2015-10-20不競法による商品形態模倣の規制

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1 今回の判例  不競法による商品形態模倣の規制

東京地裁平成27年7月16日判決   

 A社が販売する服飾商品について、B社が、自社商品の形態を模倣した商品であって不正競争防止法2条1項3号の不正競争行為に当たると主張して、損害賠償等を求めました

 これに対しA社は、同社商品が、B社の商品の販売開始以前に、中国でカタログやサンプル品を見て購入したもので、B社商品も中国製であること等に鑑みれば、B社も同様、中国に既に存在していたデザインの婦人服を輸入して販売していたと考えるのが合理的であるから、損害賠償等を請求し得る者に当たらない等と主張しました。

 なお、A社の商品の画像の一部は以下のとおりです(裁判所ウェブサイトより引用)。

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(詳細は、裁判所ウェブサイトをご覧ください。)

 

2 裁判所の判断

 東京地裁は、以下のとおり判断し、損害賠償を認めました。

● B社は、デザイナーを雇用しデザインに当たらせており、デザイナーが作成したデザイン画を企画会議で検討して商品化の可否を決定している。

● B社は、商品化を決めたデザインについてパターンナーが型紙を作成し、外注先に、製品番号、商品コード、サイズ、デザイン(イラスト)等を記載した注文書等を送付して製造を発注している。

● 以上によれば、B社の商品はB社がデザインを確定して製造を発注したもので、他社がデザインした商品を購入したのではないと認められるから、B社商品の形態はB社がその資本及び労力により開発したとみることができ、不競法2条1項3号に基づく請求をすることができる。

 

3 解説

(1)商品形態の保護と不正競争防止法

 自社の商品の形態が第三者によって模倣されたり、第三者が自社商品と非常によく似た形態の商品を製造販売するといったケースを経験されたことがあるかもしれません。そして、事業者としては、できる限り是正したいと考えることでしょう。

 この場合、自社商品が意匠登録されていればベストですが、意匠登録していない場合や意匠登録ができないような場合、自社製品を模倣から保護する可能性のある法が、不正競争防止法です。

 それは、不競法が、一定の場合に、他人の商品の形態と類似する商品の製造販売を制限しているからです。具体的には、大きく分けると以下の2種類があります。

 ア)「周知表示混同惹起行為(不正競争防止法2条1項1号)」

 イ)「商品形態模倣行為(同法2条1項3号)」

本稿では、今回の事例でテーマとなった、後者を取り上げます。

(2)商品形態模倣行為のメリット

 不競法2条1項3号は、他人の商品の形態を模倣した商品を譲渡(販売)する行為などを禁止しています。

 前記ア)の周知表示混同惹起行為(2条1項1号)と比較した場合の3号の規定のメリットは、他社の模倣品の販売を差し止めるために、1号の場合には自社の商品形態が周知である(一定範囲で広く認識されている)必要があるのに対し、3号では、そのような「周知性」を備えている必要がないということにあります。

 一般に、「周知性」の立証は、膨大な証拠を収集して提出するなど大きな困難や手間が伴うところ、3号に基づく請求はこの点での立証の負担がなく、他社による模倣に制限を課すための有力な手段となり得ます。

(3)3号による請求についての留意点

 他方で、3号に基づく請求については、以下の点に注意が必要です。

● 今回争点となったように、他社による模倣を禁止することができる商品は、自らが資本や労力を投下して開発した商品である必要があります。つまり、単に他者が開発した商品を仕入れて販売するだけの当事者は、3号による請求はできません。

● 他社による模倣を禁止することができる期間は、模倣の対象となった自社の商品が最初に販売された日から3年、という時間的制約があります。

● 3号が禁止している模倣については、当該模倣品を販売する者に「故意・重過失」が必要です。つまり、模倣であることを知っていたか、又は、ほんの少し注意を払えば知ることができた(重過失があった)ことを立証必要があります。この点の立証は、ややハードルが高いといえます。

● この規定は、形態についての「デッドコピー」、すなわち同一又は実質的に同一のものを規制するものであり、単に「似ている(類似)」レベルまで規制するものではありません。また、「形態」の模倣が対象ですので、機能や性能の模倣は対象となりません(これらは特許や実用新案の守備範囲です)。

● 形態が同じであっても、それが、ある特定の機能を実現するために不可欠な形態である場合には、禁止することができません。

 以上のとおり、商品形態模倣行為を規制する規定についても制約やデメリットがありますが、他社の模倣を差し止める有力な手段の一つとして、検討には値するものと思われます。

 以上のとおり、他社による自社の商品形態の模倣を差し止める方法は、「周知表示混同惹起行為」「商品形態模倣行為」のうちいずれも一長一短であり、難しい要件や立証が必要な場合があります。

 それで、具体的事例においてどのような方法が効果的か、またそもそも権利行使が可能かについては、専門家に相談し判断するのが好ましいと思います。

関連ページ(不正競争防止法)

https://www.ishioroshi.com/biz/kaisetu/fukyouhou/index/



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