的に指定し、粗悪な電気用品による危険及び障害の発生を防止する。事務所、商店農業用等の業務用の機器については、一般大衆が広く利用する機器はもちろん、電気知識に乏しい者が取り扱う機器を選定し、電気用品に指定する。
具体的には、指定する電気用品を、「特定電気用品」と「特定電気用品以外の電気用品」に区分します。そして、「電気用品の区分」としてグループ分けをしています。
なお、「電気用品の区分」は、電気用品の特性によってグループ分けされており、一般的な名称と法令上の名称が異なることもあります。例えば、過去の通達の例を取ると、「家庭用わた菓子器」は、特定電気用品である「電熱式おもちゃ」として扱われています。また、高圧洗浄機は、特定電気用品の電動力応用機械器具の「電気ポンプ」として取り扱うとされています。
それで、政令にあるリストを見て、そこに、ご自分が考えている製品名がないからといって、すぐにそれが電安法の「対象外」と即断するのはリスクがあります。
電安法に定める電気用品の種類
前述の電安法2条1項のとおり、電気用品となりうるものは、大まかに3種類あります。以下は、個々の種類について簡単に概要を申し上げます。
一般用電気工作物の一部又はこれに接続されるもの
まず、一般用電気工作物の一部又はこれに接続されるもの(政令で定めるもの)が電気用品となります。対象となる電気用品のほとんどは、この項目に分類されます。
一般用電気工作物に接続されるものとは、シンプルにまとめれば、一般家庭や一般の事務所などに供給される交流100ボルト、200ボルトの交流電源から直接電源を取る製品ということになります。したがって、コンセントに接続して使用する家電品やおもちゃの多くは、「電気用品」となっています。
他方、交流電源から直接電源を取るものではない製品の多くは、電気用品の対象外です。すなわち、充電式の電池で駆動する製品や、ACアダプタを経由して電源の供給を受ける製品等です(ACアダプタ自体は電気用品です)。ただし、電安法の対象か否かを決めるのは、政令で指定された種類のものか否かによるものであり、上の考え方で決まるものはない点留意が必要です。
携帯発電機・蓄電池
電安法において電気用品に分類され得る製品としては、上に述べたほか、「携帯発電機」(電安法2条1項2号)、「蓄電池」(電安法2条1項3号)があります。
本ページ執筆時点で携帯発電機として電気用品に指定されているものは、定格電圧が30ボルト以上300ボルト以下の携帯発電機です(電安法施行令別表第一)。
また、蓄電池として電気用品に指定されているものは、一定の要件のあるリチウムイオン蓄電池です(電安法施行令別表第二)
電気用品該当性判断の考え方
では、自社の電気製品が、法律上の電気用品に該当するか否かはどのように判断されるでしょうか。
用途、機能、構造で判断される
電気用品該当性については、自社製品の一般的名称で決まるものではありません。むしろ、自社製品の用途、機能、構造等から検討していく必要があります。
用途を確認する
まず、当該製品の用途を確認します。
例えば、「人が触れてもやけどしない程度の電気ヒーター」という製品があったとします。これが「患部にあてて、温熱治療を行う」用途の場合、通常「家庭用温熱治療器」となると考えられます。
また、これを座布団として使用するのであれば「電気座布団」に、「布団に入れて足を温める」のであれば「電気あんか」に、それぞれ該当することになります(この例は、経済産業省製品安全課が公表している資料(電気用品安全法 法令業務実施手引書)から取り上げました)。
機能を確認する
当該製品の機能を確認します。
例えば、イオン発生機能付き扇風機については、扇風機が機能しているときのみイオン発生機能が作動する場合、電動力応用機械器具の 「扇風機」として取り扱うとされています。他方、イオン発生機能と「扇風機」が各々が単独で機能することができる場合、「扇風機」とその他交流用電気機械器具の「医療用物質生成器」との複合品として取り扱うとされています(平成14年9月26日 製品安全課見解)。
構造を確認する
当該製品の構造を確認します。
例えば、「室内の加湿に使う装置 」であっても、「電気ヒーターにより湯を沸かして加湿するもの」は、通常「電熱器具 湿潤器」となると考えられます。
また、「ファンにより、フィルターに風を送って加湿するもの」は「電動力応用機械器具 電気加湿機」に、「超音波振動子により加湿するもの」のであれば「電子応用機械器具 超音波加湿機」に、それぞれ該当することになります(この例は、経済産業省製品安全課が公表している資料(電気用品安全法 法令業務実施手引書)から取り上げました)。
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電気用品安全法に関する弊所の取扱実績
弊所でこれまでお受けした電安法についての相談の実績は、法律事務所としては比較的多いものと自負しています。その中には、以下のようなものがあります。
- ある製品について電気用品安全法に定める電気用品の該当性について検討し、さらに、同検討に基づき、経済産業省に相談し同様の見解を得たケース(依頼元 IT機器メーカー)
- ある電気用品を改造する行為が「製造」に当たるかを検討したケース(依頼元 電機メーカー)
- ある電気用品につき、電安法上の適合性検査を受ける前に出荷した製品についての善後策を検討したケース(依頼元 部品メーカー)
- ある電気用品を電源コードを接続させる行為が「製造」に当たるかを検討したケース(依頼元 電機メーカー)
- ある電気用品を、顧客における研究開発目的のために試作し納品する行為が、電安法の規制対象となるかを検討したケース(依頼元 電機メーカー)
- ある電気用品を、顧客における研究開発目的のために試作し貸し出す行為が、電安法の規制対象となるかを検討したケース(依頼元 電機メーカー)
- ある電気用品につき新たな基板を追加し、ハーネス端子のハンダ付けを行うことが「製造」に当たるかを検討したケース(依頼元 電機メーカー)
- ある電気用品に付属する単体では作動しないオプション装置が、電気用品に当たるかを検討したケース(依頼元 事務器メーカー)
- ある電気用品につき、機械を一度分解し、部品交換後再度組み立てを行うことが「製造」に当たるかを検討したケース(依頼元 電機メーカー)
- ある電気用品につき、電安法の適合性検査項目として漏洩電流試験等が行われているのにも関わらず、顧客納品時にアース線を接続しないことにより何らかの事故が発生した場合、メーカーの責任が問われるか否かについて検討したケース(依頼元 電機メーカー)
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