2007-09-30 不正競争行為と準拠法
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なお、このトピックは、メールマガジン発行日現在での原稿をほぼそのまま掲載しており、その後の上級審での判断の変更、法令の改正等、または学説の変動等に対応していない場合があります。 |
事案の概要
H17.12.27 知財高裁判決
今回は不正競争防止法と準拠法というやや特殊な問題を取り上げます。
日本法人A社とB社が,製品共同開発契約を締結していましたが,これが 合意解約されました。
その後A社が共同開発された製品を中国内で販売していました。A社の主 張によれば,これに対し,B社が,A社の販売は,B社が中国において有 する特許権を侵害する旨の通知をする等として販売妨害行為を行ったので, B社による販売妨害行為は不正競争防止法2条1項14号に該当するとし て,同法3条に基づき,民事保全法に基づく仮処分として販売妨害行為の 差止めを求めた事案です。
原決定(東京地裁)は,以下のように判断し,仮処分申立を却下しました。 不正競争行為の差止請求の準拠法は法例11条1項によって決する。そし て,同条項にいう「原因タル事実ノ発生シタル地」は中国であるから,中 国の法律が準拠法となる。しかし,A社が中国の法律について何ら疎明( 立証)しない。
しかし,知財高裁は,本件差止請求の準拠法は,法例11条は適用されず, 条理により日本法が準拠法になると判断しました。
判決の概要
知財高裁は,事業者間の公正な競争を確保するための差止請求権の準拠法 に関しては,法例等に直接の定めがないから,条理により決するのが相当 としました。
そして,本件においては,A社及びB社はいずれも日本に本店所在地及び 常居所を有すること,本件差止請求は日本国内で締結された両者間の共同 開発契約又はその合意解除(約)に付随する法律関係であること等の事情 に照らすと,日本法が本件差止請求に関して最も密接な関係を有する法域 の法として,準拠法になると解するのが相当である,と判断しました。
なお,知財高裁は,結論的には,「虚偽の事実の告知」の疎明がないとし て判断して原決定を支持しましたが,B社の行為について,不正競争防止 法2条1項14号の該当性について判断をしました。
解説
当事者の少なくとも一方が外国の国籍を有するか,無国籍である場合,法 律行為(契約など)や不法行為の行為地が外国である場合といったケース では,事件に適用される法律はどの国の法律かを決定しなければならず, これを準拠法といいます。
我が国では,準拠法に関する規定をまとめた法律として,「法の適用に関する準則法」(改正前は「法例」という名称でした)が制定 されているが,これがすべてを網羅しているわけではなく,法例に定めが ないものは「条理」によって決せされることになりますが,こうなるとケ ース・バイ・ケースとしか言いようがない状況になり,裁判所によって判 断が区々になることもありえます。
これを避けるには,たとえ日本企業どうしの契約であっても,海外が関係 する場合は,契約書の中で,準拠法を定めておくことが重要でしょう。こ れで,ある程度は準拠法の問題を避けることができます。
もっとも,契約書ですべての場合を完全にカバーできるとは限りませんの で(今回も契約違反が問題となったわけではなく,不正競争行為の差止請 求権の準拠法が問題となったため,契約の条項は使えなかった),完全に リスクを避けることは難しいと思われます。
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